11月26日、幸福の科学学園(理事長・木村智重)は下村博文・文科相に対して、幸福の科学大学の設置審議中に文科相が行った重大な「不正行為」について弁明請求を行った。約2年に渡る大学設置室などとのやり取りを公開し、審議に介入した下村氏の「不正行為」について同氏に真摯な弁明を求めるものだ。これまでにも同学園は、下村氏に対し「不認可」処分の取り消しを求める異議申立てをしてきたが、今回の弁明請求の内容から、権力を恣意的に乱用してきた下村氏の実態が白日の下にさらされることとなった。

不正行為(1) 前室長らの内諾を人事異動で反故にした

前室長らは内諾し、霊言を問題視していなかった

下村氏は幸福の科学学園の異議申立てを却下し、11月21日付けで同学園に対して、審議中の不正行為について弁明書を提出するよう求めてきた。今後5年間、同大学の開学を認めないことを前提とした、事実上の最後通告である。しかし、本欄で再三指摘したように、同学園に不正行為など存在せず、今回の弁明請求は逆に、下村氏と文科省側の「不正行為」を厳しく指摘するものだ。

そもそも、下村氏は「不認可の理由」の中で、「霊言は科学的方法に基づく実証可能性や反証可能性に疑義がある」「『霊言』を根拠とした教育内容そのものが学問として認められない」などを根拠に挙げ、審議会が出した答申にも、「霊言を教育の根底に据えることは認められない」との主旨で不可の理由が書かれていた。

これらはもちろん、学問の中身について行政側が正否を判断したという意味で重大な「学問の自由」の侵害であり、キリスト教や仏教、天理教などの既成の宗教系大学の設置根拠をも否定するものだ。

今回、新たに判明したことは、今年7月末までの間、文科省の大学設置室長や審議会の責任者たちは、「霊言は問題にはならない」「幸福の科学教学を単位に含んでもかまわない」という主旨の発言をしていたという事実だ。

同学園が文科相に対して提出した弁明請求書によると、『文部科学大臣 下村博文守護霊インタビュー』が6月に発刊された後も、今泉柔剛・大学設置室長は「それ(下村氏守護霊霊言本)は大臣と宗教法人の問題なので、私ども文科省と申請者(幸福の科学学園)の関係の話ではない」「我々も、あの本(霊言本)がどうなろうと、別にそれでもって、何か圧力をかけたりといったことはしません。粛々と法令の規定に則って、是々非々で審査していきます」と明確に述べていた。

審議会との手続きにおいても、次のようなやり取りがあった。

5月19日の第1回審査意見において、人間幸福学部や経営成功学部に関して、「幸福の科学教学」を含む内容に否定的な意見が出された。

しかし、同月21日の面接審査において、佐藤東洋士・大学設置分科会会長(桜美林大学理事長)は、「自分(桜美林大学)のことを言っていいかどうかということはあるが、うちは幅広い教養でやっているけれども、学生はキリスト教は必修として取らなければいけないというのはある。それはクリスチャンスクールとして、他の青山学院、明治学院等もそうなっている。その部分を否定するわけではない」と発言。

さらに、今泉室長が「これは拾ったことにしておいて下さい」と言いながら、手書きメモを幸福の科学学園の九鬼一・副理事長に渡した。そこには「幸福の科学教学を、専門科目の体系から外せば認める」という旨が記されており、その後、補足説明があった。

同学園はその言葉を汲み取り、最終的にそれらを専門科目から外し、「僧職者養成のための自由科目」に変更した。

現職議員も調整 学長候補交代で認可

認可に向けての文科省とのやり取りには、ある国会議員の仲介もあった。

今泉室長は、同国会議員の調整によって、「幸福の科学大学の学長候補を九鬼一副理事長から別の人物に替えて、九鬼氏は総長として置けば、細かい問題はあっても工夫によって大学設置認可が可能」という主旨の発言までしていた。

実際、同学園関係者と国会議員本人との話し合いの中でも、以下のように学長を替えれば認可を受けられるというアドバイスがあった。

「(学長を替えるというのは)九鬼氏の人格を否定しているわけではなく、今後しばらく我慢したほうが得ではないかということ。役所がそうアドバイスしたとなると大変だが、今までの例を見ても、経験のある人の名前を借りてスタートして、一年間のうちに九鬼氏が副学長などで経験を積んで論文を出すなどすれば、2年目からは堂々と学長をやれる。そこではもう、介入できない」

同学園はこれらのやり取りを経て、小代哲也・大学設置室長補佐に具体的な書類作成方式について相談した上で、学長候補者をやむを得ず変更した。

ただ、本来ならば、宗教系大学の学長は、宗教的見識に優れた人物でなければ務まらない。ましてや、全国の信者の方々からの寄付で建設される大学であるならば、信者全体の信認を得られる人物として、大川隆法・幸福の科学グループ創始者兼総裁のもとで長年宗教修行を積み重ねた実績のある九鬼氏が適任だった。

学長候補者の変更は、あくまでも大学認可に必要な対応として、文科省側の意向を汲んだものだったと言える。

以上のように、大学設置室長や審議会の責任者などは「認可」の方向で調整しており、約2年に及ぶ事務相談や審査意見において「霊言」が問題視されたことは一度もなかった。

不正行為(2) HPを参考に「不可答申」を書くなど、審理ルール破り

人事異動から一変 審査の大前提を覆す暴挙

ではなぜ、10月31日の最終判断において、突如として「霊言」がやり玉に挙げられ、その一点を持って「不認可」の判断が出されるに至ったのか。

学長候補者を変更した補正申請書を提出してから約1カ月後の7月25日、審議継続中であるにもかかわらず、突然、文科省内で今泉室長に人事異動が発令された。

後任として新木聡氏が就任した後、一転して、審理手続きのルールから著しくかけ離れた「不正行為」が数多く噴出するようになる。

まず、九鬼氏は異動直後の今泉前室長に電話をし、後任者にこれまでの経緯はすべて引き継ぎがなされていることを確認した。しかし、小代室長補佐を通して何度申し入れをしても、後任の新木室長は直接の面談を受け入れず、その後の事務相談の場に一切、出席しなかった。

そして文科省は10月31日、下村大臣名で「不認可」とする決定を出してきた。信義も誠意も欠く一方的なこの対応を見れば、室長の突然の人事異動は、これまでの審理手続きや内諾をすべて反故にすることを狙ったものだったことは明白である。

実際、新木室長着任以降の文科省の対応は矛盾と欺瞞に満ちている。

大学設置認可申請の審査は、文科省に提出した書類のみが審査対象となる。公正を期すため、それ以外のものを参考にすることは認められず、「書面、面接、又は実地により行う」ことが規則で定められている。

実は、大学側が提出した申請書類には、「霊言」に基づいて教育を行うという趣旨が記載された文書はまったくない。各学部のカリキュラムは既存の学問体系に則ったものとなっている。それにもかかわらず、審議会の不可答申や下村氏が出した「不認可の理由」には、「霊言を根拠とした教育は認められない」との趣旨が明記されている。まさに一方的な予断と言わざるを得ず、審査ルールが一顧だにされていない。

新木室長は、ホームページを参考にして「不可理由」を書いた

しかも、文科省で10月31日に行われた不認可理由の伝達の場において、新木室長は「霊言」についてインターネットの宗教法人のホームページにある内容も参考にして理解し、同大学のカリキュラムは霊言に基づくのだろうと「類推」して「不可理由」を書いたと明言している。

また、新木室長は、「是正意見に対して幸福の科学大学は補正してクリアしてきたけれども、最終的に根幹の部分(霊言)がクリアできなかった」とも発言した。

ホームページの内容から類推して結論を出すなどとは、審査ルール無視を通り越している。

さらに、審査においては1回目に出されなかった「新たな、より強い意見」で是正を求める「不意打ち」は行わないよう文科省の内規で定められている。前述したように、2年にわたる事務相談と、審議会からの2回の「是正意見」には、霊言に対して一度も指摘がなかった。

しかし、10月31日の最終段階において、新木室長自らが「根幹の部分」と語る霊言について、「是正意見」を出されることさえないまま、これのみを根拠として不認可としたことは、明確な内規違反であり「不正行為」である。

約2年にわたる審査の流れや仲介した政治家の調整、根本の審査ルールなど、一切を覆す強権ぶりからすれば、室長の異動以降の動きに関して、文科省のトップである下村氏の意向が働いていたことは疑いの余地がない。

「行政の継続性」と「審査の適正手段」を大臣自らが踏みにじり、「学問の自由」「信教の自由」を求める国民を欺いた下村氏の職権乱用こそ最も深刻な「不正行為」である。そして、不認可理由が「霊言」に集中している点、後述するように、下村氏が大川総裁の霊言書籍の出版を差し止めるよう圧力をかけていた事実などを見れば、今回の不認可は、下村氏が自身の守護霊霊言の内容を“公に"否定したいがための恣意的判断だったことは明らかだ。

不正行為(3) 幸福実現党への脅迫とバーター取引

出版差し止め、解党圧力 下村氏の「不正行為」

下村氏の「不正行為」は審査以外の場面にも及んでいた。

6月6日、下村氏本人から、元自民党市議会議員で、現在は幸福実現党の職員の携帯電話に連絡が入った。同職員はもちろん、幸福の科学学園とも大学設置審査とも関係がない第三者だ。

その職員に対して下村氏は次のような話をした。

「本をストップすることで、やりようはまだある。まだ、間に合うから。役人が(霊言書籍の原稿の)コピーを持ってきた。それを見て驚いた。罵詈雑言が書いてあるではないか。これまでA氏(前出の国会議員)から電話があって、一生懸命やっているとは聞いていた。学部名はクリアして、あとは九鬼という人が学長でなければならないというところを、一年我慢してバトンタッチするやり方はあると提案していたが、とにかく誹謗中傷の内容である。今だったら、対応の仕方がある。本部のしかるべき人に話をしてくれないか。本のストップ(出版中止)は当然のことだ(中略)。今だったら対応の仕方がある」

同職員はその内容に驚いたが、翌7日、『下村博文文科相の守護霊インタビュー』が発刊された。

実は、同書の中で下村氏守護霊は、「幸福実現党を解体して、自民党の支援団体に変わる」ことを、幸福の科学大学の認可の条件として挙げていた。守護霊の発言は本人の本心を反映していることに加え、本来、第三者であるはずの同職員に、現職の大臣から直接電話連絡が入って出版差し止めを要求されたことは、幸福実現党に解党を迫る脅迫だと同職員は動揺した。

その後、同職員は、前出の国会議員と幸福の科学職員とのやり取りの中で、「幸福の科学に好意的ではない政治家も世の中にいっぱいいるわけです。少なくとも教団として政党を持って、政治の世界に挑戦しているわけですから」という発言があったこと、また同国会議員自身も文科省の役人から「幸福実現党として選挙に出ているから、他の政党からさされる可能性があります」と言われていたことを漏れ聞き、下村氏が電話してきた意図には、幸福実現党解党の脅迫も含まれていたことを確信したという。

下村氏の前述の電話での発言は、大川総裁の書籍の出版差し止めと大学の認可をバーター取引するものであり、大学設置の許認可権を利用した極めて悪質な「不正行為」である。「公人」としての権力を使って出版妨害を行うことは、言うまでもなく「言論・出版の自由」の侵害であり、違憲行為に当たる。

下村文科相の不正行為は「戦後最大の宗教弾圧」

権力を私物化し、「票とカネ」に変える下村行政に鉄槌を

個人的な事情で権力を行使する下村氏は、その権力を「票とカネ」に変える術にも長けている。

このほど朝日新聞の報道で、下村氏が代表を務める自民党東京本部第11支部が、文科省から補助金を交付された2つの学校法人から計10万8千円の献金を受け取っていた事実が明らかになった。

また、文科省は今年8月、東北薬科大学を、国内で37年ぶりとなる医学部の開設候補として選定。その直後の9月27日には、下村氏の後援団体「東北博友会」が仙台市内の一流ホテルで会費一万円の下村氏講演会を開催し、同大学理事長を始め、医師や教育関係者などが多数参加した。その露骨な「票とカネ」集めの様子は、週刊誌「フライデー」(10月17日号)に掲載された。

他にも、政府の教育再生実行会議のメンバーの中に、下村氏の同支部に計156万円を寄付していた学習塾グループの代表が選出されていることも明らかになっている(11月20日付毎日新聞)。

一方、不認可となった幸福の科学大学は、下村氏の後援団体や支部には金銭的な寄付を行っていない。審査ルールに従って、書類や面接による申請を真摯に積み重ねてきた。

文科大臣という公権力を私物化し、それを「票とカネ」に変えることを恥じない下村氏にとって、金銭面で貢献しない幸福の科学学園を「認可」するなど考えられなかったのだろう。

下村氏はかくも遵法精神と倫理観に著しく欠ける人物であり、公人として文科大臣に相応しいか否か、検証を受けるべきだ。

「戦後最大の宗教弾圧」

弁明請求書を提出した幸福の科学学園の木村智重理事長は、本誌取材に対して、「今回の不認可処分は、戦後最大の宗教弾圧と言えます。文科省と下村大臣の責任は重い。度重なる『不正行為』について、公人、公僕として説明責任を果たすべきです」と語った。

下村氏は、この弁明請求を受けて、これまでの「不正行為」や法律違反、憲法違反の数々、許認可権を私物化した疑義について、明快な説明を行うべきだ。

幸福の科学大学への進学を希望していた全国の受験生、およびその保護者が受けた精神的被害の甚大さは、筆舌にし難いものがある。「学問の自由」と「信教の自由」を現役の閣僚に侵害されたことは、国民が主権者である民主主義国家で起きてはならないことだった。

下村氏は道徳教育の普及に関心があるそうだが、道徳の根拠にあるのは宗教だ。現在進行形で宗教弾圧を行っている下村氏は、道徳教育を推進するような立場にはない。

不認可以降、逃げの一手を打っているが、自らに非がないと言うならば、下村氏は公然とその潔白を主張するべきだ。

これ以上、行政への不信感を日本に蔓延させるべきではない。