風光明媚な宍道湖を擁する島根県松江市──。市の中心部からほど近いゴルフ場跡地が香港の外資系企業に買収され、大規模な太陽光発電所(メガソーラー)が建設されることになっている。

2017年に閉鎖された「松江カントリー」を、東京に本社を置く「PAGリニューワブルズ合同会社」が取得。同社は、親会社で香港の投資会社PAGが、アジアで再生可能エネルギープロジェクトを展開するためにつくった子会社である。

親会社のPAGは香港に本社を置き、500億ドルを超える資産を運用。東京や上海、ソウル、シンガポール等に拠点を構え、再生可能エネルギーや不動産、未公開株等を扱う、アジア最大級の民間投資会社だ。

特に懸念されるのは、「中国メガソーラー」が建設されるゴルフ場跡地から北西約6キロ、車で約10分の距離に、島根原子力発電所が建つことだ(上写真)。

ちなみにPAGは今年8月にも、長崎県佐世保市のテーマパーク「ハウステンボス」を取得。様々なメディアで報じられたが、ハウステンボスの15キロ先には、海上自衛隊とアメリカ海軍の佐世保基地がある。

「中国ソーラー」問題が、すでに顕在化している山口県岩国市

国民の生活や企業活動に欠かせない電力事業であるならば、なおさら慎重にならざるを得ない。本誌2022年5月号の現地ルポ「山口最大のソーラーを中国国有系企業が買収 『中国ソーラー』が日本の電力網を破壊する日」において、キヤノングローバル戦略研究所研究主幹・杉山大志氏が指摘するように、「中国の影響下にある太陽光発電施設が、電力網に変な電流を流すことで大停電を引き起こすことは可能」だからだ。

「中国ソーラー」による電力インフラの危機は、島根のお隣の山口県で、すでに顕在化している。

山口県岩国市の山中で、ディズニーランドとディズニーシーを合わせた以上の規模に及ぶ県下最大のメガソーラー(建設中)が、中国国有系企業に買収された。しかも、市にも地元住民にも知らされない中で、いつの間にか、事業者が日本企業から中国の「上海電力」に"すり替わっていた"のである(本誌2022年5月号の現地ルポ「山口最大のソーラーを中国国有系企業が買収 『中国ソーラー』が日本の電力網を破壊する日」参照)。

そもそも岩国市のメガソーラーの開発を行ってきたのは、「東日本ソーラー13」という合同会社だった。だがこの持ち主が、昨年9月に「SMW九州」という合同会社に変わった。しかし、「SMW九州」は九州の地元企業などではなく、株主は100%上海電力であり、住所も上海電力日本の本社と同じであり、上海電力そのものである。

さらに、岩国のメガソーラーで問題視されているのは、造成地から20キロの距離にアメリカ海兵隊岩国基地があることだ。情報収集や有事の際の戦略的な妨害に使われるという懸念がつきまとう。

中国が世界中で進める「支配」の実態に目を向けるべき

今回の島根メガソーラーの舞台となっている松江市で活動する村松利恵市議(幸福実現党)によると、松江カントリーの跡地は長く放置されてきたため、地元では「やっと買い手が出てきた」という印象を持つ人も多いという。

ただ、民主化運動を行ってきた人々が次々と弾圧・投獄され、中国共産党の支配下に入ってしまっている香港の現状を考えると、中国の強い影響下にある香港系企業が、原発からわずか6キロの距離にメガソーラー施設を造ることに対しては、一定の警戒が必要だろう(2022年12月号「『東洋の監獄』と化した香港を見捨てるな」)。

懸念材料は、それだけではない。

中国政府が、外国にいる中国人を取り締まるために、世界54カ所に中国の「警察署」を違法に設置し、反中国的な発言や活動をした疑いのある中国人を捕まえて、強制的に中国に帰国させる活動を行っていることを考えれば、なおさらだ(2022年11月2日付本欄「『中国の警察拠点が、日本の東京・秋葉原を含めて世界に54カ所ある』とスペイン人権団体の報告書 カナダ警察は捜査に着手 脅迫、誘拐、処刑──中国の工作の実態」参照)。

松江市に限らず、「やっと買い手がついた」「香港系の企業だから大丈夫」などと楽観してはいられないだろう。将来的に、大きな代償を払わされる危険性が潜んでいる。

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『ザ・リバティ』2022年5月号:山口県岩国市の「中国ソーラー」問題を掲載

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