欧州航空機メーカー「エアバス」は13日、今後20年の間にアジア太平洋市場で約2万機の新規需要が発生し、金額に直すと約1兆8000億円にのぼるという予測を発表した。13日付日経(電子版)が報じている。開催中のアジア最大のシンガポール航空ショーでは、40数カ国から1000社ほどが出展。前回の開催では、3兆円規模の商談が成立しており、航空機の市場規模の大きさがうかがわれる。

経済産業省によると、世界の航空機市場は今後20年の間に3万機の需要を見込み、400兆円規模に成長するという。日本についても、米ボーイング社の大型旅客機「ボーイング787」の部品の35%を日本メーカーが供給している一方、三菱はMRJという国産航空機を生産中である。

戦後、GHQによって航空機産業が解体されて以降、日本の航空機メーカーは長らく、部品納入の地位に甘んじ、航空自衛隊や国内航空会社の機体の大半が外国製となっている。世界で数百兆円規模のビジネスチャンスがあるにも関わらず、ボーイングやエアバスのような完成機メーカーが誕生しないのは、政府による支援が不十分であるからだ。

航空機産業は自動車産業に比べて、品質や技術、資本などの面で参入しづらい産業の一つと言われ、開発期間やコストの回収も長期にわたるため、民間投資が集まりづらい。また、戦闘機などの軍需用生産を手掛けるという安全保障上の理由から、非常に政治的な側面をも持つ特異な産業でもある。MRJの開発予算1500億円のうち、経済産業省が500億円の支援を出していることからも分かるように、事業化には官民一体の協力が不可欠だ。

だが、MRJのような例は一部にすぎず、日本は税金や法律の面で他国より出遅れている感が否めない。アメリカでは、航空機製造設備の法的耐用年数の短縮や、外国企業に対して、政府機関による融資や債務保証などの公的支援がある。日本では、最近になってようやく愛知県に航空機産業の特区が作られたが、さらなる支援の拡充が必要だ。

他にも、支援を強化すべき理由がある。航空産業での優秀な技術の蓄積と人材の成長は、そのまま防衛力に寄与する。航空自衛隊は次期主力戦闘機として、アメリカから「F-35」の導入を決めているが、戦闘機同士の戦闘能力で「世界最強」とも言われる、日本が望んでいた「F-22」の機体導入は叶わなかった。いくら日米関係が強固であっても、アメリカは技術の流出や自衛隊の戦力が強くなりすぎることを恐れ、国益を守るために「F-22」を売らなかった。外国頼みの日本は、国産機開発を急ぐ必要性を痛感させられたとも言える。

日本は自動車や家電などで長らく高い国際競争力を誇っていたが、新たな産業の創出にも取り組まなければならない。日本の航空機メーカーは実績もあるが、十分でないのは政府の支援だ。次世代の基幹産業を育てるとともに、防衛力強化のためにも、「日本版ボーイング」の育成を目指し、航空機戦争に名乗りを上げるべきだ。(慧)

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