《ニュース》

福島第1原発から出た処理水を海洋放出する施設が完成し、原子力規制委員会による使用前検査が始まりました。早ければ来週にも検査に合格するとされていますが、中国や韓国野党の反発も激化し、政府の対応に注目が集まっています。

《詳細》

処理水とは、原子炉内で溶けた核燃料などを冷却するために使われた水に、地下水や雨水が混ざったものから、多くの放射性物質を除去したもの。トリチウムだけが除去できずに残っていることから、発電所敷地内のタンクに貯蔵され続け、問題化していました。

政府はこれをさらに薄め、トリチウムを基準値以下にした上で、海洋放出する方針を決定しました。しかし地元漁業関係者や地元住民から反発が相次いだことから、「海底トンネルを新設し、沖合1キロメートル付近から放出する」計画を策定。6月26日に設備が完成しました。

これに対する規制委の使用前検査が28日に始まりました。検査自体は6月末には終わり、その後、1週間ほどで結果が取りまとめられる見通しです。

処理水放出開始まで大詰めを迎えた状況ですが、中国政府は「太平洋は日本が核汚染水を垂れ流す下水道ではない」(中国外務省汪文斌報道官)と連日のように批判。香港当局も処理水放出すれば、影響を受ける可能性のある日本食品の輸入を止めるとまで主張しています。

また日本の処理水は韓国でも、野党代表が断食座り込みを行って抗議するなど、大きな政治問題に発展しています。

これらの動きは、福島県産の海産物などへの風評被害も生みかねず、処理水放出への地元の反対が激化する可能性もあります。

こうした中、松野博一官房長官は28日、「(地元漁業)関係者の理解なしにいかなる処分も行わない」とする、2015年に政府と東電が福島県と漁連に伝えた方針を順守すると説明。先行きがどうなるか、注目が集まっています。

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