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2019年2月号記事

編集長コラム Monthly  Column

中国という国の本質

──「毛沢東信仰」の先に未来はない

トランプ米大統領が仕掛ける貿易戦争はG20で「一時休戦」と報じられたが、アメリカの依頼でカナダがファーウェイの副会長を逮捕したことで、対決路線が再び強まった。

2019年は「米中冷戦」がさらに加速しそうだ。

中国の習近平・国家主席は貿易戦争が本格化した18年夏、「欧米には、左の頬を打たれたら右の頬を差し出すという考え方があるが、我々の文化では殴り返す」と語ったと報道された。アメリカに真っ向から対抗するそのスタンスは今も基本的に変わっていない。

習近平氏は任期をなくし、「終身皇帝」を決めた17年の党大会で、「中華民族が世界の諸民族の上にそびえ立つ」と宣言。アメリカをしのぐ超大国になることを目指している。

時代の流れに身を任せれば、日本は中国に呑み込まれてしまう。 今、立ち止まって、中国がどんな本質を持つ国なのか、中国の歴史の中で「共産中国」がどう位置づけられるのか を検証し、日本としての未来戦略を考えてみたい。

皇帝は「天帝の配偶者」

中国の歴史は、基本的に「皇帝システム」で理解できる。

(1)皇帝は、秦の始皇帝に始まる歴代王朝のトップに立つ者だが、宗教的に理解すれば、中国を導く 最高神である「天帝」の配偶者という位置づけ があるという。だから、天帝の考えに沿わず、中国の民を不幸にする皇帝は正統性を失い、別の王朝に取って代わられた(易姓革命)。

中国の歴代王朝で最も栄えたのは唐の時代で、長安には仏教を中心にキリスト教、ゾロアスター教、マニ教、景教(キリスト教の一派)、イスラム教などの寺院・教会が立ち並んだ。天帝の下で「信教の自由」を謳歌でき、理想的な統治となった。

(2) 皇帝制は、経済的には「商社」としての機能だった。 皇帝は各地で市場を開き、商人が集まった。蛮族と位置づけられる辺境の民も参加してくるので、信用できるか分からない。

そこで皇帝や役人は日にちを決めて天帝を祭る神事を行い、商人たちを一時的に「神の氏子」に変えて市場に参加させた。「天帝に仕える商人」同士ならば信用することにする、というわけだ。

皇帝は、現代の商社のように、市場や流通過程で手数料(税金)を取った。税金を安く抑える皇帝は賢帝と称えられた。漢の3代目・文帝、4代目・景帝は「減税政策」を貫き、民の懐を豊かにした。 中国の民を「食べさせる」ことができるのが、皇帝の正統性だった。

「冊封」は単なる友好関係

(3)歴代王朝は、中国人が最も優れた民族であるという「華夷秩序」の考え方の下、 周辺の「蛮族」に朝貢させる「冊封体制」 を築いた。

漢の武帝などは北方騎馬民族や朝鮮半島を征服し、支配下に置いた。周辺地域を力でねじ伏せて支配することは、皇帝の正統性の一つの証明ではある。

ただ、基本的には 朝貢は皇帝と他の国のトップとの個人的な友好を保つことの表明 であり、「属国」として服従するケースは少なかった。清時代の日本の琉球王朝が送った朝貢使節も、属領となるものではなく、平和で安定的な関係を保つため。国内向けには皇帝の「徳」を宣伝する材料に使われた(*1)。

これら3つの条件を満たすのが「徳ある皇帝」だ。逆に、王朝が取って代わられる「易姓革命」は次のパターンで起こる。(1)天帝が皇帝を見放す。(2)皇帝が民を食べさせられなくなり、民衆が反乱を起こす。(3)周辺との友好関係が崩れ、他民族によって支配される。

実際には(1)~(3)が複雑にからみ合い、王朝交代の歴史が形づくられた。

では、1949年に中国共産党が建国した現代の中国は、この歴史の中でどう位置づけられるだろうか。

(*1)(1)~(3)は主に東洋史学者・岡田英弘氏の説による。

中国の歴代王朝―「天帝の配偶者」としての皇帝が統治した

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「毛沢東皇帝」の正統性は?

共産中国は世襲の皇帝制を採っていないが、建国の父・毛沢東は死ぬまで最高権力者の地位に立ち続け、実質的な「皇帝」だった。しかし、3つの理由から「天帝の配偶者」とはほど遠い存在だった。

(1)毛沢東は唯物論のマルクス主義を信じていた。青年期に中国の古典や西洋の哲学書を読み漁り、共産主義者になることを選び取った。マルクス主義は「神を憎む宗教」なので、中国において憎む対象は天帝となる。

毛沢東が指揮した66~76年の文化大革命では、仏教、道教、キリスト教など各宗教の聖職者が投獄・処刑されたり、寺院・教会が破壊されたりした。

共産中国は、建国の時点から天帝の考えに反する国だといっていいだろう。

(2)毛沢東が推進した「大躍進政策」(58~61年)は約4500万人の餓死者を出したとされる。大躍進は、農業・工業・教育・軍事が一体化した共同体「人民公社」を各地につくり、自立した生産活動や生活を行う政策だ。大失敗に終わったが、毛沢東としてはアメリカとの戦争に備え、核・ミサイル開発に資金・資源を集中しつつ、国民総動員の「人民戦争」によって勝利する戦略の一部だった。

つまり、毛沢東は軍事を圧倒的に優先させ、「民を食べさせる」ための経済政策が頭の中にほとんどなかったというわけだ。

中国共産党に正統性なし?

(3)毛沢東が建国後すぐ、チベット、ウイグル、内モンゴルを侵略し、自国領土に編入した。この軍事行動は、「蛮族」を征服し、「皇帝」の正統性を打ち立てるためだという説がある。

百歩譲って「蛮族」が幸福になればいいが、起こったのは旧支配層や聖職者などの大量虐殺。そのため今でもウイグルなどの家庭では、子供たちに「共産党の人たちは神を信じない野蛮な人間だから、できる限り関わらないほうがいい」と教育しているという。

中国の歴代皇帝は、減税などで「民を食べさせる」ことができ、国力が充実した後、北方騎馬民族などの征服に乗り出すのが一つのパターンだった。しかし共産中国とは建国時から、平和な関係が期待できなかった。中国が自ら「蛮族」となって虐殺を繰り広げた。

中国共産党は、そもそも「皇帝」としての正統性がなかったのかもしれない。

正体は「不徳の暴君」

「大躍進」での餓死、文化大革命、チベットなどでの虐殺の犠牲者は6千万人以上にのぼるとされる。これはドイツのヒトラーやソ連のスターリンによる虐殺をはるかに上回る。

中国共産党は1976年の毛沢東の死後、「文革において重大な誤りを犯したが、功績のほうが誤りよりも大きい」と評価した。毛沢東の説く"教え"である「毛沢東思想」を党の基本原則として今も堅持している。

結局、共産党政権は「不徳の暴君」の正体を隠し、国民に「毛沢東信仰」を続けさせている。日本でも毛沢東の実体は十分明らかになっていない。日中国交回復の立役者として保守層からも一定の尊敬を集めている。

共産中国はその原点にさかのぼり、正統性を問い直すべき時期にきているのではないか。

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習近平は毛以上の「暴君」

毛沢東の死後、中国共産党は毛独裁の反動から最高指導者の終身制をやめるとともに、集団指導体制へ移行した。しかし、習近平氏は2018年3月、終身制を復活させ、独裁体制を固めようと動いた。 「習近平皇帝」が誕生したと言っていいだろう。

(1)28ページからの中国宗教弾圧ルポにあるように、習近平氏による宗教弾圧は、文化大革命を上回る苛烈さで、「天帝の配偶者」とは言えない。

(2)トップ女優ファン・ビンビンさんの脱税摘発やアリババ創業者のジャック・マー氏の引退に象徴されるように、富裕層や企業家は「いつ財産が没収されるか」と戦々恐々としている。これがバブル経済崩壊を加速させれば、「国民を食べさせる」ことが難しくなる。

(3)習近平氏がトップに立った2012年以降、周辺国との平和で安定的な関係は望めなくなった。南シナ海での"領土"拡張、一帯一路構想下の途上国支配など、世界中で「属国」をつくり出そうとしている。

習近平氏は積極的に「毛沢東崇拝」を推し進めており、毛沢東をさらにパワーアップした「暴君」が出現している。

「悪魔の頂点」に立つ

「暴君」ぶりは、幸福の科学のリーディングでも明らかになっている。これまで習近平氏の守護霊霊言は4回収録されているが、その度ごとに、自身を神と位置づけ、国民の幸福を犠牲にしつつ世界支配をやり遂げる野望を語った。

直近の毛沢東の霊言は2018年11月に収録された。そこで毛沢東の霊が「 地球の悪魔の頂点 」に立つ存在だと明らかになった。

1987年発刊の大川隆法・幸福の科学総裁の著作『黄金の法』(初版)では、その時点の評価として毛沢東は天国にいると推定したが、「 その思想上の間違いは今後とも明らかになりつづけるでしょう 」と記されていた。

毛沢東の思想と行動の間違いは、文化大革命に見られるように、学生の紅衛兵(*2)など大衆を動員して、親子や師弟の関係を破壊し、社会の秩序を崩壊させたことだろう。 共産党に同調しない考えの親を子供に告発させたり、学生たちに党の方針に反発する教師を糾弾・拷問死させることまでやらせた。

中国人は生活やビジネスについて一族(宗族)で助け合う伝統があるが、毛沢東はこの社会の結びつきを叩き壊した。

共産主義の本家のソ連では秘密警察組織が国民を粛清したが、毛沢東の共産中国はそれを"進化"させた。 大衆の数の力で粛清を実行し、善悪の価値観を逆転させる運動を全国で展開した。

毛沢東の建てた国はやはり、中国の歴史の中で正統性を欠くと言わざるを得ない。「毛沢東信仰」の先に未来はない。

(*2)文化大革命の際、毛沢東がつくった「共産主義を守る」ための学生組織。統制が効かなくなったため、学生たちは「下放」と称して農村部に送られた。

台湾に正統性

中国の歴史で考えると、正統性があるのは台湾のほうだろう。

(1)台湾では、唐代のような信教の自由が保障されている。中華圏で初めて民主主義体制を確立した。直接選挙で選ばれる総統は、「天帝の配偶者」になり得るものだ。

(2)台湾の国民一人あたりの所得は2010年の時点で日本を上回り、「国民を食わせる」役割を十分果たしている。

(3)中国の圧力で台湾が国交を結ぶ国はわずか17カ国に減少している。しかし、中身は中国が強引に進める支配・被支配の関係ではなく、冊封体制本来の平和的な友好関係だ。

台湾の宗教、政治・経済、外交のあり方を中国本土に広げることにこそ正統性がある。 おそらく「天帝」は、春秋戦国時代の諸子百家のように、さまざまな宗教や思想が競争し合う時代を望んでいるだろう。

幸福実現党の存在理由

日本国内を見ると、自民党議員の多くは毛沢東に肯定的で、安倍政権は一帯一路構想への協力に転じた。公明党は毛沢東との日中国交正常化交渉を橋渡しした自負から、共産中国へのサポートを常に惜しまない。野党は中国を理想の国であるかのように扱う。

アメリカは先の大戦で日本を叩き潰し、共産中国を誕生させた。80年代以降は中国の経済発展を支援し続け、中国の実体が見えていなかった。トランプ政権でようやく目が覚め、「米中冷戦」開戦へと突き進んだ。

トランプ大統領は、中国による異常な人権弾圧や、他国からの先端技術の略奪、世界支配の野望を阻止しようとしている。この「トランプ路線」に歩調の合う政治勢力が必要とされている。中国の脅威を訴え続けてきた幸福実現党が存在する理由はそこにある。

(綾織次郎)

INFO

大川隆法総裁霊言

毛沢東の霊言

中国建国の父・毛沢東が語る少数民族への弾圧、文化大革命、習近平氏への評価、米中貿易戦争―。「地球の悪魔の頂点」だったことが分かる衝撃霊言。


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