2016年4月号記事

編集長コラム Monthly Column

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なぜ宗教が国防強化を主張するのか

――アジアの平和と自由を守る外交・防衛プラン


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国防強化だけならまだしも、核装備まで主張する宗教は、世界でも珍しい。

幸福の科学の大川隆法総裁は2016年2月、講演会「世界を導く力」で、日本は正当防衛として核装備をしないといけないところまできているという危機感を訴えた。

なぜ宗教が核装備を含む、さまざまな国防強化を主張しなければならないのだろうか。

日本やアジアの平和が日に日に脅かされ、手の打ちようがないところまできていることが背景にはある。

北朝鮮は4回の核実験で日本やアメリカを脅す核ミサイルを手にしたとされる。

中国はこの2月、南シナ海にレーダーや対空ミサイル、爆撃機を配備し、世界のタンカーの半分が通る海域を軍事力で脅かしている。

中国が目指しているのは、共産中国建国100周年の 2049年にはアメリカをしのぐ超大国になる ことだとされる。その象徴が中国の海軍戦略だ。

中国は2050年に米国を超える戦略

1982年の中国海軍の長期海洋戦略や、専門家の分析によれば、中国は次のような長期プランを一つひとつ実行している。

(1)2020年ごろに台湾を併合したうえで、2021年の中国共産党創立100年目を迎える。中国は「核で攻撃するぞ」と脅して、米空母などによる介入を阻止。台湾を交渉のテーブルに着かせて、併合を認めさせようとしている。

そうすれば、日本列島、台湾、フィリピンを結ぶ「第一列島線」の西側の東シナ海、南シナ海は米軍が干渉できなくなる。

(2)2030~40年、空母を6隻運用し、小笠原諸島、硫黄島、グアムを結ぶ「第二列島線」の西側の海域については米軍が干渉できないようにする。中東までのシーレーン(海上交通路)も支配する。

(3)2050年ごろには、アメリカ軍をハワイまで後退させ、太平洋の西半分の支配権を握る。この時期には日本が中国の領土や自治区になる計画を持っている。

北朝鮮のほうは、核ミサイルを持って「金王朝」の体制維持を図ろうとしているという見方が一般的ではある。一方で、「核ミサイルでアメリカを脅して介入できないようにし、北朝鮮主導の半島統一の機会をうかがっている」と分析する専門家もいる。その際、実際に核兵器を使う可能性も指摘されている。

中東ではシリアや「イスラム国」で内戦と欧米による攻撃が続いているが、アジアでは 大国同士の大戦争や核戦争の危機が迫っているわけだ。

中国は何を目指しているのか?

(1)2020年ごろ

台湾を併合し、第一列島線内にアメリカ軍が干渉できないようにする。

(2)2040年ごろ

アメリカ軍が第二列島線に入れないようにする。中東までのシーレーンも支配する。

(3)2050年ごろ

太平洋の西半分を支配する。

「憲法9条信仰」に縛られる日本

これに対し 日本は、「憲法9条信仰」に縛られている。

これは、先の大戦では何百万人という犠牲者が出たので、今後それを避けるためには、とにかく戦争や国防について一切考えなければ平和がやって来るという「信仰」だ。自分の地上での命を生きながらえさせるためには、他国に侵略されても構わないという極端な思想だが、「平和主義」として日本国民の意識に浸透している。

憲法9条は占領時代にアメリカが「日本が再びアメリカの脅威にならないため」に押しつけたものだ。アメリカ政府は要は日本が二度と立ち向かって来ないように、武器をすべて取り上げる「刀狩り」を徹底的に行う対日初期方針をもって臨んだ。

それを具体的に実行したのが連合国軍総司令部(GHQ)のマッカーサー最高司令官で、そのメモにははっきりこう書かれていた。

「国の主権的権利としての戦争は、廃止する。

日本は、紛争を解決するための手段としての戦争、および自己の安全を保持するための手段としてさえも戦争を放棄する。

日本は、その防衛と保護を、いまや世界を動かしつつある崇高な理想に委ねる。

いかなる日本の陸海空軍も、決して認められず、またいかなる交戦権も、日本軍隊に対して決して与えられない」

この指令通りに日本は、国を守るという最も大切な主権を放棄させられた。少なくとも日本は主権を制限させられ、「半主権国家」となった。

その憲法9条に多くの日本人が「信仰」を立て、「国教」のように扱っている。

マッカーサーは早々と「戦争放棄」指令を撤回

しかし、そのマッカーサー本人はGHQの同僚に対して、こう語っていたという。

「どんなによい憲法でも、日本人の胸もとに銃剣を突きつけて受諾させた憲法は、銃剣がその場にとどまっている間だけしかもたないというのが私の確信だ」

「占領軍が撤退し、日本人の思い通りになる状況が生まれたとたん、彼らは押しつけられた諸観念から独立し、自己を主張したいという目的だけのためにも、無理強いされた憲法を捨て去ろうとするだろう。これほど確かなことはない」(江藤淳著『1946年憲法』より)

マッカーサーは、自身が日本から去るときが、日本国民として憲法9条を改正するタイミングだと考えていたことになる。

ただ、マッカーサーは自身が去る前の1950年6月、朝鮮戦争が起こると、9条を改正すべきだと考えるようになる。朝鮮戦争のさなかの1951年1月の年頭のメッセージで、こんな声明を出した。

「日本の憲法は国政の手段としての戦争を放棄している。この概念は、近代の世界が知るにいたった最高の理想ではないにしても、最高の理想の一つを代表している」

「しかしながら、仮に国際社会の無法状態が、平和を脅かし、人々の生命に支配を及ぼそうとし続けるならば、この理想があまりにも当然な自己保存の法則に道を譲らなければならないことは言うまでもない」

つまり、国家が生存を図ろうとするのは当然だという主張だ。マッカーサーは自ら出した「戦争放棄」「軍隊不保持」の指令を全面的に撤回したのだった。

それに先立って、アメリカ政府からは、憲法9条を改正するよう要請が行われている。朝鮮戦争が始まる直前、米国務省顧問のダレスは日本政府に再軍備を要請し、「憲法9条があって再軍備できないなら、改正したらいい」と述べた。

ところが、それを受けた吉田茂首相(当時)は、経済の立て直しのため再軍備の資金負担に耐えられないとして拒否。そのまま戦後70年が経ってしまった。

「9条信仰」の応援団となったソ連と中国

その後、憲法9条はソ連と中国の支援を受けた日本の左翼勢力が固く「信仰」してきた。

もともとは、日本共産党など左翼勢力は占領時代、「アメリカによる憲法の押しつけはよくない」として9条に大反対していた。

ところが、日本共産党も日本社会党も朝鮮戦争で米ソ冷戦構造が明確になると、ソ連の側に立って9条を擁護し、「再軍備反対」を訴えるようになった。後に明らかになるが、両党とも秘密裏にソ連から巨額の資金援助を受けており、いわば刑法の「外患罪」にあたることをしていたことになる。

象徴的なのは、戦後長く最大野党だった社会党が掲げた「非武装中立論」だろう。

1980年代、石橋政嗣書記長(当時)は著書『非武装中立論』を著し、「強盗に押し入られたとき(中略)抵抗は死を招く危険の方が強い」と書いた。

他国の軍隊に攻められたら、無抵抗で降伏したほうが平和を守れるという主張は、「奴隷の平和」と呼ぶべきものだろう。それを恥ずかしげもなく中心的な政策として掲げていたのは、ソ連の言い分をそのまま代弁することが日本社会党のアイデンティティーだったためだ。

「9条信仰」の熱心な応援団は、ソ連から共産党の支配する中国に代わった。

建国の父の毛沢東時代からアメリカを超える超大国を目指していたから、「国を守る主権を放棄した日本」ほどありがたい存在はない。

習近平政権でも、日本の憲法改正や日米安保の強化に反対し、歴史問題などで日本に揺さぶりをかけている。近年世論を動かしている安保法制や原発への反対運動には、ソ連時代以上に中国共産党の工作が働いていると考えるべきだろう。

このように日本国民の「9条信仰」は、アメリカ、ソ連、中国など周辺国それぞれの世界戦略の中でつくり上げられてきたものだ。

日本の平和主義が「奴隷の平和」を呼ぶ

太平洋とアジアを呑みこんでいく中国。無抵抗で降伏する「9条信仰」を守り続ける日本――。

その結果、日本で起こるのは、今の香港のように北京政府が出版関係者を次々と拘束し、「自由」を弾圧する未来だ。共産中国は神仏を信じない無神論・唯物論の国なので、言論の自由だけでなく、信教の自由も徹底的に弾圧され、人間の尊厳が失われていく。

実際、中国共産党には、2050年に日本を占領するプランがあるとされる。それが現実化すれば、あらゆる自由が死んだ「悪に屈服した平和」「奴隷の平和」がやって来る。このままでは「9条信仰」に基づく日本の平和主義は、国民がナチスの強制収容所に入れられるのと同じような事態を招くということだ。

加えて大川隆法・幸福の科学総裁は先述の法話「世界を導く力」で、北朝鮮が水爆を日本に対して使い、1000万人から3000万人の犠牲者が出る危険性について警告している。

ある日突然、かつての広島の人たちや長崎の人たちのように、ミサイルないし爆弾が落ちてきて、1000万人単位の人がこの日本から亡くなるということになったら、宗教としては大変なことです。供養しても間に合いません。数が多すぎます

原爆や水爆が日本に対して使われれば、「奴隷」どころの話ではない。

「善を推し進め、悪を押しとどめる」というのが仏教の基本精神だ。宗教として、大きな不幸を生む「悪」を見過ごすことはできないからこそ、核装備を含む国防強化を訴えているというわけだ。中国や北朝鮮にこれ以上「悪」を犯させてはならない。

「国を守る軍事力は善」

日本やアジアの人々が「奴隷」になっていく運命を転換するために、大川総裁は先の法話で、第一に日本人として思想・言論戦、第二に外交上の努力、第三に国防上の努力が大切だと説いた。

思想・言論戦としては、「国民が自由で幸福に生活している国を守る軍事力は善である」という啓蒙が必要だろう。「奴隷の平和」をもたらす中国や北朝鮮による侵略や支配は明確に悪だということになる。

軍事力や戦争をめぐる善悪については、歴史認識問題が深く関わってくる。

アメリカが占領期に日本から「国を守る主権」を奪ったのは、「日本は侵略戦争をした悪い国」と考えたためだ。しかし、実際には、欧米がアジア人を「奴隷」にした植民地支配を日本が打ち破ったのが大東亜戦争だった。

アメリカ大統領リンカンが1860年代に黒人奴隷を解放するために国を二分する内戦を戦ったのとまったく同じだと言っていいだろう。

そうした日本人の誇りを取り戻たいし、簡単には理解されないだろうが、アメリカに反省を促したいものだ。それが最終的に、日本の完全な主権の回復につながる。

アメリカ軍が中国に屈する可能性

2011年の東日本大震災で、米軍は大規模な救援作戦を展開。

日米同盟が強化された。写真は、米空母内。写真:AP/アフロ

二番目の外交努力について大川総裁は、「日米同盟の強化」を最優先に挙げた。世界最強の軍事大国と同盟を結ぶことは、どの国も本気で攻めてこれないことを意味するからだ。

問題は、アメリカが本気で戦うかどうかがあやしくなっていることだろう。

オバマ大統領は2013年に「アメリカは世界の警察官ではない」と宣言したが、その考え方が米軍の中に浸透してきている。アメリカ軍は海外に700カ所近くに軍事拠点を置き、「世界の警察官」としての態勢を維持してはいるものの、スピリットのほうが伴わなくなっているようなのだ。

例えば、その動きの一つとして、中国軍が開発した対艦弾道ミサイル(DF21=東風21号)に対して、アメリカ海軍が退こうとしている。

マッハ10で飛んでくる中国の対艦ミサイルが米空母や大型艦に命中する可能性が高まっているためだ。中国は台湾有事で米艦船に対して雨あられと降らせ、蜂の巣状態にする計画なので、それを防ぐのは簡単なことではない。

アメリカ海軍のシンクタンク幹部は日本の自衛隊OBに対し、「台湾などで中国と戦争になった場合、米空母はいったんグアムやハワイまで撤退する」と述べている。「まずは日本や台湾だけで1カ月ぐらいは持ちこたえてくれ。後から加勢する」という作戦なのだという。

しかも、1カ月後に米空母が再び来援したとしても、そこから無人機を飛ばす使い方しかしないそうだ。加えて、B-2戦略爆撃機を飛ばして超高空から中国の港湾施設を攻撃するなどして中国を経済封鎖し、白旗を上げさせる作戦計画だとされている。

要は、中国軍が攻撃してこれない遠くの安全地帯から攻める"腰が引けた"戦い方をするというわけだ。

中国軍との"直接対決"をできる限り避けるというスタンスなので、当然、尖閣諸島をめぐって日本と中国が軍事的に衝突した場合、米軍が日本を助けることはしないと考えておくべきだろう。

アメリカは台湾有事に介入できない?

米軍が「世界の警察官」でなくなろうとしているもう一つの動きは、中国の核ミサイルによる脅しにアメリカが屈してしまう可能性が高いということだ。

台湾有事は「沖縄有事」でもある。中国は台湾、沖縄、尖閣諸島などを「点」として見ているわけではなく、東シナ海や南シナ海などの「面」を軍事的に押さえることを狙っているからだ。そのため台湾有事で中国は日本に対し、「余計なことをするな。さもなくば核ミサイルを撃ちこむぞ」と脅すことになる。日米同盟は、日本が他国の核の脅威にさらされた場合は、アメリカが「核の傘」を提供して守るということになっているが、もう守ることはできないのではないかと言われている。

今の時点で中国軍はアメリカの主要都市を核で攻撃できる。アメリカ本土に届く核ミサイルは50基前後とされ、一発でも落ちれば犠牲者は数千万人規模になる。台湾や日本を守るために、アメリカが中国と核ミサイルを撃ち合うリスクを冒せるかというと、まずあり得ないだろう。アメリカが台湾有事などへの介入を思いとどまる事態を想定しておかなければならない。

日本の外交・防衛関係者でもあまり知られていない話だが、在日米軍は日本本土を防衛するためではなく、韓国や台湾、東南アジア各国を防衛するために存在している。日本を守るのは自衛隊であり、米軍ではないのだという。それを確認したアメリカ政府の内部方針が近年、さまざまな形で報道されている。

アメリカのこの方針は、ブッシュ政権で国務副長官を務めたリチャード・アーミテージ氏の言葉にも表れている。

「日本の自衛隊と在日米軍はいつも日本防衛だけに関わっているわけではありません。日米同盟体制は日本国内にある基地施設を使って、合衆国がアジア全域を守る能力を与えてくれているのです。だからこそ日米同盟は我々にとって極めて重要なのです」(文春新書『日米同盟vs.中国・北朝鮮』より)

米軍はアジア全域を守るのであって、必ずしも日本を守るのではないというのが日米同盟の基本であるならば、アメリカが台湾有事で空母を後退させたり、中国の核の脅しに屈したりしても何ら不思議はないということになる。

アジアの海を共同で守る体制をつくる

中国が2020年ごろに台湾を併合し、第一列島線から米軍を追い出そうと計画している。それに対してアメリカがどう動くか分からないならば、日本や台湾など 第一列島線上の国々が連帯して中国の野望を跳ね返すしかない。

日本は、台湾やフィリピン、ベトナムなどと利害が一致している。どの国も南シナ海から中東にいたるシーレーンを自由に航行できることが生存と繁栄の基盤になっている。中国が第一列島線の内側を支配したなら、各国とも自分の家の玄関口を自由に行き来することができなくなってしまう。中国の"お許し"をもらえる範囲で、石油やその他の物資の輸出入をするしかなくなる。つまり、中国の属国になるということだ。

日本は、これらの国々と実質的な同盟かそれに近い関係を結ぶしかないだろう。中東に輸入石油の90%を依存している日本の国家戦略として、シーレーンの安全を守ることは極めて優先順位が高い。まずは共同してアジアの海を守る体制をつくる必要がある。

特に台湾とは、実質的な日台同盟となる台湾関係法を日本として定めるべきだろう。そうすれば、台湾に日本製の潜水艦などの武器を売ることができ、中台間の軍事バランスを回復することができる。日本が台湾を国家承認するところまでいけば、緊密に協力する防衛態勢を堂々と築くことができる。

軍事的に周辺国を呑み込み、自由を奪っていく中国への対抗を考えたときに、民主主義国同士の同盟や連携が重要となる。フィリピン、インドネシア、タイ、オーストラリア、インド、スリランカなどをまとめるリーダーは、国力から見て日本しかないだろう。

中国包囲網という観点からすれば、インドのほか、軍事大国・核大国のロシアを味方側に引き入れておきたい。ロシアはウクライナ問題やシリア内戦でアメリカと対決色を強めているが、アメリカに「ロシアを中国と組ませてはならない」ことを理解させることは、日本の外交努力の中でかなり優先度が高いものだ。

台湾有事はこう展開する

大川総裁が述べた、三番目の防衛上の努力についてはどうなるだろうか。

それを考えるにあたっては、中国は台湾を軍事的に攻めてくる場合、具体的に何をどう仕掛けてくるかを見通しておく必要がある。

先にも述べたが、台湾有事と日本の南西諸島有事は同時に起こると想定しておかないといけない。米軍基地が復活したフィリピンも攻撃対象に含まれる可能性が高い。

時系列に見ると、台湾有事は以下の4段階で進んでいくとされている。

(1)機雷などで台湾の港を海上封鎖をしたうえ、ミサイルで威嚇する。台湾の主要な港の近くで軍事演習やミサイル発射訓練を行うとして、海上封鎖をより効果あるものとする。台湾に向かう各国の民間大型船舶を中国本土に寄港させ、検査を行うこともやるだろう。

(2)台湾のインフラにサイバー攻撃を行い、台湾国民の恐怖心をあおる。人民解放軍の特殊部隊による破壊工作を仕掛ける。秘密裏で限定的な作戦なので、アメリカ軍が直接的に軍事介入に踏み切ることはこの段階では難しいと見られる。

(3)台湾の軍事拠点を福建省などに配備された短距離弾道ミサイルで攻撃する。核弾頭搭載の弾道ミサイルDF-15(東風15号)による脅しは、台湾の指導層や軍の戦闘意欲をそぐには十分な効果がある。また、在日米軍、自衛隊基地をミサイル攻撃することもあり得る。旧満州に配備された弾道ミサイルは100基以上、巡航ミサイルは1000基以上で、大量のミサイルの雨が降ることになる。

(4)最終的に大規模な上陸作戦を敢行し、台湾を占領する。台湾軍の守備隊を破って上陸し、台湾の重要拠点を占拠する。ここまでくればアメリカ軍も介入せざるを得ないが、地上部隊を出すことはないと見られる。

中国軍は日本の南西諸島にも上陸し、主要な空港を占有する。その際には、大量の漁船に民兵や特殊部隊を乗せて押し寄せ、すぐには自衛隊が対処できない状態をつくるだろう。いくつかの空港を押さえられれば、太平洋側にまで中国の制空権と制海権を広げることができる。

日本の対抗策(1)海上封鎖 (2)サイバー防衛

中国は早い時期に台湾を屈服させることを狙っている。(1)の段階で台湾に降伏させることが理想だ。

逆に台湾や日本にしてみれば、中国の威嚇と攻撃に耐えつつ、東シナ海での航空優勢と海上優勢を確保し続けられるかどうか。つまり、できる限り、中国本土の沿岸部に近いところで中国軍を封じ込め、台湾や南西諸島にたどり着かないようにするのが基本だ。

では、具体的に台湾や日本はどう対抗すればいいだろうか。(1)の段階から対抗策を考えてみる。

(1)中国海軍の艦艇や潜水艦が大陸沿岸部の基地から出港できないように機雷封鎖したり、海自潜水艦で攻撃したりする。軍港だけではなく、主要な貿易港も封鎖し、石油資源などの"兵糧攻め"を行う。台湾に日本の潜水艦を売り、共同して対処する。

(2)サイバー戦で防衛も報復もできる態勢を整える。

日本の対抗策(3)中国のミサイル攻撃を抑止する

(3)中国にミサイルを撃たせないため、中国本土に届く中距離巡航ミサイル(射程2000~3000キロ)をアメリカから買い、海自艦艇・潜水艦に配備する。また、日本各地に分散配備し、中国が簡単に叩けないようにする。

北京や平壌の中枢部に撃てる態勢をとることで、中国にミサイル攻撃を思いとどまらせることができる。「台湾や日本をミサイル攻撃すれば、自分の執務室が狙い撃ちされる」と理解させることが大切だ。

巡航ミサイルは弾道ミサイルと違って低空を飛んでくるので、迎撃するのが難しい。また、弾道ミサイルに比べて安いコストで生産でき、メンテナンスも容易だという。日本独自での開発も急ぎたい。

アメリカの民間シンクタンク「プロジェクト2049研究所」は2011年、以下のように日本が中国に対抗して中距離ミサイルを持つべきだとする政策提言を発表している。

「中国は日本攻撃できる中距離ミサイルを配備して脅威を高めているが、日本側がもし中国のミサイル攻撃を受けた場合、同種のミサイルで即時に中国の要衝を攻撃できる能力を保持すれば、中国への効果的な抑止力になる」

朝鮮半島有事でも同様で、北朝鮮が日本に向けてミサイルを撃とうとしたら、これらの中距離巡航ミサイルが抑止力となる。

抑止力としての核装備

中国や北朝鮮が持つ核ミサイルについても抑止力が必要だ。

原子力潜水艦を持ち、核ミサイルを搭載し、小笠原諸島あたりの太平洋からいつでも報復できるようにする。米英仏露中の国連常任理事国は、最終報復兵器として核ミサイルを載せた原潜を運用しているが、それと同じレベルの抑止力を持つということだ。アメリカなどから核兵器をレンタルする方法もあるし、日本独自に核を持つパターンもある(日本の核装備の進め方については、前月号の本コラム「世界で最も核兵器に無防備な日本」参照。本誌Webで加筆版を掲載中)。

防空ミサイル態勢としては、レーザー兵器などを開発し、中国軍による雨あられのミサイル飽和攻撃に対する守りを固めるべきだろう。

また、21カ所ある沖縄の空港を航空自衛隊や米軍が使えるようにし、東シナ海の航空優勢を確保する。中国は南西諸島の各空港へのミサイル攻撃を仕掛けてくるので、全滅を避けるためだ。

日本の対抗策(4)南西諸島への「接近阻止」

(4)台湾や南西諸島に上陸させない。そのために陸上自衛隊の「12式地対艦ミサイル」(射程200キロ)を沖縄本島のほか宮古島、石垣島、与那国島などに配備し、中国海軍の艦艇を近づけないようにする。中国の対艦弾道ミサイルDF-21の日本版をつくり、中国艦艇の「接近阻止」を実現する。

さらにこの対艦ミサイルを台湾やフィリピン、ベトナム、インドネシア、シンガポール、タイなどにも売り、中国海軍を撃退できるようにする。

日本の幕末期には、欧米列強のアジア侵略に対して、東京湾や神戸、函館などに砲台を設置した。150年経って、中国の侵略を防ぐための「現代のお台場」が日本や台湾、東南アジアには必要になっている。

南西諸島の主要な島に陸自の警備部隊を増強し、空港やミサイル部隊を守る。加えて海兵隊機能を持つ陸自「西部方面普通科連隊」を中心にヘリ空母(ひゅうが型護衛艦)などで各島をパトロールする。

アジアの平和を守るためのプラン

(1) 中国沿岸部から中国海軍艦艇などが出れないように封鎖する。

(2) サイバー防衛を強化する。

(3) 中距離巡航ミサイルを持ち、中国や北朝鮮がミサイル(核も含む)を撃てないようにする。

(4) 南西諸島や台湾などに対艦ミサイルを並べ、中国海軍が近づけないようにする。

(5) インド洋にヘリ空母艦隊を送り、シーレーンを守る。

インド洋にヘリ空母を出す

海上自衛隊の「ヘリ空母」ひゅうが。米軍とともにシーレーンを守るパトロール活動に投入したい。提供:U.S. Navy/アフロ

台湾有事で中国が仕掛けてくる4段階に対して、日本としてどう防衛を固めるかについて述べた。さらに、シーレーンをアメリカ軍やインド軍と協力して守ることも付け加えたい。

中東から日本へ石油を運んでくるタンカーは、すべてインド洋を通ってくる。そこをアメリカ軍やインド海軍が警備しているわけだが、そこに日本も参加すべきだろう。

具体的には、ヘリ空母艦隊をインド洋に出すというものだ。ヘリ空母(空母型護衛艦)にイージス艦や対潜護衛艦、そうりゅう型潜水艦、対潜哨戒機などを組み合わせる。

大川総裁は法話「世界を導く力」で、こう指摘した。

「(自衛隊には) 空母型の護衛艦もできていますが、ヘリコプターしか今のところ飛ばないようになっています。『いずも』などは、戦艦大和に近い248メートルもある大きさの護衛艦で、ヘリコプター空母ですが、改造すれば垂直離発着機も載せられると言っています。そういう機能を持った(正式な)空母を造ったらいいと思います

アラビア海から南シナ海までを守るアメリカ軍は負担が重くなっており、それをサポートすることは、日米同盟をより一層強固なものとする。アジアの海の平和のために空母を持つということは十分あり得ることだ。

あるいは、日本が引退した米空母を買い、運用するという方法もある。かつて横須賀を母港とし、2009年に退役した空母キティホークを日本が買い、垂直離発着機(F35B)やオスプレイ、輸送ヘリなどを載せてインド洋を行き来すれば大きなプレゼンスになる。

半島有事への備え

さらに加えて、朝鮮半島有事となった場合、北朝鮮を体制崩壊させる道筋も想定しておかなければならない。アメリカが金正恩体制を倒すと決断したら、アメリカ軍は韓国軍と連携し、第七艦隊からの大規模な空爆と圧倒的な陸上戦力の投入を行う。狙いは北朝鮮の軍事拠点や政治拠点だ。

金正恩・第一書記は金剛山あたりの山中に逃げ込むと予想されるが、その場合、アメリカ軍が地中深くを攻撃できる特殊爆弾でピンポイント攻撃し、排除することになるだろう。

この間、北朝鮮は核ミサイルで日本を脅したり、実際に攻撃したりすると想定されるので、それを抑止するために、日本が先述の中距離巡航ミサイルを保有することがやはり不可欠だ。

日米韓の結束と、各国指導者の強い決断があれば、民主化した南北統一朝鮮を実現することができる。

100兆円規模の防衛投資

これだけの「防衛インフラ」を整えるには、莫大な資金が必要だが、大川総裁が提案しているように、超低金利で運用先がない時代だから、10年で100兆円ぐらいは国内外で集められるだろう。現在の日本の防衛費は5兆円弱だから、防衛費が3倍増になる。

また、大川総裁は防衛省が「防衛債」を発行し、独自に資金調達すればいいと提言している。その際、無利子・相続非課税とすることも一案だ。

アジアの平和を維持する目的だから、円建てで外債を発行し、日本国内からだけでなく、海外からも広く資金を集められるだろう。100兆円のうち3割ぐらいは外債になっても構わない。

同時に、台湾やフィリピン、ベトナム、インドネシア、シンガポール、タイ、オーストラリアなどに対して資金を貸し出し、日本製の艦艇や潜水艦、対艦ミサイルなどを買ってもらうことも重要になる。

アジア全体としての国防強化によって、景気浮揚の効果も大きくなるだろう。

憲法9条を改正し、主権を取り戻す

本来ならば一刻も早く憲法9条を改正し、「国を守る主権」を取り戻すべきだ。

日本の自衛隊は憲法9条の制約から、「自衛のための必要最低限度の実力」と位置づけられ、「軍隊」とは認められてこなかった。そのためたくさんの制約が自衛隊を縛り、有事対応に支障をきたしている。

1950年の朝鮮戦争以上の危機が起きようとしているわけだから、マッカーサーが当時語ったように、「無理強いされた憲法を捨て去る」べきだろう。今こそ日本が、マッカーサーによる「戦争放棄」「軍隊不保持」の指令をなきものとするタイミングだ。

今こそ、日本は主権の一部を放棄した「半主権国家」を脱し、自分たちの国の運命を自分たちで決められるようにしなければならない。

また、大川総裁は、「いざとなったら、中国や北朝鮮を憲法9条の適用から外すべきだ」と提案している。つまり、憲法前文には「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」とあるため、中国や北朝鮮が「平和を愛する諸国民」であるとは言えない場合、9条の適用を両国に対しては拒否するというものだ。

南シナ海や東シナ海で領土拡張欲をむき出しにし、核ミサイルの照準を日本に向ける中国、国民に恐怖支配を敷きながら核ミサイルを造り続ける北朝鮮は、もはや「平和を愛する国」ではない。

朝鮮戦争時のマッカーサーのような判断がいざというときに即座にできるのが、この「9条の適用除外」。重要な選択肢としていつでも行使できるようにしておくべきだろう。

一方で、本稿で示したさまざまな防衛策は、中国がおいそれと日本や台湾に攻めて来られないようにするためのものだ。だから、憲法9条を改正していなくても、「国を守るためならここまで必要だ」という国家指導者の肚と気概によって備えを進めるべきものだろう。現時点の日本政府の憲法解釈であっても、核装備も敵地攻撃能力を持つことも認めている。まさに国家指導者の決断次第だ。

「自由の下の平和」を実現する

今のままでは日本だけでなくアジアの国々も、中国や北朝鮮による「奴隷の平和」に支配されてしまう。

先にも述べたように、日本は先の大戦で、アジアを欧米による奴隷的支配から解放した。有色人種は文字通り「奴隷」として扱われ、アジアの人々は「国を守る主権」どころか、「国を自分たちで治める主権」すら持たなかった。それを大東亜戦争を通じて欧米から取り戻したのだった。そして戦後、アジアだけではなく、アフリカも含めてたくさんの国々が独立を果たした。

その際、日本も多くの犠牲者を出したわけだが、当時の日本人は、大義のためには命を賭して戦う武士道精神を貫いたと言っていいだろう。

日本が武士道精神を取り戻し、サムライ国家になることで、「奴隷」化するアジアの国々の運命を転換させていくことができる。同時に、「自由」を抑圧・弾圧されている中国と北朝鮮の人々をも救うことができる。

大川総裁は、英語説法を集めた著書『Power to the Future』で、こう述べている。

「一方、悪い国があって、その国の政府や当局が、人々を抑圧したり、人々が抗議することを許さなかったり、『言論の自由』『出版の自由』『信教の自由』『良心の自由』を持つこと許さなかったりするのであれば、そのような国は、神や仏から祝福されていません」

人間の尊厳が守られていない中国13億人、北朝鮮2000万人の人たちに、神仏の子としての人生を生きられるようにすることが、本稿で示した核装備を含む国防強化の最終的な目的だ。

2020年代には、思想信条によって人々が不幸な目に遭わない中国と朝鮮半島の新たな体制を実現したいものである。

まさに宗教こそが、「自由の下の平和」の実現を目指して国防強化を訴え、行動していかなければならないと言えるのではないだろうか。

(綾織次郎)

「台湾が日本にラブコールを送るワケ」に続く