2月28日に渋谷で開催された「愛してるから、黙ってられない。 We Love 日本」デモ。

2016年5月号記事

日本、台湾、香港の「黙ってられない」若者たち

アジアの自由と平和は私たちが守る

今夏の参院選から、18歳以上の若者が投票できるようになる。しかし例年、若年層の投票率は低く、「若者は政治に関心がない」という声も聞こえてくる。

本当にそうだろうか。

アジアの若者は、自由と平和を守るために声をあげている。

2月末に東京・渋谷で若者1200人が参加した「愛してるから、黙ってられない。We Love日本」デモが行われた。

デモでは、「日本とアジアの自由と平和」「国防強化」「自虐史観の払拭」などが訴えられた。背景には、北朝鮮の核実験や中国の軍事拡張、日韓両政府が誤った歴史認識に基づいて慰安婦問題で合意したことなどがある。

近年は日本だけでなく、台湾や香港でも、学生を中心とした政治運動が盛り上がっている。日本・台湾・香港に共通するのは、軍拡する中国への危機意識だ。勇気を出して立ち上がった、アジアの学生の声を紹介したい。

Japan 日本を愛する心を取り戻したい

今こそ、自由と平和を守るために若者が立ち上がる時!

谷内 潤

(筑波大学4年・22歳)

同じ志を持つ者同士が一体となって、シュプレヒコールを上げるのは、とても清々しかったです。若者は次の時代の担い手です。 これから、さまざまな分野で大きな責任と使命を果たしていくために、神々から愛される日本を守る活動をしていくべきだと思います。日本に真の自由を取り戻す考え方を、今後も誠心誠意、訴えていきたいと思います。

大野美月

(武蔵野大学3年・20歳)

実際にデモに参加して、自分が政治を動かす大きな動きの中にいることを感じました。

日本の外交や国防、経済の問題を見ていると、今の政治家にこのまま日本を任せて良いのか疑問に思います。これからは、若者も政治を変えるメイン・アクターになり、政府が若者の声を無視できないぐらい、先陣を切って行動していきたいです!


Taiwan 台湾の民主主義を守り抜きたい

葉品妤 イェ・ピンユー

(致理科技大学2年・20歳)

ひまわり学生運動の後に発足した学生による政治団体「臺左維新」の中心メンバー。

台湾と中国との間に「サービス貿易協定」が結ばれそうになった時、「このままでは台湾が中国の一部になる」という危機感を感じ、反対デモに参加しました。今、多くの台湾人は、自分達のことを中国人ではなく「台湾人」だと思っています。今ある民主主義を守りたいんです。

その証拠に、台湾では親中よりも親日の人の方が圧倒的に多いです。自由がない独裁国家の中国よりも、日本に近づいて行きたいと思っています。ひまわり学生運動の後、多くの学生組織が創設されました。私もデモや街頭演説を通して、多くの人に「一緒に声を上げよう!」と訴えていきたいです。

台湾「ひまわり学生運動」(2014年3月18日~)

台湾が中国への経済的な依存を強めることに抗議し、300人を超える大学生たちが立法院(国会)を占拠。立法院外でも、学生を支持する市民が数万人集まり、社会運動に発展した。


Hong Kong 香港の未来は香港の人が創れるようにしたい

周庭 アグネス・チョウ

雨傘革命のきっかけをつくった学生団体「学民思潮」の元リーダー。デモでは意見を発表するスポークスマンを務めた。

私たちは、自分で国のトップを選ぶための普通選挙権を求めて抗議活動をしましたが、香港と中国の政府は、私たちの声を無視し、政治的な“道具"である警察を使ってデモを抑え込みました。中国政府はこれまで一度も、香港人の基本的な人権を尊重したことはありません。

若者たちは、真の平等と正義が尊重される政治を強く求めています。一国二制度は2047年に終わりを迎えてしまうので、香港の未来についての議論は、早く始めなければいけないんです。香港の人が、自分たちで香港の未来を決められるようにすることが、今の私たちの願いです。

香港「雨傘革命」(2014年9月26日~)中国政府の息がかかった候補者しか香港の行政トップになれない選挙制度に反対する抗議デモ。若者が中心となり、総参加数は約120万人。警察と衝突し、多くの逮捕者や負傷者を出しながらも、国民の権利を訴えた。


政治参加の原点は「愛」

中国では、国民の権利や自由が奪われている。その流れは、台湾や香港にも及びつつある。

中国は、台湾と香港も「一つの中国」でなければならないと主張するが、台湾と香港は、現在の自由や平和、民主主義を奪われたくない。だからこそ学生たちが意を決して立ち上がった。

「学生運動」には、日本の一部の団体のように、特定の組織や政権を批判することを目的としたような攻撃的な活動もある。

しかし、本来の政治的活動とは、自分の国や国民を愛するがゆえに行うものだ。

中国政府の人権弾圧や、急速な軍事拡張を見ると、台湾や香港の学生運動には身の危険が伴うだろう。それでも学生たちは、自らの利害を超えて行動する。

それはなぜか。

自分の国や国民を「愛してるから、黙ってられない」のだ。

そんな若者が増え、日本・台湾・香港で連携を強化できれば、言論による中国包囲網を築き、国際社会に影響力を及ぼすことができるだろう。それは、アジアの自由と平和を守り、幸福な未来の実現へとつながる。