仕事をしていて、何だかやる気が出ない。明日も仕事があると、気分が重くなる――。そう思う人は多いはず。

そこで、『仕事が「ツライ」と思ったら読む本』の著者で、心理カウンセラーである心屋仁之助氏に、やる気がなくなる原因と対策について、話を聞いてみた(※本記事は、2011年7月号本誌の再掲)。

やる気をなくす原因は大前提の自己イメージにある

――性格とやる気にはどんな関係があるんでしょうか?

心屋(以下、心): カウンセリングの仕事をしていると、客観的に見て能力自体は高そうなのに、「仕事がうまくいかない」という悩みを持っている人が意外とよく相談に来るんです。

最初は不思議でしたが、何度も話をしているうちに、「こうした人は日頃のささいな出来事で気持ちが揺れ動いて、自分でモチベーションを下げてしまっている」ということを発見しました。仕事や勉強がうまくいかない背景には、「やる気をなくしやすい性格」が潜んでいることが実は多いんです。まずはそれに気づくことから始まります。

――その性格はどうやって見つければいいんですか。

心: 仕事や勉強をしていて、なんだか「イヤー」な気分になるとき、「面倒くさい」と感じるときはどのようなときかを書き出してみてください。

例えば、「やることが多すぎて手が付けられないとき」「月曜日がなんだかツライ」「苦手な上司と仕事するとき」「他の社員となじめない」などを思いついたとします。一見すると、たくさんの問題がバラバラに存在しているように見えますが、その理由をよくよく突き詰めていくと、「自分の力不足がばれて、信用を失いたくない」という怖れに集約されたりします。根っこは一緒だったりするのです。

こういう怖れを持っている人は、何かの拍子に「信用を失うんじゃないか」という気持ちがよぎると、自分がキューっとしぼんでいって、やる気がなくなってしまうのです。

面倒くさがりは怖がり?

心: 人はやる気がなくなるとき、「面倒くさい」という気持ちになるものです。この「面倒くさい」という気持ちは大きな福袋みたいなもので、それを開けるといろんなものが入っています。「嫌われたくない」「怒られたくない」「笑われたくない」「失敗したくない」「どうせ自分はダメなんだ」「信用をなくしたくない」など、やる気をなくしやすい人にはそれぞれ「何か怖れているもの」があるのです。

それが近づいてくると「イヤー」な気持ちになって、「やっぱりやめとこう」「今は時期じゃない」などと考え始めてしまう。面倒くさがりの人って、実は怖がりなんです。それを避けようとする習慣が身につくと、周りから「怠けている」「やる気がない」と思われるようになるわけです。

怖れに対する反応の仕方はいろいろあるので、その人の個性に応じて「すぐ不満が出る性格」「悲観的な性格」「自虐的な性格」「競争心の強い性格」「攻撃的な性格」「認められたい性格」など、さまざまな性格となって現れてきます。

――思い当たる気がします。その次はどうすればいいですか。

心: なぜ怖れるようになったのかを考えていくと、「過去の失敗」が何か思い当たるはずです。たいてい幼児期に何かあります。親から怒られたり、努力してもほめてもらえなかったり、「何でこんなこともできないの」と言われたりしたときの気持ちが、大人になっても心のどこかに残っているんです。その上にさらに、学校の先生や友達から言われたことや失敗した経験などが積み重なって、自分が怖れるものができ上がっているんです。

怖れていることが現実になる

心: 恐ろしい話ですが、強く何かを怖れている人は、わざわざ自分を怖れている方向へ持っていく傾向があります。能力が足りないわけではないのに、なぜか何度も同じ失敗を繰り返して悔しい思いをします。

実を言うと、本人は悔しい思いをすると、むしろ安心するんです。「自分はできない人間なんだ」など、マイナスの自己イメージを大前提として持ち続けているため、何かが上手くいきそうになると逆に不安になってくるんです。自己イメージとのギャップから、「こんなはずはない」と思ってわざわざ自分で成功を壊し始めたりします。結局、失敗して「やっぱり自分はダメだ」ということを確認するんですね。

海外旅行で観光名所などを訪れて感動しても、やっぱり日本に帰りたくなるのと同じで、「自分はできない人間だ」という住み慣れた自己イメージのほうに無意識に戻りたくなるんです。

こうして負のスパイラルに入っていくと、怖れを頻繁に感じるようになり、だんだん何をするのも面倒くさく、やる気がなってくるわけです。

――自ら失敗を呼び込んでやる気をなくしてるなんて……。

心: 人間関係も同じことがあります。例えば子供の頃、「親が他の兄弟ばかり可愛がって悔しかった、つらかった」という経験がある人は、「人を公平に評価しなければならない」という価値観を持つことがあります。それを社会人になってから上司に要求して葛藤をつくってしまうのです。

でも、こういう人はやっぱり評価されないことが多いようです。「公平に見てもらえない自分」という自己イメージがあると、そちらに引っ張られるんですね。それが分からない本人は、同じような状況になると、とたんにやる気をなくすようになる。対人関係で葛藤が出てくるタイプの相手は、実は自分が持っている怖れを教えてくれる人でもあるんです。

性格は変えられる

――本人にとって自己イメージは事実そのものなのでは。

心: 私も「自分はダメ」という大前提を持っていたから分かるのですが、そういう大前提を心の中に持つと、「自分がダメな証拠」が山のように集まってくるんです。

たとえて言うと、白い砂浜を歩いているのに、黒い貝ばかりが目に付くような感じです。「ここにも落ちてる」「あそこにも落ちてる」と思っているうちに、「他にも落ちてないかな」って自分から探し始めるんです。

私は黒い貝集めのスペシャリストでした。でも、黒い貝を1枚見つけるために、実際は白い貝を何十枚もわきによけてるんですよ。それに気づいて、私はもう探すのをやめました。誰だって探せば黒い貝は出てくるからです。

そして、「自分はダメじゃない」っていう新しい前提を何か入れる必要があると考えて、「自分は素晴らしいかも」と思うようにしました。そうすると、「素晴らしいよ」という証拠がふっと手に入るんです。最初は馴染めなくて、「やっぱりダメだ」と思わされることも出てきますが、素晴らしい証拠がだんだん増えてくると、マイナスの自己イメージに引っ張られなくなります。

本当は、「素晴らしい」という証拠は自分の周りに山ほどあるんです。それに気づくだけでも幸福感に満たされて、自信が出てきます。

逆に、怖れを持っている人は、なかなか心が落ち着きません。たとえ何かに成功しても、次は「その成功を失いたくない」「評価を下げたくない」「失望されたくない」という気持ちが出てきて、結局、怖れがなくならないからです。

黒い貝集めをしている人は、「~しなければならない」「~であるべきだ」という言い方をよく使います。怖れているものから自分を守りたい気持ちが、「べき」という言葉になって出てきているのでしょう。でも、これは疲れます。一見、向上心が強いように見えますが、案外、物事が続かないんです。

結局、「怖れ」に振りまわされている人は自信がなくて、「自分は人からどう見られるか」が気になって仕方がないのです。でも、やる気のある人は白い貝集めが上手で、「自分の仕事が他の人にどう役立つか」に関心があるものです。

――白い貝集めをするようになってどう変わりましたか。

心: 私は人からほめられることが増えました。自分は思っている以上に評価されて、愛されていることに気づきましたね。それは安心感につながるんです。そうすると、「多少、失敗してもいいかな」と思うようになって、新しいことにチャレンジできるようになるんです。

インタビューを受けるのも、以前なら「いいことを言わなければならない」と思って緊張しましたが、今は楽しくなりました。人付き合いも楽になりましたね。以前は「喜ばせなければならない」「つまらない思いをさせてはいけない」と考えていましたが、飾らない自分で大丈夫だと思うようになってから、会話の時の沈黙も気にならなくなりました。

やる気をなくしやすい性格は変えることができます。自分のなかにある怖れを発見して、それから自由になればいいのです。

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