2014年8月号記事
南シナ海危機
日本はアジアの警察官たれ
東南アジアは「盟主」を求めている
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PART 3
期待される「強い日本」
中国の脅威にさらされた東南アジア諸国は、経済的にも軍事的にも劣勢にある。「世界の警察官」だったアメリカにも頼れない中、日本への期待が高まっている。
経済の中国依存度が高い東南アジア諸国の中でも、 南シナ海で中国と領有権を争うベトナムとフィリピンは、明確に中国を批判し、抵抗している。両国は軍事面の近代化を急いでいるが、その力はまだ、中国と比べてあまりにも脆弱だ。
ベトナムは、90年代後半から本格化させた海洋資源開発に合わせ、海軍を増強している。しかし、同国が音の静かな潜水艦を配備したのは、今年に入ってからであり、運用のための訓練をし始めたばかりだ。また、レーダーシステムの整備も遅れており、南シナ海で何が起きているのかを正確に把握できているとは言い難い。
フィリピンも海軍の近代化が遅れている。艦船の多くは、第2次世界大戦当時の「年代物」。しかも、韓国やアメリカの退役した船を修理して使っており、日本が同国の沿岸警察に新しい巡視艇を供与することが分かると、海軍から嫉妬の声が上がったほどだ。
7千以上の島からなるフィリピンがその広大な領域を警備するには、艦船の絶対数も足りない。国内の治安維持を優先せざるを得ず、海軍の質、量ともに乏しい状態だ。
一方、12兆円以上の軍事費を費やす中国は、空母1隻に加え、フリゲート艦45隻、潜水艦69隻、戦闘機2055機などを保有。海軍戦力の数だけを比較しても、ベトナムやフィリピンと比べ物にならない(下図)。