国際政治学者
佐久間 拓真
(ペンネーム)
国際政治の中でも特に米中関係、インド太平洋の安全保障、中国情勢を専門にし、この分野で講演や執筆活動、現地調査などを行う。
南太平洋に浮かぶ島嶼国ツバルは、海面上昇による国土水没の危機に直面する一方で、近年、中国による経済的影響力の拡大という、別の深刻な脅威に晒されている。
ツバルは台湾と外交関係を維持する数少ない国の一つであり、中国はあの手この手でツバルを取り込もうと試みている。その経済支援と称する動きの裏には、「債務の罠」を仕掛け、地域における戦略的支配を確立しようとする思惑が透けて見える。
巧妙に進む中国の経済攻勢
ツバルは天然資源に乏しく、その歳入の多くを海外からの政府開発援助(ODA)に依存している。主要な産業は漁業と観光業だが、地理的な要因から観光客は少ない。このような経済基盤の脆弱性につけ込み、中国はツバルに対して経済的関与を強めている。
特に顕著なのが、インフラ整備への大規模な提案である。2019年には、ツバル政府に対し、海面上昇対策として中国企業から4億ドル規模の人工島建設計画が持ちかけられたことが報道されている。この提案は、ツバルの年間国内総生産(GDP)を遥かに超える巨額な事業であり、実現すればツバル政府は中国に対し極めて大きな債務を負うことになった可能性が高い。























