9日に香港で行われた「逃亡犯条例」改正案に反対するデモの様子(samuelwong / Shutterstock.com)。

香港で今、大規模なデモが起きている。参加者たちは、香港で身柄を拘束した容疑者を中国本土に移送できるようにする「逃亡犯条例」の改正案に反対している。

9日のデモには約103万人が参加したが、林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は条例改正を予定通り進めると明言。12日には、デモ隊に向け、警察が催涙弾を発射。13日には、立法会(議会)周辺への一般人の立ち入りが規制された。

この改正案が成立すれば、中国に批判的な言動を行う香港人や香港を訪れた外国人らが、中国に身柄を引き渡される恐れがある。そうなれば香港は、今までのような自由な場所ではなくなってしまう。

「改正案は悪」「デモは善」という価値判断をしない日本

香港でデモが続く中、2014年の香港民主化運動「雨傘革命」をリードした周庭(アグネス・チョウ)さんが来日し、改正案の危険性を訴えた。10日には日本記者クラブで会見し、「香港政府は改正案を撤回すべきだ」と批判した。

大川隆法・幸福の科学総裁は13日、アグネスさんの基本的な考え方を知るため、守護霊霊言を収録した。アグネスさんの守護霊は冒頭、今回のデモについて、次のように語った。

雨傘革命で頑張ったけど負けたので、 (中国や香港政府は) それで抑え込めたと思っているけど、今回は前回よりもっと大きい運動になっているから、香港人全員に利害関係があるし、台湾の方からも声が上がっている。蔡英文さんも『中国の一国二制度は信用できないんじゃないか』と言っているし、欧米の方からも非難の声は上がっていますが、日本の声は小さい。 (中略) メディアは多少取り上げてくれますが、責任を取らないね

米政府は、デモ参加者を擁護する立場を表明し、欧州連合(EU)やカナダも、改正案に懸念を示した。一方、日本政府は何ら立場を表明しておらず、日本のメディアもデモを報じるだけで、「改正案は善なのか悪なのか」「デモは善なのか悪なのか」といった価値判断をしていない。アグネスさんの守護霊は、これに不満を持っているようだ。

日本にとっても、対岸の火事ではない

「中国建国の父」と称された初代国家主席・毛沢東は、「新民主主義」という概念を打ち出しており、中国も表向きは民主主義を尊重する国だと主張している。だが、アグネスさんの守護霊は、"中国の民主主義"について、香港の民主主義と違うと指摘した。

その民主主義を私なりに翻訳したら、『お前らバカは黙っとれ』『共産党のエリートの偉い人だけが判断したら、その通りやったらいいんだ』ということ

中国政府は、自由や民主主義を求めて平和裏に抗議活動する人々を拘束・拷問している。こうした国が民主主義国家であるとはとても言えない。

一方、「香港は中国に返還されたのだから、中国の一部になって、何の問題があるのか」という意見もあるだろう。アグネスさんの守護霊は、こう指摘する。

『香港を広州やマカオと一緒にして、経済繁栄をつくらせてやるから、黙って言うことを聞け』という感じです。『全権委任せよ』『香港の自由を全部返還せよ』と、こういうことでしょう? 『我々が新しい中華南部の経済圏をつくってやるから、全部任せろ』と、権限を取り上げようとしているのだと思う

現在、中国の都市部の繁栄は目覚しく、香港は"中国の一地方都市"レベルになっている。香港をより繁栄させる代わりに、さまざまな自由は放棄させるつもりだ。自由と民主主義を享受している香港人にとっては、耐えられないことだろう。

またアグネスさんの守護霊は「 日本は、対岸の火事だと思っていると思うけど、いずれ火がついてきますよ。香港、台湾、日本の順番に来る 」とくぎを刺した。

民主主義と関係があるアグネスさんの魂

さらにアグネスさんの守護霊は、宗教的な話題にも踏み込んだ。自らの魂の役割については、「 民主主義と関係がある 」と語った。

現在、アグネスさんは、ドイツ系ユダヤ人の政治哲学者、ハンナ・アーレントの霊からの励ましを受けているという。アーレントは、ナチスのユダヤ人迫害を経験しており、生涯を通して全体主義を批判した人物だ。

最後にアグネスさんの守護霊は、自らの信仰観や使命感、中国への思いについて、こう語った。

基本的に神様は人々を愛してなきゃいけない。人々を救うために、自分の身を捨ててでもやってくださる方々だと思います。私も拙い仕事だけど、少しだけでもお役に立ちたい。 (中略) 自由の広場を失いたくないと思っています。こんなに大きな中国だから、一カ所ぐらい国際社会が自由に出入りできて、情報交換できて、ビジネスができるところがあった方が、中国本土にとっても有利だと思う。そういう意味で愛国心がないわけじゃない

アグネスさんには、香港の自由と民主主義を守る使命があるようだ。また香港の自由を奪っていく中国を憎んでいるわけでもなく、「よくしたい」と考えている。

「逃亡犯条例」の改正案が成立すれば、アグネスさんなどの香港民主化を求める若者たちは捕らえられ、中国に送られてしまう可能性が極めて高い。

中国の暴挙を、これ以上許してはならない。日本は、香港の自由と民主主義を守るために声を上げ、国際社会からの圧力によって、"香港の中国化"を阻むべきだ。

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