パトロールするフランスの兵士(kavalenkau / Shutterstock.com)
フランス・パリで13日(現地時間)、同時多発テロが起きた。
今のところ、150人を超える犠牲者が出たとの報道もあり、死傷者は今後も増え続けると思われる。
襲撃された場所は、コンサート会場、サッカースタジアム、レストラン、ショッピングセンターなど、分かっているだけでも6カ所だ。SNSには、パリ市街における銃撃戦とも見える映像も掲載されている。
犠牲になった方々の冥福を祈りたい。
「イスラム国」が犯行声明
フランソワ・オランド仏大統領は、全国に非常事態宣言を発令。パリに戒厳令を敷き、国の国境を閉じた。1500人のフランス軍兵士もパリ市街に出動している。
14日になって過激派組織「イスラム国」が「(組織に対する)空爆を続ける限り、平和な生活は送れないだろう」と犯行を認める声明を出した。フランスがシリアで行っている「イスラム国」空爆に対する報復がテロの動機だと推察される。
フランスは今年の1月にも、「シャルリー・エブド事件」で、イスラムテロに遭っており、同国にとっては苦い1年となった。
混沌とする正しさの基準
一般市民を標的にしたテロは許されるものではない。しかし、フランスがシリアで「イスラム国」を空爆することは果たして絶対的な正義と言えるのだろうか。空爆は誤爆も多く、軍事施設以外の場所が破壊されることもある。「イスラム国」側から見れば、これは一般市民への攻撃と同じことだ。
もちろん、「意図的に一般市民を狙う」ことと、「戦争・戦闘の過程で一般市民が巻き添えに遭う」ことには違いがあるだろう。だが、一般市民の巻き添えがやむを得ないことだとするには、「『イスラム国』に対する空爆がそもそも正しいのか」「『イスラム国』にどの程度の正義と正当性があるのか」という議論が欠かせない。
物事の善悪を見極めるためには、その思想や行動が極端なところまで広がったらどうなるかを考えてみれば良い。
この場合、「『イスラム国』が世界に広がったらどうなるか」ということを考えてみることだ。「イスラム国」が広がれば、多くの不幸が生まれるであろうことは想像できる。そのため、その広がりを推しとどめようとする空爆には、一定の正当性があるだろう。
しかし、そもそも「イスラム国」が誕生した理由は、スンニ派イスラム教徒がシリアやイラクで迫害を受けていたからだ。迫害されていた彼らも生き延びるために戦っており、何らかの住み分けや領土的安定を保障する必要はある。
欧米やロシアによる「イスラム国」空爆もどこかで幕を引き、中東地域の民族対立・宗派対立の調停に入る必要性が出てくるだろう。(中)
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