ボーイング787(motive56 / Shutterstock.com)

三菱重工業と川崎重工業、富士重工業の3社が、米ボーイングに次世代小型旅客機の共同開発を提案したことを、このほど日経新聞が報じた。

記事によれば、共同開発を提案したのは、2017年に商用飛行するボーイングの小型機「737MAX」の後継機と見られている。3社は、出資比率に応じて開発・量産費用を負担し、収益をボーイングと分配する新たな契約方式を提案した。収益変動のリスクも負う。

ボーイングの最新旅客機「787」は、日本メーカーが機体の35%を分担製造している。ただ、開発した胴体部分などを量産し、契約で決められた価格で納入する、という供給者としての立場だった。

今回の提案で、約40年続くこの下請け的関係からの脱皮を目指す。

ボーイング側が提案に応じるかは現時点で未定だが、これが実現すれば、世界の航空機市場での日本の存在感が高まると期待される。

日本の航空産業の悲しい歴史

戦後、日本はGHQに航空機生産禁止令を出され、航空機の生産、修理、教育研究のほか航空機による運送等の一切の活動が禁止された。世界ではこの時期、ジェット機の開発など航空技術が目覚ましく進化した。日本は、世界に大きく出遅れたのである。

GHQの占領が終わり航空機生産禁止は解除されたが、国内の航空機メーカーは激減。生き残った企業が、米軍機の修理、米航空機メーカーの戦闘機や練習機のライセンス生産を行うようになった。この間、国内航空機産業が成長しなかったのは、高額な開発費と初期投資費用回収期間の長さなどから、経営リスクが高いと見られ、資金調達が十分できなかったことが一因だとされている。

成長する航空機産業と日本の現状

現在、世界の航空機産業は約25兆円の市場規模だ。このうち、日本のシェアは1兆円。約4%しかない。世界シェア23%を有する自動車産業の40分の1である。

今後20年で航空旅客数は2.5倍に増加すると予測されている。特にアジア・太平洋域は、年率6.5%と、最も大きな伸びが見込まれ、航空機市場の成長をけん引するとみられている(2014年文部科学省「戦略的次世代航空機研究開発ビジョン」より)。

現在政府は、航空機産業を飛躍的に発展させようとしている。国際共同開発での主導権獲得は、そのためのステップの一つだ。成長分野の航空機産業で、自動車産業と同じく世界的シェアを獲得するという目標達成のため、まず単なるサプライヤーではなく航空機メーカーとしての地位を得ることが必要だ。日本のメーカーが共同開発という形で世界に食い込んでいく今の流れを押していくべきだろう。

民間航空機の市場は、主に大中型旅客機(230 席~)、小型旅客機(100~229 席)、リージョナルジェット旅客機(20 席~99 席)に類別される。大中型旅客機の市場は、米国と欧州による寡占状態だ。それ以下の市場では各国の競争が激化している。

日本は、はじめは米国の主力市場と重ならない小型機やリージョナルジェット機の分野で共同開発を進めるべきだろう。だがアジア・太平洋域で一番需要が高いのは中小型機だとみられている。需要の高いアジア各国と共同開発することも視野に入れ、成長分野である航空産業を活性化してほしい。

(HS政経塾 表奈就子)

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