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《本記事のポイント》

  • "だまし討ち"の火葬場建設に抗議殺到
  • 中国史では、革命は南から起きる
  • 中国共産党が、じわじわと追い詰められている

民主派デモが盛り上がる香港から、わずか100キロメートルしか離れていない中国広東省の茂名市化州市文楼鎮(もめいしかしゅうしぶんろうちん)に、デモが飛び火した。

"だまし討ち"の火葬場建設に抗議殺到

事の発端は、化州市人民政府が、文楼鎮中心部から十数キロメートルの場所に、1万5000平方メートルのエコパークをつくるという案を発表したことだ。それに伴い、政府は村民から建設賛成署名を集めた。お年寄りさえ、署名した。

ところが11月27日、政府は突如、エコパークの中に、火葬場も建設すると公表した。村民を騙したのである。

近年、中国の人々は環境問題に敏感になっている。激怒した村民らは、政府に対して抗議すべく立ち上がった。デモの中には、13歳にも満たない少年もいた。

しかし政府は、すでに村民の抗議を予想していた。およそ1000人の特殊警察を待機させていたのである。警察は抗議者に対し、装甲車や高圧水車、ヘリコプター、ドローンで鎮圧を行おうとした。28日・29日の両日で、2人の村民が死亡し、多数の負傷者も出たという。そして、村民約50人が警察に逮捕されている。

騒乱の際、村民らは口々に「時代革命、光復茂名」と叫んだ。まさに、香港で叫ばれているスローガン「光復香港、時代革命(香港の解放、私たちの時代の革命)」の"茂名バージョン"である。また、「香港独立」を真似て「茂名独立」という言葉まで登場した。結局、化州市人民政府は、火葬場の建設構想を撤回すると発表した。

香港デモの飛び火は、中国共産党にとって"悪夢"だろう。

中国史では、革命は南から起きる

中国史を紐解けば、大陸での革命は、しばしば南部(広東省)から始まっている。

例えば、孫文の「中国革命」も広東省広州市から始まった。孫文の後継者、蒋介石も広州市から「北伐」を開始している。

共産党は、香港が火付け役となり、広東省に騒乱が発生すれば、中国全土に拡大するのではないかという恐怖心を抱いている。そのため、徹底的に武力弾圧を行う。

追い詰められる中国共産党

しかし共産党は、活気のある民間企業と"ゾンビまがい"の国有企業を合体させる政策「混合所有制」のツケがまわり、経済危機を迎えている。

その様子は、トランプ米大統領の「香港人権法」署名への報復にも表れた。

中国政府は12月2日、経済報復ではなく、米軍の艦艇や航空機が整備のために香港に立ち寄ることを拒否する措置を決定した。

大統領選挙を前に好景気を維持しておきたいトランプ政権に対し、経済報復を行えば、それなりのインパクトを与えられたはずである。しかし、そのしわ寄せが回り回って中国に及べば、経済は壊滅状態に陥る。

中国はいつまで、武力に頼った政権を維持できるのだろうか。

拓殖大学海外事情研究所

澁谷 司

(しぶや・つかさ)1953年、東京生まれ。東京外国語大学中国語学科卒。東京外国語大学大学院「地域研究」研究科修了。関東学院大学、亜細亜大学、青山学院大学、東京外国語大学などで非常勤講師を歴任。2004年夏~2005年夏にかけて台湾の明道管理学院(現、明道大学)で教鞭をとる。2011年4月~2014年3月まで拓殖大学海外事情研究所附属華僑研究センター長。現在、拓殖大学海外事情研究所教授。著書に『人が死滅する中国汚染大陸 超複合汚染の恐怖』(経済界新書)、『2017年から始まる! 「砂上の中華帝国」大崩壊』(電波社)など。

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