今年5月、東京都内の首相官邸で日米豪印4カ国「クアッド」首脳会議が行われ、バイデン米大統領とインドのモディ首相が会談しました。画像:Clicksbox / Shutterstock.com

《ニュース》

財政破綻したスリランカを巡り、中国とインドの睨み合いが続いています。

今月16日、スリランカのハンバントタ港に中国人民解放軍の調査船「遠望5号」が入港しました。

当初スリランカは、「スパイ船」と懸念する隣国インドやアメリカに配慮し、中国に入港延期を要求。しかし、経済危機に陥るスリランカが国際通貨基金(IMF)から支援を取り付けるには、主要債権国である中国との債務再編交渉が欠かせないため、最終的に入港を認めました。

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この背景として、スリランカでは長年、親中派のラジャパクサ一家が政治を牛耳ってきた問題があります。

今回の経済危機を受けて、国外逃亡したゴタバヤ・ラジャパクサ大統領の実兄であるマヒンダ・ラジャパクサ氏は、2005~15年にわたって大統領を務め、中国との経済関係を強化。後に債務の返済に行き詰まり、99年間の運営権を中国に引き渡すこととなるハンバントタ港を含め、複数の大規模プロジェクトを進めた人物です。

しかし14年に首都コロンボの港に中国の潜水艦が寄港したことで、国民の反中感情が高まり、15年には日本やインドとの関係強化を訴えたシリセーナ大統領が当選(インドによる野党統一を促す働きかけもあったとされる)。新政権は脱中国に舵を切るも、政権内部の対立に加えて中国による工作活動もあり、19年にマヒンダ氏の実弟であるゴタバヤ・ラジャパクサ元国防次官が大統領に当選。親中路線に回帰した流れです。

しかし膨大な借金の返済で外貨が不足し、深刻な経済危機に陥ります。今年3月から政府に対する抗議デモが相次ぎ、5月に大統領の兄マヒンダ首相が辞任、7月には大統領のゴタバヤ氏が国外逃亡する形で辞任しました。

その後7月20日、スリランカ議会がラニル・ウィクラマシンハ首相を新たな大統領に任命。同氏は、中国と並んでスリランカの主要債権国である日本に対し、スリランカの債務再編に向けた協議を主導するよう求めています。

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