韓国・漢城(現ソウル)に置かれた統監府。

韓国・文化財庁がこのほど、2016年3月までに国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界記憶遺産に登録申請する記録物の2件を発表した。

1つ目は、20世紀初頭、対日債務の返済を目指した寄付運動である「国債報償運動」の記録物であり、2つ目は、朝鮮王室が約500年もの間使っていた御宝と御冊だ。

国債報償運動とは、1900年代初頭の大韓帝国が、近代化のために日本から1300万円を借りた債務問題がきっかけで起きたもの。債務を通じて、"経済的な隷属"になることを恐れた金光済(キム・グァンジェ)が、1907年に国債を返還する運動を提唱。この様子が新聞に報じられたことで、各地で寄付に協力する人が現われ、一時は16万4200円の寄付が集まった。

国債報償運動は「抗日の象徴」なのか

現代の韓国では、この運動を「抗日の象徴」としており、抗日運動家の安重根(あん・じゅうこん)も、国債報償期成会・関西支部長として活動したとしている。運動の震源地であった大邱(テグ)には、「国債報償運動記念公園」までつくられたほどだ。

しかし、当時の日本の公文書や韓国の新聞などで、発起者の中で寄付金を横領した事実が判明したため、運動は立ち消えになったことが分かっている。むしろ、国債報償運動は「抗日への裏切りの歴史」であり、韓国の恥とも取れるが、現代の韓国ではこの事実は無視されている。この部分は、恐らく、記憶遺産の申請資料でも触れないだろう。

「慰安婦」を外したのは日本への配慮、ではない

一方、日本のマスコミは、韓国が主張する日韓併合下で起きた"強制動員"資料が申請対象から外されたことに注目しており、「韓国側が日本との関係改善に秋波を送っている」と報じる向きがある。

だが韓国では、先述の国債報償運動が抗日の象徴として位置づけられており、本質的には「反日歴史観」であることに変わりはない。また、今回発表された2件の記録物以外にも、韓国は、中国や台湾などの6つの国・地域と連帯して、「慰安婦」資料を記憶遺産に提出する動きを見せている。複数の国や地域で連携する場合は、一国につき2件という枠組みに含まれないためだ。

韓国が、日本に配慮したとは到底言えず、来年も歴史戦を続けるつもりだろう。現在、具体的にどのような資料が申請されるかは分かっていないが、日本政府は、これらの資料への反論の準備も整えていく必要がある。(山本慧)

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