2014年9月号記事

患者を"卒業"させる病院を目指せ

医療の「常識」逆転 後編

現代の医療界には、病院やクスリが病人を増やしている実態がある。だが、医療本来のミッションは、患者を早く治して病院から"卒業"させることだろう。そのためには、病気の根本にある生活習慣に目を向けると同時に、患者の実情に合わせた多様な医療サービスの普及に向けた規制緩和が鍵となる。「もっと治せる医療」は、際限なく拡大する医療費にも歯止めをかけるはずだ。

(編集部 近藤雅之、河本晴恵)

日本が世界に誇る国民皆保険制度は、いつでもどこでも低い自己負担で医療を受けられる便利さで、日本人の健康生活に長く貢献してきた。

だが近年、生活習慣病などの症状を抑えるために一生薬を飲み続けたり、抗がん剤の副作用を和らげるためにさらに薬を処方されるなど、患者が薬漬けになるケースが増えている。

また、日本の病院の平均在院日数はOECD(経済協力開発機構)加盟国では最長の18日であり、平均の2倍以上、アメリカの3倍以上だ。人口当たりの病床数も、アメリカやイギリスの4倍以上、国民一人当たりの外来受診回数も群を抜く。

その結果、医療費は政府の税収とほぼ同じ40兆円に上り、2025年には60兆円まで膨らむと予想されている。このうち、生活習慣病の治療にかかる医療費は実に3分の1を占める。通院と薬漬けで医療費が膨らむ一方、生活習慣病をはじめ、患者の数は増え続けているのだ。

医療がこうした現状に陥っている原因について、多摩大学の真野俊樹教授に話を聞いた。