香港の民主主義、繁栄の行方を占う立法会選挙の行方に注目が集まる。

今週の日曜、9月4日に、香港で立法会(議会)選挙が行われる。

この選挙には、昨年の秋に香港の中心部でデモを行い、今回の立法会選挙や来年3月に行われる香港のトップを選ぶ行政長官選挙で、民主的な選挙が行われるよう訴えた「雨傘革命」に参加した若者たちが、複数の政党をつくって出馬している。

今回は、定数70議席に対し、立候補の認められなかった独立派の6人を除く約300人が立候補している。香港の政治勢力は、大きく分けて次のように分類できる。

  • 中国共産党の方針に同調する「親中派」
  • 香港の民主化を求める中核的な存在である「民主派」
  • 香港を「本土」とみなし、共産党の考えには従わないと主張する「本土派」
  • 香港の独立を求める「独立派」

新党「香港衆志(デモシスト)」は、今春、雨傘革命の中心的存在だった学生組織「学民思潮」の元リーダーだった黄之鋒さんや周庭さん、「大学生連合会」のメンバーらが立ち上げた。彼らは、一国二制度の期限とされる2047年以降の香港の将来を決める住民投票を、10年以内に行い、独立も選択肢の一つに掲げる。

他にも、雨傘革命の参加者らが立ち上げた新党「青年新政」は、「本土派」と呼ばれている。彼らは、雨傘革命の際に、旧来の民主派議員たちが、デモを解散させようと実力行使に出た警察当局から、参加者を守る行動を起こさなかったことに不信感を抱いているという(27日付産経新聞)。

「中国政府は、個人の選択の自由を排除している」

筆者は今年4月、香港に5日間滞在し、香港の若者や複数の識者、政治運動家の人々に話を聞いた。

雨傘革命で、「学民の女神」と呼ばれ、現在「デモシスト」で活動する周庭さんの「香港の未来は私たちの活動にかかっている」という言葉や、シンクタンクのリーダー、サイモン・リー氏の、中国共産党政府が権力を集中させ、人々が欲する個人の選択の自由を排除している、という主張に感銘を受けた。

いま、香港の人々が求めているのは、まさに「自由の革命」であることを感じた。

「所得や補助金を増やせ」は、大きな政府をつくる危険性も

しかし、特に若者の意見を聞く中で、民主化を求めるプロセスに、ある種の危うさを感じたのも事実だ。

例えば、彼らは、香港の土地の値段が高く、所得が高くなければ住むことができないと主張したり、大学生への補助金が一部の学生にしか出ないため、大学に行ける若者が少ない、といった主張を展開する。

確かに、筆者が訪問した香港の銅鑼湾(どらわん)地区は、アメリカ・ニューヨークや東京・銀座などを抜いて、世界一地価が高いと言われる場所だ。

気をつけなければいけないのは、若さゆえに、「民主化」の主張とともに、「政府には何を言ってもいい」という思いが強くなり、実は、その主張が、「大きな政府」をつくり出す危険性を含んでいるということだ。

「所得や補助金を増やせ」という主張は、結局、政府の役割を大きくしてしまう。

民主化を求める勢力による団結を望む

いま、香港で自由を求める勢力は、1989年の天安門事件を知る、知識も経験も豊富な世代の「民主派」と、雨傘革命で中心的な役割を果たした若者中心の「本土派」「独立派」が、うまく団結していない。

共産党政府という大きな「敵」を動かすためにも、香港の若者には、香港の未来のために、いま何が必要か、何のための運動であるかを考え、ぜひ民主化を求める勢力で団結してもらいたい。(祐)

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