《本記事のポイント》
- 中国のインドネシア高速鉄道計画が難航している
- 世界中の計画に遅れが出ており、「一帯一路構想」に支障も
- 質の悪いインフラを排除する対中包囲網ができつつある
中国が2015年7月に、インドネシアから受注に成功した「ジャワ島高速鉄道計画」。翌16年1月に行った起工式から1年が経つ今も、建設のめどがたたず、19年の開業に間に合うか黄色信号が灯っている。時事通信がこのほど報じた。
記事によると、高速鉄道は、首都ジャカルタとバンドン(約140キロ)を45分で結ぶ計画。中国は当初、事業への債務保証が要らないことでインドネシア側と合意したが、受注後に、保証がなければ資金を出さないと態度を一変。それに加えて、土地収用が終わらなければ資金提供もしないという条件も提示するなどしたため、建設工事が難航している。
さらにソーシャルメディアには、「大量の中国人労働者が違法に流入している」という噂も流れ始め、中国に対する市民感情が悪化しているという。
中国の物流計画が次々頓挫
中国が、鉄道などのインフラを世界に輸出する背景には、自国を中心とした経済圏、いわゆる「一帯一路」を確立する狙いがある。発展途上国の鉄道計画を破格の条件で相次いで受注してきたが、中国側の突然の契約変更や、資金調達の遅れなどで、計画は思うように進んでいない。
例えば、アメリカのラスベガスとロサンゼルスを結ぶ高速鉄道計画。2015年9月に、米企業「エクスプレスウエスト」と中国国有会社「中国鉄道総公司」が合弁会社を立ち上げ、建設を進める予定だったが、16年6月に合弁の解消が発表された。
またスリランカでは、今年1月8日、地元市民らが、「中国による植民地化につながる」との懸念から、中国資本による港湾の建設などに反対する抗議活動を行い、警察と衝突。英BBCによると、21人が負傷し、52人が逮捕された事件まで起きている。
質の悪いインフラを排除する国際合意
中国のインフラ計画が頓挫する中、昨年開かれた20カ国・地域(G20)の首脳宣言では、環境性能が高いなどの「質の高いインフラ投資」推進の原則が盛り込まれた。これは、名指しこそしていないが、世界を混乱させている中国を念頭に置いたものだ。
宣言以降、日本は、品質の良さで中国との差別化を図ろうとしている。石井啓一国土交通相は、12月29日に訪問したインドネシアで「質の高いインフラで協力したい」と発言。岸田文雄外相も、1月8日に訪問したチェコで「日本の質の高いインフラシステムはチェコに必要だと考える」と述べていることからも、中国を意識しているのは明らかだ。
G20の国際合意により、質の悪い中国のインフラを排除する包囲網が築かれた。自国の国益の優先を掲げるトランプ政権の発足により、この流れは強まると見られる。日本は、一帯一路構想を崩すために、独自の世界物流計画を持たなければなるまい。
(山本慧)
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