米共和党の大統領候補の一人であるベン・カーソン氏が、10日の討論会で「中国やロシアがシリア内戦に介入している」といった趣旨の発言をした。
その後、識者や対抗候補者に、「中国がシリアに介入している証拠はない」と、外交知識の欠如を批判された。
この批判に対してカーソン氏は、「中国軍が直接軍を派遣している証拠はないが、中国製の兵器がシリアに流入している」と反論している。
シリア政府軍の兵器は誰が出している?
では、実際はどうなのだろうか。
シリア内戦が始まったのは2011年だが、ストックホルム国際平和研究所が2013年に公開した資料によると、2006年から2010年の間、シリア政府に兵器を輸出した国トップ5は、ロシア(48%)、イラン(21%)、べラルーシ(20%)、北朝鮮(9%)、中国(2%)だ。中国の割合はそれほど高いとは言えない。
しかし、人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチが2014年に報じたところによると、シリア政権が国民を虐殺するために使っていた塩素ガスの容器に、中国最大の兵器製造企業である北方工業公司(Norinco)のマークが描かれていたという。
アサド政権は、塩素ガスが入った容器に爆薬をくくりつけて、「塩素爆弾」として使っている。普段、工業・産業に使う塩素を兵器として使用することは、「化学兵器禁止条約」に違反する。
イスラエルのシンクタンク「International Institute for Counter-Terrorism」によると、塩素ガスが入った容器1万個がイラン経由でシリアに輸出されたという。Norincoは、「シリアに塩素ガスを輸出した事実はない」と、関わりを否定したが、イランが塩素ガスを中国から買い、シリアに輸出している可能性については言及しなかった。
紛争地域への兵器の流入を管理すべき
アサド政権による化学兵器の使用は、国際社会から広く非難された。その後、関係国の合意の下、シリアが所持する化学兵器を撤廃することが決まった。しかし、撤廃の対象となったのはサリンやVXガス(猛毒の神経ガス)などといったもので、塩素ガスは合意の内に含まれなかったのだ。
もちろん、欧米やロシアも中東各国に大量の兵器を売りつけている。しかし、化学兵器や生物兵器の拡散は、特に留意すべきものだ。中国が利益目的のために、シリア国民の虐殺に使用されている化学兵器を売りつけているとしたら、それは批判に値するものだろう。
化学兵器など、「大量破壊兵器」と目されるものは、間違っても内乱などが起きている地域に送り込んではならない。中国だけでなく、国際社会は、紛争地域に流入する兵器をしっかりと管理する必要がある。(中)
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2014年4月号 アメリカが見殺しにするシリア国民 - The Liberty Opinion 2