安倍晋三首相は15日の参院予算委員会で、「村山談話」を継承することを明らかにした。

「村山談話」とは、1995年、村山富市首相(当時)による「戦後50周年の終戦記念日にあたって」と題する声明文で、日本の植民地支配と侵略を認め、反省とお詫びの気持ちを記したものだ。

安倍首相は、第二次安倍内閣発足当初から歴史認識の見直しを掲げており、戦後70周年になる2015年に未来志向の「安倍談話」を出す意向を示している。そのため安倍首相は、4月22日の参院予算委員会で「安倍内閣として、(村山談話を)そのまま継承しているわけではない」、23日の同会でも「侵略の定義は定まっていない。国と国との関係で、どちらから見るかで違う」と発言していた。

しかし最近、安倍首相の靖国神社参拝や村山談話などの歴史認識に関する発言を巡り、米中韓から非難の声があがっていた。

日米関係に関する米議会調査局の報告書は、安倍首相を「強固なナショナリスト」、安倍内閣の閣僚らを「ウルトラナショナリスト」と断定した。

中国外務省の華春瑩副報道局長も4月25日の記者会見で、「もし日本の指導者が過去の侵略の歴史を『誇りある歴史と伝統』とみなすならば、アジア諸国との関係にも未来はない」と批判。

また同24日に韓国の朴槿恵大統領は、「歴史に対する正しい認識なしに、日韓両国が未来志向の関係を発展させるのは難しい。右傾化は日本自身にとってなんのメリットもない」と述べていた。

安倍首相が「村山談話」の継承へ方針転換をしたのは、このような外国政府からの非難と、夏に控えた参院選挙を見据えた内閣支持率への影響を懸念したためと考えられる。

しかし、このまま日本は、歴史認識をめぐって自国の主張を曲げ続けるわけにはいかないだろう。

15日付産経新聞によると、在ワシントン日本大使館の公使が13日、中国や韓国の「反日キャンペーン」に反論するために、中国や香港などのアジア系メディアに対して、日本のポップカルチャーを用いて日本の歴史認識や尖閣諸島について説明した。会合後、香港の記者は「日本の印象がかなり変わった」とつぶやいていたという。

中国・韓国がアメリカなどで自国に有利なプロパガンダ工作を徹底的にしているのに対し、日本はそこが極めて弱い。それが日本の立場を不利にしている大きな要因だ。

日本自身がより正しい歴史認識を身につけるとともに、海外への発信を根気よく続けて、日本の正しい歴史認識に対する理解を広めていくことが必要だろう。(飯)

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