国産初のジェット旅客機「MRJ (Mitsubishi Rejonal Jet)」が11日、初飛行に成功した。1973年に製造を終了したプロペラ機「YS-11」以来、半世紀ぶりとなる国産旅客機の実用化に一歩近づいた。この後、アメリカと共同で約2500時間に及ぶ飛行試験が行われる。
MRJは、空気抵抗を極力抑えた機体や最新鋭エンジンを採用し、従来の同型ジェット機より燃費性能が20%以上高い「次世代機」と話題だ。すでにANAやJAL、米大手リージョナルエアラインなどから計407機の受注を獲得している。
GHQに航空産業を禁じられた日本
日本の航空産業は第2次大戦当時、「ゼロ戦」など、年間2万5千機の軍用機などを生産する巨大産業だった。しかし敗戦後、アメリカのGHQが航空機関連事業を全面的に禁止し、急速に衰退した。戦後の日本はアメリカの軍事力に依存してきた半面、安全保障において重要な航空産業や宇宙産業はかなりの後れを取っている。
これまで日本は、航空機の完成品は作れなかったものの、部品や素材の供給という形で製造に関わっていた。もし自動車のように完成品をつくれるようになれば、日本各地で航空機の部品を作る産業も花開く。航空産業も基幹産業になる可能性を秘めている。
今回のMRJが開発に7年かかったように、航空関連事業の開発には莫大な予算と時間が必要となるため、官民一体のさらなる協力が不可欠だ。
日本で「空飛ぶオフィス」は実現するか
日本ではまだ一般的ではないが、欧米などでは、ビジネスジェットは一部の富裕層に留まらず、緊急出張が必要なビジネスマンの重要な移動手段になりつつある。日本でも、時間と席数が決まっている航空会社の飛行機だけでなく、柔軟な時間設定が可能なビジネスジェットの活用や、海外からのビジネスジェットの受け入れを進めていく必要がある。
しかし日本では、空港の利用規制や申請などの手続きが多く、必要な法律も整備されていないのが現状だ。多様化するニーズに合わせて日本でもプライベートジェットやビジネスジェットを使いやすくするためには、規制の緩和や法律の整備も不可欠だ。
航空・宇宙産業などの高付加価値産業は、本来、技術力や安全性への信頼が高い日本の得意分野だ。今回のMRJの初飛行成功を皮切りとして、航空分野でも日本の技術力を生かして国富を創り、日本と世界の発展に寄与することを期待したい。(真)
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