安倍晋三首相は、衆議院環太平洋連携協定(TPP)特別委員会で、2017年4月に予定する消費税の引き上げについて、「今までも申し上げているように、リーマン・ショック級、あるいは大震災級の事態にならない限り、消費税は予定通り引き上げていく、この基本的な考え方に変わりはない」と述べ、従来の答弁を繰り返した。熊本地震が大震災級に当たるのか否かについては言及しなかった。

このニュースを見たネットユーザーの間では、「熊本地震は大震災じゃないの?」「安倍さん、意味不明です」「血も涙もない」など、批判的な声が相次いでいる。今回の熊本地震は、東日本大震災や阪神・淡路大震災と同じ震度7の揺れ。過去の大震災に比べて、地震の規模や、罹災者が少ないとはいえ、経済に与える影響は無視できない。

今の経済状況で増税は困難

震災の発生とは別に、安倍政権が、増税延期の条件として挙げる「リーマン・ショック級」。実は、現在の経済指標を見ると、増税を延期せざるを得ないほどの「不況」に突入している。

京都大大学院教授の藤井聡氏は、東日本大震災と8%の消費増税を引き合いに出し、実質GDPに与えた影響を比較。震災が発生した前後である2010年と12年の実質GDPを比べると、6.6兆円増えた。一方で、増税の前後となる13年と15年では、2.1兆円しか増えていないという。つまり、GDPに与えたマイナス面では、増税が震災を上回っているのだ。

産経新聞(18日付電子版)は、GDPの6割を占める「個人消費」(消費総合指数)に注目。最も消費にダメージを与えていたのは、リーマン・ショックや東日本大震災ではなく、増税であったと報じている。また、8%への消費増税は、1997年の5%への増税の時よりも、悪影響が長引いているという。

2017年はマイナス成長の予測も

天災による経済への悪影響は一時的だが、増税の場合は、後に響く傾向にある。それを示すように、国際通貨基金(IMF)は、増税が予定される2017年の日本のGDP成長率が、前年比マイナス0.1%になると予測している。

経済指標を見ると、増税が経済にマイナスであったことは明らか。熊本地震を受けて、経済対策に手をこまねいていては、さらなる悪化も懸念される。熊本地震は、国民に負担を押しつける安倍政権への「天の警告」として受け止めるべきだろう。

(山本慧)

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