2022年5月号記事

現地ルポ

山口最大のソーラーを中国国有系企業が買収

「中国ソーラー」が日本の電力網を破壊する日


山口県岩国市美和町の山中で、県下最大のメガソーラー(建設中)が、中国国有系企業に電撃買収された。

ディズニーリゾート以上の巨大敷地

その広さたるや、なんとディズニーランドとディズニーシーを合わせた以上の規模。30万枚ものソーラーパネルが敷き詰められ、発電量は岩国市民の4割近くにあたる2万2500世帯分だという。

規模もさることながら、今回のケースはその「経緯」からしても、全国に知られるべき重大案件である。

「メガソーラーの事業会社は2021年9月、中国の上海電力(日本法人、以下同)に買収されました。しかし市側がそれに気づいたのは、12月に入ってからだったのです」

こう語るのは、岩国市議の石本崇氏だ。

いつの間に中国資本にすり替わった

メガソーラーの建設事業自体は以前から知られており、環境保護の観点から反対運動もあった。

しかしその事業者が上海電力に"すり替わった"ことは、市にも地元住民にも一切知らされておらず、少なくとも日本語では何らの発表もなかった。

数カ月経って、たまたま上海証券取引所の中国語情報を見ていた石本市議の知人が見つけ、知らせてきたことから発覚したのだ。つまり運よく見つかったからよかったものの、そうでなければこの買収案件は誰にも知られることがなかったことになる。

これが意味すること。それは、全国の相当数のメガソーラーが、知られることなく中国資本の傘下に入り、日本の電力インフラに接続されているであろうという現実である。

なぜか口をつぐむ上海電力

買収発覚後、市や地元メディアは事の重大さから、急いで上海電力に事実関係を問い合わせる。だがその返答は、地元の不安をますます強めた。

「この件については一切、お答えできません」

街ひとつに相当するような発電所を開発しながら、地元や自治体とのコンタクトを一切拒否する──明らかに異常である。何か実態を知られてはいけない"機密"でもあるのだろうか。

このソーラーは物理的にも姿が見えない。地元の人の案内で、記者も現地に向かった。岩国市の中心街から車で約1時間。山あいに沿って蛇行する道路の左右に、民家がぽつりぽつりと点在する。狭い谷に敷き詰められた田畑では、住人たちが農作業をし、たき火で枯葉を焼くなどしている。まさに日本らしい里山の風景の中を進んでいくと、その先に巨大な中国資本ソーラーがあることが信じられなくなってくる。

だがいざ現地に近づくと、さらに信じがたい光景があった。開発地にいくら近づいても、その周囲をぐるぐる回っても、ディズニーリゾート大の造成地は、ほとんど姿を見せない。実感的にはそこに何もないかのようだ。それもそのはずこのメガソーラーは、ひとつの山の上面を削るような形で開発されている。周囲から見上げても山と森しか見えないのだ。

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〈上〉山林の上に広大な造成地が広がる岩国市美和町。周囲からは、そこに何があるのか見えない状況だ。
〈下〉地元の自治会が立てた反対運動の看板。

 

次ページからのポイント

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