2018年3月号記事

アンガーマネジメント入門

嫌われる叱り方
感謝される叱り方

上司と部下のそりが合わない。 部下がやる気を出してくれない―。

原因は「叱り方」にあるかもしれない。

怒りをコントロールする「アンガーマネジメント」を身に付け、人を動かす叱り方とは。

(編集部 山本慧)

社長に仕事量の相談をしたら、「 お前は時間の使い方が下手だ 」と一蹴された

(40代男性)

過去のミスまで蒸し返して、「 だからお前はそうなんだ 」と叱られた

(40代男性)

仕事の失敗が続き、女性の先輩から「 あなたはそういう人だからね 」とレッテルを貼られた

(30代男性)

上司に企画を提案したら、「 うさんくさい 」と不満げに言われた

(20代男性)

こちらが本心で反省の弁を口にしても、許してくれず、 延々と怒鳴られた

(40代男性)

指導中に、「 あんなことをする人間はダメだ 」と同僚の愚痴を平気で言う

(20代男性)

会社の経営危機を受け、給料の減額に渋々応じたら、社長から「 そもそも給料が高すぎる 」と言われた

(60代男性)

どうしてそんなに仕事ができないの? 」と真顔で叱られた

(20代女性)

あなたは単純思考しかできない 」と決めつけられた

(20代女性)

勇気を出してチャレンジした仕事がうまくいかなかった時、上司から「 できないなら最初からやるな 」と怒られた

(20代女性)

「仕事でミスをした時、女性上司から『なんでこうなったの?』と叱られ、事情を説明したら、すぐに『なんで?』と詰問された。『あー、この人は話を聞いてくれないんだ』と思い、口だけで謝っておきました」

入社4年目の20代男性は、真っすぐな目でそう話す。男性の性格はいたって真面目。感情的に叱られると、心の中で「我慢が必要」と言い聞かせても、「なぜあんな人が上司なの?」という思いも湧いてくる。こうした気持ちと格闘しながら、目の前の現実を"達観"しないと、働き続けられないという。

昨年11月末、横綱だった日馬富士も、後輩への指導のつもりで暴力を振るい、ついには力士引退に追い込まれた。怒りをコントロールできなかったことが一因だろう。カッとして人を傷つける事件は全国で毎日のように起きており、叱り方に自信を持てない人も87%に上る(*1)。

スピーディーな対応を求められる現代人こそ、怒りを抑えて、うまく叱る方法を身に付ける必要性は高まっている。

(*1)2017年6月22日号「Tarzan」

頭ごなしに否定しない

学校では習わないが、叱り方には「技術」があるようだ。

今回、取材に応じてくれた20人近くのほぼ全員が、上司が自分の仕事をどれだけ把握しているかを気にしており、頭ごなしに否定することは「勘弁してほしい」と答えた。

取材を通じて分かってきたのは、人を叱る前には、「最近、頑張っているね」「昨日の資料をよくまとめた」「今月も順調だね」などと褒め、日ごろの仕事ぶりを気に掛けた言葉を投げかける大切さだ。いつも見ているからこそ、叱る際の説得力も増すのだろう。

具体的な叱り方について、20代男性は「感情的にならず、こちらの言い分に耳を傾け、事実ベースで問題点を指摘し、解決策を考えさせるやり方だとうれしい」と話す。

次ページからのポイント

やる気を上げる叱り方

インタビュー:江口克彦氏 江口オフィス代表取締役 / 「松下幸之助の叱り方の流儀」

アンガーマネジメントの極意