これまで紛争が絶えなかったインドと中国が急接近している。きっかけはインドのナレンドラ・モディ新政権の発足だ。モディ氏は首相就任後、初の電話会談を中国の李克強首相とおこない、中国の王毅外相はすでに訪印している。また、年内には習近平国家主席が訪印することも検討中だ。

モディ氏と王氏の会談では、貿易や投資拡大を中心とした話し合いがおこなわれたようだ。この会談後、インド外務省報道官は、「中国では、千里の道も一歩からという。その一歩が今日始まった」と非常に前向きなコメントを発表している。

今回のインドの中国接近の背景には、「インドの経済発展には中国の投資が必要であり、相互協力が高まれば国境での小規模な紛争は容易に解決しうる」とのモディ氏の考えがあると分析するインド人専門家もいる。モディ氏には経済分野での実績があり、インド経済の立て直しが期待されていることを考慮すれば、今回の選択は予想の範囲内と言える。

しかし、モディ氏が中国との紛争について本当に「容易に解決しうる」と考えているのであれば、それは危険である。なぜなら、中国の目的が「印中友好」でないことは明らかだからだ。それどころか「隙あらばインドを取り込む」というのが中国の本音だろう。中国軍によるインドへの侵入は年間200件にも及び、カシミール地方には中国軍が駐留し、インド洋へも海洋進出するなど、中国によるインドへの挑発的な行動は現在も続いている。

両者の関係はまさに「片手で握手しながら、もう片方の手で殴りあっている」状態だと言える。

一方、インドはこれまで、日米との友好関係を非常に重視している。2001年以降、インドはアメリカとの共同軍事演習を60回以上、日本とは07年以降だけで7回行っている(14年の予定含む)のに対し、中国とは4回しか行っていない。

最近でも、モディ新政権の外務省諮問委員であるタルン・ビジャイ氏は、シンガポールで開かれた「アジア安全保障会議」の場において、インド代表団の一人として、新政権がいかに日印関係を重視しているかを語った。

ビジャイ氏は、「インドは中国、韓国と緊密で戦略的な関係にあるが、日本は全天候型の友人だ」と述べ、インドの外交相手として「日本は別の部類(別格)」であるとしている。また、モディ氏の訪日が7月を目途に検討されている。実現すれば米露訪問よりも早いタイミングだ。

インドは日本にとって、安全保障、経済関係の両面において非常に重要な存在である。アジアの平和を構築し、共に発展することができるパートナーとして、日本はインドからのラブコールにしっかりと応えていかなければならない。

過去、日印両国がインド独立にむけて共に戦ったときのように、現代においても両国が協力し、自由を脅かす中国の覇権主義に対抗しなければならない。

(HS政経塾 数森圭吾)

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