PROPOSAL

2019年3月号記事

第77回

幸福実現党 党首

釈量子の志士奮迅


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幸福実現党党首

釈量子

(しゃく・りょうこ)1969年、東京都生まれ。國學院大學文学部史学科卒。大手企業勤務を経て、(宗)幸福の科学に入局。本誌編集部、常務理事などを歴任。2013年7月から幸福実現党党首。

釈量子のブログはこちらでご覧になれます。

https://shaku-ryoko.net/

地域興しの逆転打

公共事業に「企業家精神」を

「子供のころは賑わっていた駅が、今や無人駅ですよ」

以前訪問した広島県で、過疎集落の再生に取り組む男性が寂しげにつぶやいていました。

地方はどこも、商店街や繁華街の人通りが減り、やっていけなくなった企業は看板を降ろしていきます。県や市町村は「なんとかしよう」と手を打ちますが、なにぶんお役所仕事です。産業づくりは空振りに終わり、「人が来る」と思った観光施設には閑古鳥が鳴いています。

やむを得ず、既存の業界を生きながらえさせるために補助金を撒きますが、そのうち自分たちも財政赤字で首が回らなくなる。知恵なし、金なし、打つ手なし。焦りが諦めに変わりつつあります。

稼ぐ公共事業"に期待

こうした状況を変えるため、「行政が、知恵も金もある民間企業に公共事業を任せ、民間企業も勝機・商機があれば手をあげる」という手法が注目されています。文字通り、公共(パブリック)と民間(プライベート)が連携(パートナーシップ)する「PPP(公民連携)」と呼ばれる手法です。

そう聞くと「第三セクター(以下、三セク)」(*)という言葉を連想する人もいるかもしれません。しかし三セクは「民間が事業に成功しても失敗しても、一定のお金が支払われる」など、お役所仕事とほとんど変わらない中途半端なものでした。ニーズのない「ハコモノ」が数多く生まれ、現在、三セクの4割が赤字です。

「民間にやらせてもだめだ」という声も起きましたが、逆に「リスクがない代わりに成功した旨みもないので、肝心な『民間の強み=知恵』を引き出せない」という反省に立って、「もっと大胆に任せよう」というのがPPPです。

この手法が効果てきめん。例えば、大阪市の第三セクターとして始まった「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」は当初、充分な魅力が生み出せずに「ハコモノ」と批判されていました。しかし、経営主体が完全に民間に移行してからは「逆走するジェットコースター」や「ハリー・ポッター」エリアなどの企画がヒット。大阪経済をけん引する観光資源になっています。

「客寄せ」のみならず、インフラ分野においてもこの手法は有望です。

山口県美称市の刑務所では、民間企業にその運用を任せており、近年、セコムが「ドローンに巡回監視をさせる」という知恵を出し、実験を行いました。警備員の負担を大きく減らすと期待されています。

効率的な運用で浮いたお金を、新たな事業に投資したり、固定資産税の減税につなげたりすることで、さらに地域は潤います。公民連携は、「お役所仕事」による悪循環を逆回転させる可能性を秘めているのです。

(*)国または地方公共団体と民間企業との共同出資によって設立された事業体。

公民連携は江戸時代から!?

「公共の仕事を、思い切って民間に任せる」というと目新しいようですが、実は日本の歴史における地方創生の定石です。

地方再建のプロとして世界中で尊敬されているのが、二宮尊徳です。尊徳は小田原藩に財政再建を頼まれた際、引き受ける条件として「地域への補助金をやめること」を提示しました。

これを今風に言えば、「地方創生請負事業」を委託されながらも、お上のお金に頼らず、あくまで民間企業として自分で採算を取ろうとしたとも言えます。

「金がないから知恵が出る。知恵があるから金が生きる」

尊徳はそのことをよく知っていたのでしょう。

同じく江戸時代に行われた庄内海岸の植林事業も「民の力」を象徴するものです。飛砂によって家が埋まり、農作物が壊滅する様子を見て、豪商・本間光丘が立ち上がります。私財を投げ打って、1800メートルもの防砂林をつくったのです。しかしこの事業は、木が苗のうちに砂と風で枯れるなど困難を極めるもの。商人としてずば抜けた見識やマネジメント力があればこそ、なし得た偉業です。

「自らの手で金をつくろう。考え抜いた知恵でそれを使おう。そして地域を潤そう」

この企業家精神こそ、地方創生の原点です。そしてこの精神を行政の仕事に組み込む仕組みとして、PPPという手法は大いに検討されるべきです。

仕組みだけではなく、前述のような"経済的英雄"に光を当ててNHK「大河ドラマ」にするなど、感動や使命感を人々に持ってもらうことも必要でしょう。

今、公共に求められるのが企業家精神であり、企業家に期待されるのが公共心です。幸福実現党は、補助金に頼らない真の地方創生を訴えてまいります。

尊徳は、収入に応じて出費をする「分度」という哲学を提唱した。民間の採算感覚が地方創生の鍵だ。写真提供:ピクスタ