【名画座リバティ (27)】イラン映画への誘い──『友だちのうちはどこ?』
2026.06.28
TCエンタテインメント『友だちのうちはどこ?』より。
映画ファンの皆様、梅雨空の下、お元気でお過ごしですか。
今年、国際政治の焦点となっている国、イラン。今出ている最新号「ザ・リバティ」7月号にも「イラン情報は間違いだらけ」という記事が載っています。今回は映画を通して、一般の日本人にはなじみが薄いイランという国のイメージに触れてみたいと思います。
ご紹介するのはイランの映画監督として最も知名度の高いアッバス・キアロスタミの「友だちのうちはどこ?」(1987年)です。イラン国内外で映画賞を受賞し、日本公開時もある程度ヒットしました。子供が主人公の素朴な話で、主役の男の子がかわいいこともあり評価の高い作品ですが、上記のリバティ記事の内容に照らすと、そうしたイメージとは別のイランの問題点が浮かび上がってきます。
(あらすじ)
イラン北部の村に住む8歳の少年アハマッドは学校から帰ると、隣の席のネマツァデのノートを間違えて持ち帰ってしまったことに気づく。ネマツァデはその日の授業でも宿題をノートに書かなかったことで先生に叱られ、「今度同じことをしたら退学させる」と言われていた。アハマッドは何としてもノートを返さなければと、ネマツァデの家がある遠い隣村まで歩いて出かけ、人びとに彼の家の場所を尋ね歩くも、暗くなっても探し当てることができない。やがて足の悪い老人が道案内をしてくれるが──。
本作の魅力は第一に主人公の少年です。キアロスタミ監督は素人を起用して映画を撮ることを好み、この少年も素人です。その作為のなさから、決心して隣村への道を走り出す様子や、大人たちに友だちの家の場所を尋ねる一生懸命さ、なかなか家が見つからない不安な子供心などがリアルに表出され、感情移入を誘います。
第二に、イランの風景や風俗を見ることのできる珍しさ。丘を縫う不思議なジグザグの小道、林の緑、家々の前を飾る濃いピンクの花などが、異国情緒で目を楽しませてくれます。風俗面では、本作は1987年の同時代が舞台ですが、庭や道を山羊や牛がのんびり歩き、少年の母親は井戸端でタライで洗濯をしています。日本の一般家庭が手洗いで洗濯をしていたのは電気洗濯機が普及した昭和30年代より前ですから、30年以上の文明差がある感じです。大川隆法・幸福の科学総裁は著書で、海外の事情を知る手段として映像が有効であることを、テレビを例に挙げ次のように述べています。
「読書では得られない知識がテレビから得られることもあります。たとえば、海外ものの番組などの場合がそうです。自分にとって専門外の分野や、自分が経験したことのない世界に関しては、テレビで観ると、よく分かることがあるのです」(『幸福の法』)
これは映画にも当てはまります。本作でイランの風物や人びとの暮らしぶりを映像で見ることで、かの国についての私たちのイメージは解像度を増し、親しみも湧いてくることでしょう。
さて、それは良いのですが、筆者は今回ちょうど本作を観返したタイミングでリバティ7月号のイラン関連記事を読みました。すると、それまで見えていなかった本作の側面が透けて見えてきたのです。それは、記事に引用されている大川総裁の次の言葉によるものです。
「私がイスラム教徒のいちばん直すべきだと思うことは、『嘘つきをやめなさい』ということです。嘘をつくのが当たり前になっているから。『嘘をつけるのは頭がいい』と思っているのです。これは開祖から問題があるとも思っています」(『減量の経済学』)
この言葉を読むと、本作にも「嘘」が出てくることに改めて気づきます。たとえばアハマッドは、道端に座って老人仲間とたむろしている祖父に呼び止められ、「煙草がなくなったから家から取ってこい」と命じられます。アハマッドは母から家の手伝いを言いつけられていたのでできない、と答えますが、祖父は「いいから取ってこい」。
少年が去ると祖父は仲間の老人に言います。「実は煙草はあるんだ。子供は年長者の言うことを聞くようしつけなければいけない」。子供を権威主義的にしつけるため、嘘が当たり前に用いられているのです。また本作に登場する教師や親には、子供が何かを釈明しても、それを意に介する姿勢が見られません。これは「子供は言い逃れのために嘘をつくものだ」という頭があるからでしょう。
そして、肝心の結末にも同じことが言えます。ネタバレは避けますが、本作の結末にはひとつの不正直さ、嘘が存在しているのです。気にしなければ気にならず、微笑ましいとさえ思えるかもしれませんが、大川総裁の指摘を踏まえると、監督がこうした結末を選んだこと自体、イスラム社会で嘘が許容されていることを暴露しているようにも思えてきます。
まことに、本物の宗教家による善悪の判定眼は恐るべきものであり、そのことを感じるためにも本作をお勧めします。あなたは本作の結末をどうご覧になりますか。
(田中 司)
『友だちのうちはどこ?』
- 【スタッフ】
- 監督・脚本・編集:アッバス・キアロスタミ
- 【キャスト】
- 出演:ババク・アハマッドプールほか
- 【その他】
- 1987年製作 | 83分 | イラン
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