ASEAN各国が、南シナ海における中国の進出をけん制する姿勢を強めている。ミャンマーを議長国として開かれたASEAN首脳会合の議長声明が、12日に公表された。この声明には、ベトナム船と中国公船の衝突などを受け、名指しはしなかったものの、南シナ海の情勢について「深刻な懸念」という文言が入れられた。

これまでASEANは、中国に対する明確な批判を避けてきた。2012年に開かれたASEAN外相会議の際は、共同声明を採択しないで閉幕している。この時の議長国だったカンボジアが、中国から圧力を受けたためだ。ASEAN諸国は経済的に中国に依存しており、中国に対して強い態度を取りにくいという背景があった。

そんなASEANの姿勢を変えた大きな要因は、フィリピンから撤退していた米軍が、22年ぶりに戻ってくることが決まったことだ。4月28日には、アメリカとフィリピンとの間で米軍のフィリピン駐留と米軍基地の設置についての軍事協定が調印された。その後フィリピン警察は、南沙諸島で違法に漁を行う中国船を拿捕するなど、積極的な行動に出ている。

また、日本からのASEAN諸国への投資拡大も要因の一つだ。今回の議長国であるミャンマーは中国から経済支援や投資を受けており、親中的だ。しかし、2012年から13年にかけて、日本からのミャンマーへの投資は10倍になり、逆に13年4月期の中国からの投資は、前年度の10分の1に減っている。日本は他にもフィリピンやタイ、ベトナムなどASEAN諸国への投資を増やしており、同地域との関係は強くなっている。

米軍の後ろ盾が同地域の安全保障の要であるのは確かだが、実際にはシリアへの軍事介入を避けるなどしており、米軍が有事の際に軍事行動を実行する保証はない。しかも、アメリカの国防費は削減の一途をたどっているため、いつ再び米軍が撤退するかは分からない。仮にアジア地域以外での危機が起きた場合、アジアから米軍が出て行く可能性もある。今後もアメリカとの協力を深めていくのはもちろんだが、基本的にはアジア地域が一丸となって中国に対する安全保障体制を築く必要がある。

そのなかで鍵になるのは日本だ。前述の日本との経済協力の進展で各国の対中依存を相対的に減らすことはもちろんだが、安倍晋三首相が掲げる「積極的平和主義」にもASEAN各国からの期待が集まっている。今後日本は、アジアの安全保障における自国の責任がますます大きくなることを前提として外交を進めるべきである。(晴)

【参考書籍】

幸福の科学出版 『「正しき心の探究」の大切さ』 大川隆法著

http://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=1091

幸福の科学出版 『Power to the Future』 大川隆法著

http://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=927

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2014年5月号記事 日本がアジアの防衛に責任を持つ時代 - 201x年 米軍、アジア撤退 「戦わないアメリカ」をもう止められない Part3

http://the-liberty.com/article.php?item_id=7560

2014年5月8日付本欄 オバマ米大統領の力不足を見透かす中国 南シナ海でベトナム・フィリピンと衝突

http://the-liberty.com/article.php?item_id=7811