下村博文・文部科学相は、これまで様々な政策を打ち出してきたが、それらは、「ゆとり教育」を復活させ、学力低下を招き、日本の国力を地に落とす危険性をはらんでいる。最近、金銭問題で追及されている下村文科相は、本業の教育行政においても、その資質が問われている。
「ゆとり教育」にそっくりの提言 入試改革の危ない中身
昨年10月、下村文科相もメンバーになっている政府の教育再生実行会議が、安倍首相に大学入試改革に関する提言を行った。内容は、現在の「学力重視」から、面接や高校時代の部活動・ボランティア、留学経験など、「人物本位」の評価にシフトするものだ。
これについて下村文科相は、「暗記・記憶中心の入試を(センター試験と2次試験で)2 回も課す必要はない」「多面的・総合的な能力・意欲・適性を評価する選抜への転換」などと述べている。
しかし、下村文科相の発言や提言の言葉は、学生の学力低下を招いた「ゆとり教育」導入の際に使われていたものとそっくりなのだ。当時使われていた言葉も、「知識偏重からの脱却」「考える力を養う」などだった。
子供の学力と企業の競争力を落とした「ゆとり教育」
ゆとり教育で、日本の子供の学力は落ちた。15歳を対象に行われる国際学習到達度調査(PISA)で、日本は2000年から06年にかけて数学が1位から10位、科学が2位から6位、読解力が8位から15位に転落。その世代が社会人になり始めた近年、これまでの新人教育が通用しないと悩む日本企業が増え、競争力を低下させている。
また、前出の入試改革の提言に対しては、学校や塾、企業など各方面から、「留学経験などの人物本位の評価は、結局、『育ちの良さ』を見ることになり、社会の階層を固定化する」など、批判が噴出している。
学力テスト結果公表をめぐり県知事とバトル 子供の学力向上より「規制」が大事!?
下村文科相は今年9月、静岡県の川勝平太知事が全国学力テストの成績上位校の校長名などを公表したことを批判した。「知事が権限を逸脱して一方的に公表することはルール違反」とし、翌年の結果を知らせない可能性もあると罰則をちらつかせた。
「ルール」とは、同テストの結果は教育委員会の判断で公表できるが、知事にはその権限がないというもの。ただ、川勝知事が昨年に続き結果を公表した背景には、同県が昨年度全国最下位だった小6の国語で、27位まで順位を上げたことがある。
学力テストの結果は、いわば教育を行う学校や教師の側の「成績表」。それが公表されることで切磋琢磨し、教育内容が改善されるのに、文科相が批判するのは本末転倒だ。単に、「オレたちがつくったルール(規制)にたて突く気か!」と怒っているようにしか見えない。無駄な規制があるなら、それを変えればいいだけの話だ。
こうした状況からは、教育への情熱は感じられない。むしろこのままでは、ゆとり教育の悪夢を繰り返すことになるだろう。下村文科相は、教育行政のトップとして、やはり不適格だと言わざるを得ない。
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