空の「交通革命」の幕が開けようとしている。

カナダの工業デザイナーであるチャールズ・ボンバルディア氏はこのほど、超音速旅客機「アンティポード」のコンセプトを発表した。この旅客機は乗客10人まで収容可能で、マッハ24で飛行する。東京―ニューヨーク間であればわずか22分だ。

アンティポード(antipode=正反対の位置にあるもの)という旅客機名からは、作り手側の思いが感じられる。ボンバルディア氏は米フォーブスのインタビューの中で、「地球の裏側に、できる限り早く行ける航空機のコンセプトを作りたかった」と語っている。

ボンバルディア氏は、カナダの重工大手ボンバルディア社の創業者の孫にあたる。技術に賭けた祖父の血を着実に受け継いでいるようだ。

大気中の酸素を燃やし稼働する

アンティポードには大きく2つの特徴がある。ロケットブースターとスクラムジェットエンジンだ。

ロケットブースターはアンティポードの両翼に搭載される予定。アンティポードを飛行に適した、高度1万2千メートルまで打ち上げる。

その後、スクラムジェットエンジンに切り替え、目的地に向かう。このエンジンは、大気中の含まれる酸素を燃やすことで稼働する。従来のように、重い酸素タンクを積む予定はないという。

ただ、乗り越えなければいけない壁も多い。

超音速で移動するため、乗員には強い重力がかかり、体にとって大きな負担となる。そのため、重力を軽減させる必要がある。また、高速移動に伴い発生する、ソニックブーム(衝撃波)にどう対処するかという問題も残っている。

朝は東京、昼はニューヨーク

実用化に向けて、課題は多いものの、アンティポードが完成すれば、ビジネスのあり方が変わるだろう。

例えば、朝は東京で仕事をし、昼からニューヨークの支社で打ち合わせをし、夜には日本に戻り、家族と過ごす、ということも可能になる。アンティポードは、ビジネスマンにとって貴重な「時間」という資産を生み出す。

超音速旅客機の開発は日本でも取り組まれている。JAXAはマッハ5程度で飛ぶ「静かな超音速旅客機」の開発を2025年まで実現させる予定だ。

イギリスとフランスが共同開発したコンコルドが2003年に引退して以来、その後を継ぐ超音速旅客機は登場していない。アンティポードにかかる期待も自然に大きくなるだろう。航空宇宙分野にはまだまだ発展の余地がある。

(冨野勝寛)

【関連書籍】

幸福の科学出版 『ロケット博士・糸川英夫の独創的「未来科学発想法」』 大川隆法著

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