7日、イランのテヘランで行われたソレイマニ司令官の葬儀。写真:saeediex / Shutterstock.com。

《本記事のポイント》

  • イランでささやかれる「米国がソレイマニ司令官を殺害した理由」
  • ハメネイ師の死後、司令官が国のトップに立つ可能性があった
  • 「軍事的英雄」の求心力で、イランが強くなることを恐れていた?

城取 良太

プロフィール

(しろとり・りょうた)HS政経塾(第1期生)在籍時に中東研究を専攻し、2012年にカイロ・アメリカン大学に留学。現在、幸福実現党広報本部に所属。

1月3日、イラン革命防衛隊で対外工作を主とするクドゥス部隊(アラビア語でエルサレムの意味)のソレイマニ司令官が、米軍のドローン攻撃によって暗殺されました。

これに対し、イランは7日、報復としてイラクにある米軍基地をミサイル攻撃しましたが、翌8日、トランプ米大統領は声明で「被害はゼロだった」として、これ以上の軍事行動について、現段階では明言を控えている状況です。

「米国はソレイマニ司令官をなぜ暗殺したのか」という点に関して、イラクにおける米軍と親イラン・シーア派武装組織の衝突激化が直接的要因として報じられています。

現地でささやかれる「革命防衛隊のクーデター」

しかし、今後のイラン政治の展望について、現地の政治情勢に詳しいイラン人に取材したところ、ソレイマニ司令官殺害について、違った側面が見えてきました。

それは、既に80歳と高齢の域に達している最高指導者ハメネイ師が死去した後、イランはどうなるのかという視点です。

現地では、先代のホメイニ師が提唱した「法学者の統治(ヴェラヤーテ・ファキーフ)」を継承し、宗教指導者を国のトップに据えるのではなく、革命防衛隊がクーデターによって軍事政権を樹立するのではないかと、まことしやかにささやかれているというのです。

そもそも革命防衛隊は、イラン革命(1978~79年)で樹立されたイスラム体制を守る親衛隊的存在でした。しかし、時代的変遷を経て、空軍、海軍等も併せ持つ軍隊として、国軍に並び立つ存在になっていきます。

また、軍産複合体として、石油やインフラ敷設など「イラン最大のゼネコン」と呼ばれるぐらい、幅広く経済活動にも従事しています。

イランのトップに立つ可能性があったソレイマニ司令官

そのような革命防衛隊において、イラク、シリア、レバノン等を中心とした対外工作を担う、精鋭クドゥス隊のソレイマニ司令官は、まさにイランを代表する軍事的英雄でした。

ソレイマニ司令官について、欧米や日本のメディアは、クドゥス隊による反体制派への弾圧や要人殺害などに対し、「テロリストの親玉」というレッテルを貼りがちです。

客観的事実として、そうした面はあるものの、「軍人としての傑出した有能さ」「信念の強さ」「国に全てを捧げる自己犠牲の精神」「人格の高潔さ」に対して、たとえ反体制派の人であっても、異論を挟むことは出来ない存在だったようです。

そうしたある種の「徳の高さ」を認められていたため、現体制下でも、有力な大統領候補の一人として呼び声が高かったのは当然です。

しかし、それ以上に信ぴょう性が高いのは、前述した通り、ハメネイ師の死後、イランが誇る軍事的英雄として革命防衛隊に担がれ、クーデターによって国のトップとなるという見立てです。

アメリカは「軍事的英雄」の求心力を恐れていた?

もしそうなっていたら、イラン国内の情勢、また米国から見ると、どのようになったでしょうか。

現在、イラン国内においては、一応、民主的なプロセスを経て、議員や大統領が選ばれていますが、民主制が排除される、または、実質的に大幅に制限される政治体制になる見込みが強いとも推測されます。

また、民主化を求めるようなデモに対しても、現在よりも強硬な手段を採ることも十分ありえます。

確かに、中東・北アフリカのイスラム国家において、歴史的に、クーデターによる軍事政権化は少なくはありません。しかし、いずれもイスラム体制とは一線を画しており、革命防衛隊のような、いわば「政教一致」的な軍事組織はありませんでした。

米国の視点から見ると、62歳と若い軍事的英雄ソレイマニ司令官を求心力に、革命防衛隊がイランの軍事政権を担うことになったら、今までより遥かに、米国の中東政策は困難になる、と考えてもおかしくありません。

そういう意味でも、米国にとってイラン人の中で最も脅威だったのは、ソレイマニ司令官だったともいえるでしょう。

(幸福実現党広報本部 城取良太)

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