大学入試センター試験に代わる新テストの案を含む、「大学入試改革」の内容について、中教審が22日、下村博文・文科相に答申した。2020年度から実施されるという。23日付各紙が報じた。

新テストでは、「知識偏重型」を脱し、思考力や主体性など実社会で役立つ本物の「学力」を測るという。この試験には、数学や英語などの教科型に加えて、複数の学科にまたがる総合テストも行うという。

総合テストとは、たとえばワインをテーマにとると、ワインにまつわる歴史や化学、総合的な教養についても問うもので、将来的には総合テストのみにするという。

高校2年生から年に複数回受けることができ、1点単位ではなく、ある程度の幅を持たせて評価される。センター試験では、1点が足りないために2次試験を受けられないことがあり、子供たちの「可能性の芽」を摘んでしまう懸念があるためだという。

さらに、各大学で行う2次試験には、面接や小論文、プレゼンテーションの試験を想定し、ボランティアや部活動、留学など、課外活動も評価に含めるという。

こうした改革については、大学の教員や、受験する生徒の負担が増えるとして懸念の声が上がっている。私学では数万人単位が受験する人気校もあるが、面接や小論文の採点を誰が担当するのだろうか。

また、知識を問う試験ならば、生徒の意欲は点数で公平に評価できるが、面接官との相性という「運」が大きく影響する面接は、かえって生徒の「可能性の芽」を摘んでしまわないだろうか。

「大学入試改革」では、学力向上に加え、課外活動やプレゼンテーション能力も求めている。生徒の受験対策の負担は増えるばかりだろう。合否に占める課外活動やプレゼンテーションの割合が高くなれば、その分、勉強に割く時間は減り、学力低下は避けられまい。

部活も評価の対象になれば、本当に興味のある部活ではなく、受験に有利だとされる部活に殺到する危険性もある。留学できる家庭かどうかなど、個人の努力でカバーできない部分も受験に大きく影響する。結局、努力に応じた結果が出る学力試験が、一番フェアだと言える。

「知識偏重を脱する」という理念が、ゆとり教育を導入した時と同じであることは本欄で再三指摘してきた。学業以外についての生徒の負担を増やす今回の入試改革は、「ゆとり教育の再来」となりかねず、学力低下、ひいては国力低下を招く恐れが高い。(居)

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