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《本記事のポイント》

  • タンカー攻撃にも、日米安保破棄報道にも反応しなかった世論
  • 年金危機より国防危機の方が早く来る
  • 日本の民主主義は機能しているか?

第25回参院選の投開票が行われ、22日未明、改選124全議席が確定した。自公・与党は改選過半数を超えたが、いわゆる「改憲勢力」は発議に必要な3分の2を割った。一方、立憲民主党がほぼ倍増となった。

今回の参院選で注目すべきは、その結果もさることながら、「ほぼ同時に起きた、日本の安全保障を揺るがすニュースに、世論がほとんど反応しなかったこと」だ。

選挙と同時に起きた安保を揺るがす事件

ホルムズ海峡において6月、日本のタンカーが攻撃を受けた。これは、「日本のタンカーが止められれば、日本経済は瀕死の状況に陥るし、そうなる可能性は大いにある」ことをまざまざと見せつけられた事件だった。

同月に行われたG20に際し、トランプ米大統領は「もし日本が攻撃されれば、米国は第三次世界大戦を戦う」「もし米国が攻撃されても日本は私たちを助ける必要は全くない。日本人は米国への攻撃をソニー製のテレビで視ることができる」と苦言を呈した。そして、腹心に対して日米同盟破棄の可能性について言及したと報じられた。

参院選公示日とほぼ時を同じくして、中国が南シナ海で初めて、対艦弾道ミサイルの発射実験を行った。発射されたのは、通称「空母キラー」と呼ばれるDF-21Dか、「グアム・キラー」と呼ばれるDF26だとされている。つまり、「中国がアジアで"何か"をした時、アメリカが駆けつけてきたら空母を沈め、グアムを火の海にする」という脅しだ。

「日本が平和主義であれば戦争は起きない」「いざというときはアメリカが守ってくれる」という幻想が目の前で崩れ落ちている。日本人は、もう少し健全なパニックを起こす必要があった。

それでも争点は「年金」

しかし、参院選最大の争点は「年金」となった。

読売新聞の調査において、有権者が最も重視した政策は、「年金など社会保障」が41%と最も多く、「景気や雇用」が19%、「外交や安全保障」が10%となった。

立候補者への同趣旨のアンケートでも、「年金・医療など社会保障制度改革」が50%と最も多く、その後に「景気・雇用対策」(38%)と「消費税」(32%)が続いた。「憲法改正」(20%)は5番目だった。

「30年間で老後資金2000万円が必要」と大騒ぎになったが、中国は2020年ごろから台湾統一戦争を始め、25年ごろから南シナ海の諸島をほぼ手中に収め、日本のタンカーの通り道を自国の「庭」にするつもりだ。そして40年頃から尖閣諸島や沖縄などに手を伸ばすと言われている。

年金危機よりも、国防危機の方が早くやってくる可能性が高いのだ。

日本の民主主義は機能しているか?

自民党は、そうした危機を知ってか知らずか国民に訴えず、改憲の中身も骨抜きにしている。公明党や多くの野党は相変わらず憲法9条を盲信し、マスコミも先のようなニュースの重大さを十分に伝えず、日本人の関心事を「年金」に染め上げた。

そんななか、選挙区・比例区で計12人の候補者を擁立した幸福実現党は「憲法9条改正」「防衛費の倍増」などを正面から訴え続けた。

上記のような安倍政権の煮え切らない姿勢に不満を持つ保守層のなかでは、「幸福実現党もっと票が集まっても良いと思うんだけどな」「幸福実現党って支持母体が幸福の科学だからちょっと身構えそうになるけど、言ってることはまともだし保守政党としても理想だなと思いました」(ツイッターでの書き込みより)といった意見も相次いでいた。

同党は議席を獲得するには至らなかったが、正々堂々と国防の必要性を訴えたことは、世論に一定の影響を与えたと言える。

釈量子・同党党首は自身のツイッターにおいて「現状打破の力足りえなかったことに忸怩たる思いです。主権国家としてのあるべき姿と繁栄のため、断固戦いを続ける所存です。引き続きのご支援を、伏してお願い申し上げます」とコメント。迎合せずに真に必要な政策を訴え続ける覚悟を示している。

日本の民主主義が本当に正しく機能しているのか、もう一度冷静に見直す時ではないか。

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