インド下院の任期満了に伴う総選挙で、最大野党であるインド人民党(BJP)が、単独過半数を超えて、10年ぶりに政権交代が起きた。これにより、BJPのナレンドラ・モディ氏が次期首相に就任することが決定。この結果を受けて、日本やアメリカなどは、モディ氏に祝福のメッセージを送るとともに首脳会談の開催を打診。モディ新首相の最初の外遊先は日本で、年内に訪問するとの観測も出ている。

親日的と評されるモディ氏が新しいインドの首相になったことで、日本との関係が強まり、安倍晋三首相が構想する「セキュリティ・ダイヤモンド構想」の実現が進むだろう。

「セキュリティ・ダイヤモンド構想」とは、安倍首相が2012年に、国際NPO団体「プロジェクトシンジケート」のサイト上で発表したもの。この構想の中で、安倍首相は、「私が描く戦略は、オーストラリア、インド、日本、米国ハワイによって、インド洋地域から西太平洋に広がる海洋権益を保護するダイヤモンドを形成することにある」と述べた。明らかに対中包囲網の構築を意識している。

これを実現するかのように、安倍首相は昨年だけでも、25カ国を外遊し、外国との安全保障などの強化に努めてきた。

一方のインド側も、中国との領有権争いで軍事衝突した過去を踏まえ、中国の脅威に対抗するために軍事費を増額している。2013年度の軍事費は、約3兆8000億円であり、10年前と比べて3倍に拡大。また中国が、インドと対立するパキスタンと友好的な関係を築き、パキスタンに武器を供与していることも、インドは快く思っていない。

このように、日本とインドは、「中国の脅威」を抱えるという点で一致するが、安全保障以外にも経済的な関係強化が期待できる。モディ氏は、選挙演説中に新幹線の導入や電力などのインフラ整備の必要性を訴えており、原発などのインフラ輸出を進める日本にとっては歓迎すべきことだ。

すでに日本とインドの間では、インドが日本の救難飛行艇「US-2」を購入することが決まるなど、安全保障の面で協力が進んでいる。一方、中国は、ベトナムやフィリピンなどと南シナ海の領有権を巡って対立し、周辺諸国への恫喝を強めている。日本は武器の輸出を緩和したのであれば、救難飛行艇以外の武器輸出も積極的に進め、インドとの安全保障を強化していくべきだ。

アジアの平和と安定を守るためにも、対中包囲網の完成が急がれる。(弥)

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