トルコの反政府デモ拡大 イスラム教に寛容さ求める市民

2013.06.08

トルコでの反政府デモが6日で、発生から1週間が経った。激化したデモは77都市に広がって参加者は延べ100万人に膨らみ、負傷者4000人、逮捕者3300人、死者3人となっている。7日付各紙が報じた。

イスタンブール中心部の再開発に反対する小規模な抗議活動をきっかけとする今回のデモは、イスラム色を強める強権的なエルドアン首相に反感を抱く人々によって起こされ、首相退陣を求める大規模なデモへと発展してトルコ全土に広がっている。

事の発端はイスタンブールのゲジ公園の再開発に反対する座り込み抗議活動だった。この活動は5月27日に数十人で始まったが、28日、警官隊が彼らに催涙ガスを噴射して立ち退きを迫り、その写真がロイター通信によって配信されたことで多くの市民の怒りを買い、デモが拡大した。

6月4日には、アルンチ副首相がデモ代表者と話し合い、警察の過剰対応について謝罪したため、デモは鎮静化するかに思われた。しかし、エルドアン首相が外遊先のチュニジアで6日、「(再開発計画を)撤回しない」と宣言。首相が帰国する7日に合わせて、大規模な抗議活動が呼びかけられている。

強気なエルドアン首相の自信の源は、2003年の就任以来のトルコの経済成長率の高さだ。インフラの整備や自由経済政策などを打ち出し、トルコのGDPは10年で3倍になった。選挙の度に支持率を高める首相は、2011年の選挙で得票率49.8%を獲得している。

一方で、イスラム教徒のエルドアン首相は高い支持率を背景に、政教分離であるトルコに自身の宗教観をもとにした法律を制定。5月末には、夜間のアルコール類の販売を禁ずる法律を制定している。今後の再開発でも、トルコ建国の父であるアタテュルク氏に捧げられた公会堂を取り壊し、モスクを建てる予定だと発表している。

「デモに参加した25歳の女性は、首相の好きなようにさせていたら、自分は頭にスカーフを巻かなくてはならなくなるだろうと、イスラム色の強い首相に警戒感をにじませた」(5日付ロイター)というように、イスラム教色が強まり、個人の自由が制限されつつあることに、多くの市民は危機感を抱いている。

経済成長で高い支持を得てきたエルドアン首相だが、6日の発言後にはデモの激化を懸念してか株価は一時、6%も下がった。イスラム世界の一部では、窃盗の罰として手足を切り落としたり、改宗が死罪にあたるなどの不寛容さがよく指摘されている。トルコ政府は、中東唯一のイスラム教の民主主義国として個人の自由を守る形で国を発展させる方向へ導くべきだろう。(居)

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2013年5月6日付本欄 親日国トルコを日本は大切にすべきだ その「親日」の秘密とは?

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2012年10月7日付本欄 シリア内戦がトルコに拡大の気配 NATOは速やかな介入を

http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=4982


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