中国は共産党立党100周年にあたる2021年までに、台湾の侵略を目標にしている。写真は、台北の中心部。

2019年7月号記事

Inside Watch

中南海 インサイドウォッチ

第100回 最終回スペシャル

2011年2月号からスタートした本連載が最終回を迎える。
中国指導部の内側を鋭くレポートしてきた相馬氏に、
本誌編集長が米中対立や民主化の行方を聞いた。
(文中、敬称略)

ネット社会で広がる天安門以上の運動

ジャーナリスト

相馬 勝

プロフィール

(そうま・まさる) 1956年生まれ。青森県出身。東京外国語大学中国語科卒。産経新聞に入社後、香港支局長、外信部次長などを務める。98~99年、ニーマン・フェローとして米ハーバード大学に留学。2010年に産経新聞社を退社。現在、ジャーナリストとして活躍。著書は『習近平の「反日」作戦―中国「機密文書」に記された危険な野望』(小学館)など多数。

「ザ・リバティ」編集長

綾織 次郎

プロフィール

(あやおり・じろう) 1968年生まれ。鹿児島県出身。一橋大学社会学部卒。産経新聞に入社後、政治部で首相官邸などを担当し、2001年に幸福の科学に奉職。現在、幸福の科学常務理事、HSUビジティング・プロフェッサーなどを兼任。著書に『「日出づる国」日本のミッション』(幸福の科学出版)などがある。

綾織編集長(以下、綾): 8年半にわたって連載を執筆いただき、ありがとうございました。

相馬氏(以下、相): こちらこそ。

綾: 連載のきっかけは9年前、弊誌2010年7月号「『中国のヒトラー』登場に警戒せよ」という習近平に関する企画でした。当時の書籍『習近平の正体』が素晴らしく、取材を申し込みました。

取材から帰ってきた編集部員が「綾織さんの元上司でしたよ、って」。著者名が「茅沢勤」というペンネームだったので、全く気づきませんでした。その意味では、「習近平が結んだ縁」です(笑)。

相: 当時、ポスト胡錦濤に注目が集まり、私は「次の国家主席は習近平で決まり」と踏み、出版社も意気込んで、本の帯に「次期中国国家主席 世界初の本格評伝」と見出しをつけました。

倒産500万社、失業1千万人

相: 習近平は、中国共産党における最高で最大の偉人である毛沢東を利用し、乗り越え、さらにその先に行こうという野望を持っているように見えます。ただ最近は、少し無理をして背伸びし過ぎている。

綾: 米中貿易戦争で窮地に立っているからでしょう。国際通貨基金(IMF)の試算では、米中双方が全品目に25%の追加関税をかけたら、米中間の貿易が30~70%落ち込む。ダメージが大きいのは輸出依存の中国です。

相: 中国はすでに大きなダメージを受けています。昨年、500万社が倒産し、1000万人が失業しました。

通信機器大手「ファーウェイ」などの先端技術が注目されがちですが、中国製品の売れ筋は日用品や雑貨など100円ショップで売られているような安いもの。外国企業が中国からどんどん逃げ、都市部に出稼ぎに来ていた農民工は職を失っています。

自動車や不動産などが売れず、都市部のホワイトカラーも給料が上がっていません。

綾: 今まで中国は知的財産権の詐取などで経済と軍事を強化してきました。これはトウ小平時代以降、30~40年やってきた「中国の成長パターン」。習近平がこれをやめるのは難しい。米中貿易協議でも、「こんなものは受け入れられない」と拒否すると、トランプからさらに関税をかけられるなど全て裏目に出ています。

次ページのポイント

中国の民主化の可能性は?

米中の対立が長期化する想定も必要