コロナ禍に便乗し対外侵出する中国に打ち克つには? 国防費倍増で侵略を止めよ 【HSU河田成治氏寄稿】

コロナ禍に便乗し対外侵出する中国に打ち克つには? 国防費倍増で侵略を止めよ 【HSU河田成治氏寄稿】

5月20日、2期目の就任式に臨んだ蔡英文総統。提供:Taiwan Presidential Office/AFP/アフロ

 

《本記事のポイント》

  • 中国はコロナをばらまいて、尖閣、台湾、南シナ海奪取に動いている
  • 力の空白と、内政での失策から、覇権拡大に動く
  • 防衛産業に優先的な投資をすれば景気回復になる

 

 

元航空自衛官

河田 成治

プロフィール

(かわだ・せいじ)1967年、岐阜県生まれ。防衛大学校を卒業後、航空自衛隊にパイロットとして従事。現在は、ハッピー・サイエンス・ユニバーシティ(HSU)の未来創造学部で、安全保障や国際政治学を教えている。

中国はコロナで苦しむ世界を後目に、対外侵出を行っている。見逃せないのが中国軍の日本や台湾への軍事的圧力だ。

 

尖閣では、中国海警局の船舶は毎日のように接続水域への侵入を繰り返しており、今年1~4月の接続水域内での確認隻数は毎月100隻程度、領海内へは月8隻程度が確認されている。さらに5月8日には4隻の中国海警船が尖閣沖の日本の領海内で日本漁船を追尾する事件も起きた。

 

 

台湾の侵攻は間近

特に警戒すべきは、台湾に対して軍事的圧力を高めていることだ。

 

中国軍の爆撃機など複数が2月10日、台湾海峡のほぼ真ん中に位置する中間線を越えて台湾側に侵入した。

 

台湾海峡は、最も狭い場所でわずか約130kmしかないが、パイロットの感覚からすれば、中間線を越えれば、台湾は目と鼻の先。中間線から台湾本土まで戦闘機ならわずか5分程度で到達する。

 

したがって、中間線を越える行為は戦争に発展しかねない重大な挑発行為に当たるとして、今までは中間線を越えることはなかった。その一線を初めて越えたのが2019年であり、今年に入って既に3回も起きている。

 

3月16日には、複数の中国軍戦闘機などが台湾海峡上空から台湾本島へ接近し、異例の夜間機動訓練を実施した。

 

あわせて、海上では金門島沖合をパトロール中の台湾沿岸警備隊の小型警備艇に対して10隻を超す中国高速艇が襲撃した。石やビンを投げ込むとともに、高速で体当たりする事件となった。

 

通常、戦争は深夜の警戒態勢が緩む時刻に始まることが多く、このような夜間の海空の同時行動は、台湾侵攻が間近に迫っていることを伺わせるものである。

 

こうした中国の行動に対し、アメリカは警戒感を強めている。米議会の諮問機関「米中経済安全保障調査委員会」(USCC)は、5月12日、中国が新型コロナウィルスの感染拡大に乗じて台湾へ軍事・外交面で圧力を強めていると、発表した報告書で非難した。

 

 

南シナ海でも侵出が進む

また南シナ海では4月18日、海南省三沙市の行政区として、新たに西沙区、南沙区を設立すると発表。ウッディー島とファイアリークロス島にそれぞれの区人民政府を置くという。

 

そもそも満潮時には、海面下に沈む岩礁をどれだけ埋め立てて人工島を造成しようとも、国際法上は領土でもないし、その周りは領海ですらない。

 

南沙諸島で埋め立てた岩礁は、すべてがこれに該当し、行政区を置くとは噴飯ものであるが、着実に南シナ海の"聖域化"が進んでいることは事実である。

 

加えて5月12日には、中国軍が8月に、台湾が実効支配する南シナ海北部の東沙諸島を奪取することを想定した、大がかりな上陸演習を計画していることが判明した。

 

東沙諸島にある東沙島には滑走路および多くの建造物があり、台湾軍などが常時駐留する重要拠点になっている。

 

東沙島と尖閣への圧力は、台湾を南北から挟み込む軍事的作戦の一環とも想定できる。

 

 

コロナ禍の「力の空白」から生まれた中国の侵出

中国の軍事的圧力は危険なレベルに達している。

 

その背景には、コロナによる米軍の軍事パワーの空白がある。コロナ感染が米海軍の空母などの戦闘艦におよび、4隻の空母などが動けなくなった隙を突いてきた。

 

中国は2013年にも、これに類する行為に出ている。オバマ元大統領が「アメリカは世界の警察官ではない」と宣言した直後、南沙諸島の埋め立てを急速に進めた。我々は当時の悪夢を忘れるわけにはいかない。

 

中国に対抗する東アジアの軍事パワーの低下は、地域紛争の危険性を増すだけなのである。

 

 

中国の侵出の背景にある国内事情

また別の背景に、中国の国内事情があるだろう。習近平国家主席は、台湾で中国の息がかかる国民党政権の成立に失敗。中国の構想する一国二制度は実現されず、国内での面子を潰された。

 

またコロナや景気の悪化に有効な手立てが打てずにいることなど、内政に対する失点が積み重なる。対外的侵出で国民の目を逸らしたいとの思惑が強く働いていることだろう。

 

裏を返せば、台湾の独立などを確固としたものにすれば、習近平氏の評価を低下させ、ひいては習体制を崩壊させる力として働くのだ。

 

 

台湾防衛に入るアメリカ

このような中、3月26日にアメリカによって制定されたのが、「台湾同盟国国際保護強化イニシアチブ法」(TAIPEI Act)である。

 

同法は、貿易・経済関係の強化、台湾の外交関係の強化支援、国際機関への参加促進を謳い、台湾の地位向上をバックアップする内容となっている。

 

法律成立とともに、アメリカの国務省や国連代表部等は、台湾の独立状態を支援するための様々な発信を行ってきた。

 

例えば5月1日には、国連代表部が以下のようにツイート。

 

「国連はすべての声に奉仕し、多様な意見や視点を歓迎し、人間の自由を促進するために設立された。台湾が国連の敷地内に足を踏み入れることを禁止することは、誇り高き台湾人だけでなく、国連の原則をも侮辱するものである」

 

ちなみに日本語で同法は、「台北法」と訳されることが多いが、これでは中国の一省のような印象を与えてしまう。むしろ「台湾国際保護法」とする方がふさわしい訳語であろう。

 

 

日本の自衛隊の弱さが中国の侵出を招いている

日本も臆することなく、アメリカと同等の発信をすべきであるのは言うまでもない。

 

同時に防衛努力として、自衛隊の能力を格段に向上させ、中国による侵略戦争を阻止するべきだ。これは抑止力の強化の観点から重要である。

 

先ごろ、アメリカの戦略予算評価センター(CSBA)のトシ・ヨシハラ上級研究員は「太陽に逆らう龍-中国は日本の海軍力をどう見ているか-」(原題Dragon Against the Sun: Chinese Views of Japanese Seapower) と題する報告書を発表。

 

報告書は、東アジアで最も強力であった日本の海上自衛隊が、「失われた30年」で、中国海軍に大きく水をあけられたとする。そして自衛隊の能力を大幅に上げなければ、取り返しのつかないことになると警告した。

 

ヨシハラ氏は、中国海軍が日本より強力になったとの過信から、攻撃的な性格に転じていると考察する。

 

中国の対外的な侵出は、アメリカの軍事力のみならず、日本の自衛隊の力の相対的低下にも大きく左右されていることが説得的に述べられている。東シナ海や台湾、南シナ海の中国の行動は、日本の弱さが一つの誘因となっているのである。

 

ヨシハラ氏は、今後も日本が国力や防衛力を衰退させていくと、アメリカは同盟国・日本に対する魅力を失いかねないと憂慮する。

 

 

日本にいま必要なリアリズム

この局面で日本に必要なのは、中国の侵略戦争を抑止し、平和を構築するためのリアリズム(現実主義)だ。

 

中国は全人代で、前年度比6.6%増の軍事費を計上。中国の対外侵出を止め、アジアの海を守るには、日本はただちに防衛費を最低でも2倍の10兆円まで引き上げるべきだ。国防債を大量に発行してもいいだろう。

 

これは日本の景気回復にも役立つ。高度で複雑な装備品を扱う防衛産業の裾野は広大であり、防衛産業への投資は、多くの民間企業を潤すことになる。

 

また防衛に関する最先端の技術開発に潤沢な資金を投入すれば、中国を抑止する能力が劇的に向上する可能性がある。日本はサイバー・宇宙・ミサイル防衛のためのレールガンやレーザー、量子通信など、一刻も早く開発しなければならない技術が多い。

 

加えて、最先端の軍事技術はスピンオフさせることで、民生品の開発に大いに役立つ。製造業などの日本企業に力強い競争力が生まれ、日本経済にプラスの効果を発揮し、コロナ不況を脱する力となろう。

 

さらに日本の安全保障環境を改善すれば、海外からの投資を呼び込みやすくなる。安全保障環境が守られなければ海外の投資家は、安心して投資できないからだ。

 

防衛費を1.2%に上げるかどうかくらいで揉めている場合ではない。

 

日本は外交面でも防衛面でも、重大な岐路に立っていると認識し、大胆な決断をすべき時である。

 

【関連書籍】

『愛は憎しみを超えて』

『愛は憎しみを超えて』

大川隆法著 幸福の科学出版

 

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