TPP参加で中国の機嫌を伺う台湾 “母国”はむしろ日本だ
2014.01.10
台湾の馬英九総統が、環太平洋経済連携協定(TPP)への参加を本格的に検討し始めたと、8日付日経新聞電子版が報じた。馬総統は2012年、2期目の就任式でTPPについて「今後8年以内で参加準備を終えたい」としていたが、この計画を前倒しする。7月末までにTPPに参加した場合の問題点を整理し、参加表明の時期などの見通しを立てる予定だ。
台湾にとって、TPP参加には、現在落ち込んでいる輸出を増やすというメリットがあるが、これまでは中国が「アメリカ主導の中国包囲網」としてTPPを警戒していたため、中国に遠慮して参加の意思を明確にしていなかった。ここにきて台湾が前向きになったのは、中国がTPPに関心を示し始めたことが背景にある。最近、李克強首相を中心に中国指導部の一部からTPP加盟に対する前向きな発言が増えている。
馬総裁は2008年の就任以来、経済を軸に中国との結びつきを強める政策を取ってきた。台湾と中国の間で複数の直行便を開設し、観光客を誘致。また、中国への投資制限を解除し、相互に直接投資ができるようにした。その結果、台湾経済の中国への依存度は高まっているが、このままでは、台湾が経済的に中国に飲み込まれるのは時間の問題だ。
中国は中台関係の改善も踏まえ、台湾に政治対話の秋波を送っており、政治的にも台湾を手中に収めようとしている。一党独裁体制の中国に飲み込まれれば、台湾は自由や民主主義を失うことになる。中国をまるで「宗主国」であるかのように見て、顔色を伺う親中路線は改める必要がある。
そもそも、「中華人民共和国」の支配が台湾に及んだことは一度もなく、台湾を自国の一部とする中国の主張は正統性が薄い。また台湾にとっても、経済発展を遂げ、近代化する礎になったのは、日本統治時代のインフラ投資や教育であり、中国に恩はないのだ。台湾に“母国"があるとすれば、それは中国というよりむしろ日本である。台湾は中国よりも、自由や民主主義という価値観をともにする日本との結びつきを大事にすべきだ。
だが、日本側の親中姿勢にも問題はある。日本は、日中国交正常化のために台湾を見捨て、1970年代に外交関係を断ってしまった。その後は経済を中心に結びつきを強める日中関係の影で、日台関係は注目されてこなかった。2011年の東日本大震災の際にも、台湾は地震発生後すぐに救助隊の派遣を申し出たが、日本が入国を認めたのは2日後で、それも中国の救援隊が日本に到着した後だった。
台湾は親日的な国だが、こうした日本の姿勢が台湾の期待を裏切ってきたことも事実だ。日本と台湾は、日本統治時代の功績に正当な評価を与え、アジアの繁栄を築くために力を合わせていくべきである。(晴)
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