中国の浙江省温州市で4月29日、完成間近のキリスト教会堂が強制的に取り壊された。

今回取り壊しの対象となった「三江教会」は、中国政府に公認されているキリスト教会。建設中の教会堂について、地方当局から3日、「安全性に関わる重大な欠陥がある」と指摘され、10日には「違法建築」を理由に、強制撤去の命令が下されていた。

地元信者たちは、約3000万元(5億円)もの寄付を集め、6年の歳月をかけて、教会堂の建設を進めてきた。約2000人を収容できる大規模な教会の完成を心待ちにしていた。

その教会堂に、突如、「違法建築」認定と「取り壊し」命令が下されたことに対し、多数の信者が連日、徹夜で座り込みをして撤回を要求。多い時には、約3000人の信者が教会堂前で「盾」となって声を上げた。その甲斐なく、教会の代表者が警察に逮捕されるなど、抗議していた人は強制退去させられ、教会堂は解体された。

今回の教会堂取り壊しは、中国での宗教弾圧や人権侵害を象徴している。

現行の中華人民共和国憲法の36条では、「宗教信仰の自由を有する」「国家は、正常な宗教活動を保護する」と書かれている。しかし同時に、「社会秩序を破壊する活動を行ってはならない」ともされており、共産党体制の方針に沿う形でしか、「信教の自由」は認められていない。

そのため、政府の公認でない宗教活動は認められておらず、三江教会のように政府公認であったとしても、中央・地方政府の意向に大きく左右される。

三江教会堂が建設されていた浙江省温州市は、「市民の15%が教会に通っている」とも言われるほど、キリスト教が浸透している地域。地元政府は、「キリスト教が広がることで、共産党の統治基盤が揺るがされる」と懸念している。「安全基準違反」を理由にしてはいるが、一種の宗教弾圧であることは間違いない。

中国は、周知の通り、自国内での基本的人権さえも十分に保障していない。また、信教の自由が、「内心の自由」という人間としての尊厳を守る上で、最も本質的な権利であり、現代文明の基盤でもあることを無視している。

いかに経済的に大きな国となろうとも、信教の自由をはじめとする人権を踏みにじる「野蛮国家」に、他国を批判する資格はない。中国封じ込め戦略には、「人間の尊厳を無視する無神論国家の暴走を止める」という大義があることを再認識させられる。

(HS政経塾 森國英和)

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