台北市の様子。

中国国営中央テレビが台湾海峡の対岸にある中国軍が大規模な軍事演習を行ったと報じたことについて、台湾の国防部(国防省に相当)は、中国軍が実施している冬季訓練の実態と合わないとして「ニセの報道だ」と判断した。22日付産経新聞が報じた。

中国が「ニセの報道」を行う背景には、16日の台湾総統選で当選した民進党の蔡英文氏に圧力をかける狙いがあるとされている。蔡氏は中国と台湾の「92年合意」に言及していないからだ。

92年合意とは、中国と台湾が「一つの中国」を認め、その解釈は双方それぞれが表明する、とした合意のこと。現総統である馬英九氏と中国の習近平国家主席は、この合意のもと「お互いに考えの違いはあるが、中国は一つ」ということで一致していた。蔡氏は、この合意に関して自身の立場を明言していない。

しかし、歴史的にも政治的にも、現在の中国(中華人民共和国)と台湾が一つだったことはない。22日付ニューズウィーク日本版のコラムで文化人類学者の楊海英氏は、人種的にも、台湾先住民は南洋のオーストロネシア語族に属しており、「南下した中華民族が祖国に編入した島」ではない、と語っている。

中国は強硬な立場を強める一方、中国軍関係者は、台湾が「独立」に舵を切れば中国は武力統一のシナリオを用意していると語っている(21日付読売新聞)。現在建造中の空母で、台湾を東西の海域から挟み打ちにできるという。

台湾は、「一つの中国」を認めるか。それとも、武力によって中国に統一されるか。

軍事演習がウソだったとしても、この選択を迫ったのが今回のニセ報道の目的だろう。台湾を自国領にしたいのが中国政府の思惑である。もしこれが現実となれば、中国は南シナ海や尖閣諸島の領有を、今よりもっと強硬に主張することは明らかだ。

尖閣沖では、中国は昨年12月から武装した船を航行させるようになり、今年に入ってすでに3回の領海侵犯も行っている(16日付八重山日報)。

日本では、蔡政権の成立によって対日関係が向上するという期待感が高まっている。同時に求められるのは、台湾がある程度自立した立場で「92年合意」について表明できるよう後押しすることだ。それには、TPP加盟が一つのカギだ。現在、台湾の対中経済依存は非常に高い。TPP加盟によって台湾が他の民主主義国と連携できる環境をつくり、中国への依存を減らせるよう、日本も働きかけていくべきだろう。

(HS政経塾 表奈就子)

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