中国の習近平国家主席(右)は、資金力でインドのモディ首相を懐柔しようとしている。提供:PIB/AFP/アフロ

2019年10月号記事

現地ルポ 第3弾

中国に狙われるインド

日印で「一帯一路」を止める

安い日用品に、5Gネットワーク─。

中国の影響力がじわじわとインドに忍び寄っている。

インドを訪れ、日本とともに対中包囲網を築く方法を考えた。

(編集部 片岡眞有子)

インドが中国に取り込まれるか、日米を始めとする民主主義陣営に与するか─。

これによって、国際社会の未来は大きく左右される。

中国が進める「一帯一路」は、中国からヨーロッパまで陸と海を横断するシルクロードをつくる巨大構想。この中間地点にあるインドが反中姿勢を明確にすれば、一帯一路を分断でき、中国の野望を止められる。

だが今、中国はインドを一気呵成に取り込もうとしている。

大人気の中国パクリ企業

「インドで最も成功している日本企業と言えばミニソーだよ」

デリーでコンサルタント会社を経営するインド人は、笑顔でそう語った。

「無印良品、ユニクロ、ダイソーを足して3で割ったような店」。そう評される雑貨チェーン「MINISO名創優品(メイソウ)」が、インドで人気を博している。しかし、その実態は中国企業だ。公式ホームページでは、日本語の文章に中国簡体字が混ざる。

同社はすでに世界で3600店舗以上(内、日本3店舗)展開しており、2017年にはインドのニューデリーに出店した。

今年5月に同店を訪れると、店内は老若男女のインド人でにぎわっていた(上写真)。

店のいたるところに「Japanese esigner Brand」と書かれ、商品陳列やロゴはまさに無印良品やユニクロ、ダイソーそのもの。あまりにも堂々としたパクりぶりだが、現地のインド人には「日本ブランド」として愛され、本家を凌ぐ高評価さえ受けている。

スマホ市場7割を占める中国

インド市場を席巻する中国企業は、これにとどまらない。

アップルのアイフォーンにそっくりなスマートフォンを売り出す中国企業「小米科技」も、大ヒットしている。14年にインド進出後、スマホ市場で先行するサムスンを猛追し、わずか3年でトップシェアを占めるまでになった。アイフォーンと変わらない性能で、価格は半分以下だという。

次いでシェア第2位に位置するのは、同じく中国企業の「智慧海派科技」。この他にも数多くの中国企業がインドに進出し、現地スマホ市場の実に7割近くを中国企業が独占している。

インドの大手シンクタンク「センター・フォー・ポリシー・リサーチ」で安全保障を専門とするブラーマ・チェラニー氏は、本誌の取材にこう懸念を示した。

「シャオミなど中国企業のスマートフォンは、その安さゆえにインドで非常に人気です。こうした安価な中国商品がインド市場を侵食した結果、中国はインドとの貿易においておよそ600億ドル(約6兆円)もの黒字を出しています。これは、インドの国防予算を上回る金額です。

インドに輸出される中国製品の大半が模倣品か不良品であり、こうした中国のダンピングによってインドの中小零細企業は駆逐されつつあります。インド市場から中国製品を締め出すことが急務です」

無印良品、ユニクロ、ダイソーを足して3で割ったような店

MINISO名創優品 [メイソウ]

中国を中心に世界80カ国以上に展開する雑貨チェーン。同社の公式サイトによると、中国人起業家・葉国富氏と日本人デザイナー・三宅順也氏によって東京で設立されたという。扱う商品やブランドの打ち出し方もさることながら、ブランドロゴがユニクロや無印良品と酷似しており、日本企業のパクリとして批判されている。

アップルを丸パクリだが、性能の高さと低価格で勝負

小米科技 [シャオミ]

中国の総合家電メーカー。2010年に中国国内で創業し、翌年に最初のスマートフォンを発表。製品がアップルのアイフォーンにそっくりなことから、「中国のアップル」と呼ばれることも。しかし、パクリ製品でありながら性能が高く、その割に価格が安いことから、中国国内のみならず、世界各国で大ヒット。欧州にも売り込みをかけている。

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次ページからのポイント

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