関空・伊丹空港の民営化が前進 地盤沈下が進む関西復活の起爆剤に
2015.11.12
国が100%出資する「新関西国際空港会社」は10日、管理する関西国際空港(関空)と大阪(伊丹)空港の運営権売却・民営化について、オリックスとフランスの空港運営会社などからなる企業連合に対し、優先交渉権を与えると発表した。両空港は来年4月に民営化される。
「オリックス連合」は、両空港の2060年までの運営権を2.2兆円で入札。同連合は今後、空港の利便性などを高めるために、約1兆円の設備投資を行い、59年の売上高として昨年度の6割増となる2500億円の増収を掲げる。一方の国は、その売却資金を、約1.2兆円にも上る関空の建設債務の返済などに充てる。
今回の運営権譲渡は、「コンセッション」と呼ばれるもので、国や自治体が空港の所有権を有しながらも、その運営権を民間に売却するというもの。1986年にイギリスで空港を民営化して以来、利用者数が飛躍的に向上したため、空港民営化は国際的な広がりを見せている。
増え続ける関空の航空機発着回数と外国人利用者。新関西国際空港会社の資料をもとに編集部作成。
この他にも、高松や福岡、静岡などでも民営化はすでに検討されており、今回の落札を受け、神戸市の久元喜造市長は10日に、神戸空港の運営民営化についても検討を開始することを表明した。
地方空港は災害で活躍
日本には空港が約100カ所あり、その中には赤字を垂れ流し続けるものもある。そのため、空港は財政負担を強いる「ムダなインフラ」と思われている節もある。
これに対し、航空ジャーナリストの吉川忠行氏は、「東日本大震災では、被害の大きかった仙台空港に代わって、東北各地の空港が、支援物資や人員輸送の受け皿となった。活用施策や防災機能、空港間の連携がしっかり考慮されていれば、必ずしも空港が全国に100近くあることは、ムダではないはずだ」と反論する(『日経ビジネス』5月21日付電子版)。
災害対策だけでなく、実際の有事にも活用される空港は、重要なインフラの一つであり、「赤字空港は見切りをつけるべき」とは言い切れない。民間の発想を取り入れ、空港の存続を図るべきだろう。
日本には、約100兆円の国有資産があるとされる。その中には港湾のように、民営化によって発展する可能性がある資産はまだまだある。地方の活力を取り戻すために、政府は率先して、規制緩和や民営化を進める必要がある。(山本慧)
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