自民党のCM映像がよくできている。

まず、雇用だの、国民総所得だの、アベノミクスの“成果"を表す数字が次々に現れる。

そして、「この道を。力強く、前へ。」と念を押される。

単純なつくりだが、数字の説得力も手伝って、さも「アベノミクスしかない」ように感じてしまう。

しかし注意して欲しい。この数字は、日本経済のほんの一部分しか切り取っていない。「この道」を信じる前に、アベノミクスが叩き出した、悪い数字を見ていきたい。

(1)実質賃金は18%悪化

まずは、お給料だ。

安倍政権は、「賃上げ2%達成 3年連続」と訴える。しかし、この数年間、物価だって上がっている。大事なのは、「物価の変化を差し引いたとき、そのお給料でどれだけ買い物ができるか」だ。

それを表す数字である「実質賃金」(2010年を100とした指数)を見てみると、

アベノミクス前 99.2(2012年平均値)

アベノミクス後 80.9(2016年5月速報値)

18%も減っている。

給料の額面は上がっても、「豊かさ」は失われている。

(2)個人消費は14%悪化

次に、日々のお買い物だ。2人以上の世帯がひと月に使うお金は、

アベノミクス前 約32万8千円(2012年12月)

アベノミクス後 約28万1千円(2016年5月速報)

14%も減っている。

消費税を8%に上げた破壊力だ。日本経済の6割を占める消費を減らしておきながら、「アベノミクスが成功した」と言えるのだろうか。

(3)生活保護受給世帯 6万人増加

貧しい人たちの生活事情はどうだろうか。

生活保護受給世帯を見ると、

アベノミクス前 157万823世帯(2012年12月)

アベノミクス後 163万2271世帯(2016年4月)

6万世帯も増えている。

(4)国家予算は過去最大

アベノミクスが一定の好況感を演出したのは事実だ。しかしその背景には、政府が派手に税金をバラまいた事実がある。

一般会計の歳出層額は、

アベノミクス前 90兆3339億円(2012年度)

アベノミクス後 96兆7218億円(2016年度)

2016年度は、過去最大の額を叩き出している。

安倍政権は、「子供手当て」などのバラまきを批判された民主党よりも、派手にお金を使っている。

もちろん、インフラなどへの財政出動は将来に利益を生む投資だが、「低所得者への給付金」などは正真正銘のバラまきだ。

(5)お金の量は3倍

アベノミクスが好況感を演出した一番の理由は、大胆な金融緩和だろう。

日銀が発行するお金の量(マネタリーベース)は、

アベノミクス前 131兆9837億円(2012年12月)

アベノミクス後 392兆7119億円(2016年6月)

3倍にも膨れ上がっている。

お金は、日銀の「借金」に例えられることもある。民主党時代は、経済規模に対してお金が足りない「貧血」状態だった。そのため、金融緩和は建設的な「借金」だった。

しかしこのまま行けば、来年には「借金」の量が日本の経済規模500兆円を越える。アベノミクスの好況感の裏で、日銀はとんでもない爆弾を抱えさせられている。

(6)貿易赤字も過去最大

金融緩和の"成果"と自民党が訴えるのは、円安だ。輸出が増え、トヨタなどの大企業が大きな利益を出したニュースは、日本経済復活の幻想を膨らませた。

しかし、円が安くなれば、それだけ海外からものを買うコストがかさむ。

輸出から輸入を引いた「貿易赤字」を見てみると、

12兆8160億円(2014年)

という、過去最大の数字を叩き出している。

多くの資源を輸入する中小企業など、誰かが泣きを見ているわけだ。

結局、富を生んでいない

以上の数字を俯瞰すると、アベノミクスの正体が見えてくる。

アベノミクスが始まってから、給料が減り、消費が減り、生活保護が増える……。消費税の影響で、経済の根幹部分は、軒並みダメだ。

一方、株価上昇や大企業の収益アップなど、一見景気のいいニュースも見られる。

しかしその裏には、「過去最大の税金の使いこみ」「日銀の借金が3倍」「過去最大の貿易赤字」という犠牲がある。

つまりアベノミクスは、「本質的には『富』を生み出していないが、政府が通貨や財政を操作して、景気のいい数字をつくり出している」に過ぎない。

果たしてこれが、「この道を。力強く、前へ。」と言えるような経済政策なのだろうか。

(馬場光太郎)

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参院選特設ページ 「消去法でアベノミクス!? 真に問うべき7つの争点」

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