2021年8月号記事

地域シリーズ・広島

コロナにも脱炭素にも負けず

マツダの自動車を守れ!

コロナ不況の足音がしのび寄る中、「脱炭素」という新たなハードルを課せられそうな製造業。
広島の繁栄を守るために、超えてはならない一線がある。

(編集部 河本晴恵、駒井春香)

広島県は「ものづくり」が強い。造船・鉄鋼・自動車などの重工業から、電気機械・電子部品など先端産業に至るまでの産業群がある。「製造品出荷額等」は、中国・四国地方で1位だ。

広島県内の製造業の中心となっているのが自動車産業だ。広島創業のマツダは20年度、コロナ禍で販売店が休業した影響などで世界販売が9%減ったものの、21年4月期はコロナ前より4%増まで持ち直した。

コロナに加えて「脱炭素」の波

そんな中、「脱炭素」の波が日本を襲う。自動車分野では、欧米で進む「ガソリン車・ディーゼル車の新車販売禁止」が導入されるかどうかが焦点の一つ。日本政府は昨年12月、2035年に新車電動化という目標を掲げた。これに対し、トヨタ自動車の豊田章男社長は、日本自動車工業会の会長としての4月の会見で、「ガソリン車やディーゼル車の禁止政策は、技術の選択肢を自ら狭め、日本の強みを失いかねない」と語るなど、重ねて警告している。

マツダは5月、2030年までにEV比率を25%まで上げると発表した。これまで、世界初のロータリーエンジンや、ガソリンでもハイブリッド車並みの燃費性能となるスカイアクティブ・テクノロジーなどを開発してきた同社の、今後の舵取りが注目されている。

また、環境省が試算した、一定以上の規模の事業所が出す温室効果ガス排出量の合計で、工業県の広島県は全国3位(下図)。排出量を46%減らすという政府の目標をまともに達成するには、排出量の多い鉄鋼所などは「狙い撃ち」されかねない。

政府の「脱炭素」策をまともに実行すれば、産業はひとたまりもない。サバイバルのための考え方が必要な時が来ている。

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福山地区の製鉄所。写真提供:ピクスタ

 

次ページからのポイント

マツダ(株)元ブランド戦略マネージャー 迫 勝則氏インタビュー

自動車経済評論家 池田 直渡氏インタビュー

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(株)ユキ建設 代表取締役 福田 卓三さんインタビュー

新井ゴム工業所 社長 新井 秀明さんインタビュー

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