枝野幸男・経済産業相が、東電を「国有化」しようとして圧力を掛け続けている。

16日付朝日新聞は社説を全15段ぶち抜き、しかも2回連続で「東電処理と電力改革」「国民負担は避けられない」と大々的に論じている。同日付毎日新聞も一面トップで「東電、やまぬ人材流出」「韓国が引きぬき攻勢」と、東電バッシングを受けて社員が次々と転職していることを取り上げている。

朝日の社説は、ほとんど常軌を逸している。

まず、冒頭から「福島第一原発の事故に伴う巨額の費用は、東電に徹底的に負担させる。ほとんどの人は異論あるまい」と来た。「しかし、とても追いつかないだろう、最後は、電気料金や税金の形で国民が負担せざるをえない」として、「もう一方の道は、国民負担を覚悟のうえで、国が経営権を握るルートだ」と、国有化に賛同している。

さらに、「今回の事故の責任は一義的には東電にある」「まず東電のリストラを徹底し、負債にあてる原資を最大限にひねり出す必要がある」「株式の価値はゼロにする」「金融機関にも一定の債権放棄を求める」と枝野氏と同じ論理を並べ立て、「どちらを選んでも、料金値上げという国民負担が避けられないのなら、国が経営権を握るほうがいいのは明らかだ」と結論付けている。

この社説を見れば、朝日は菅氏や枝野氏とまったく同じ論法で東電の国有化を進め、政府が電力を牛耳るのが正義だと言っているのが分かる。これこそが「国家社会主義」のやり口だ。本欄でも繰り返し述べたが、福島原発事故の責任は「第一義的」に政府にある。考えなくても当たり前のことだ。原発は国策で推進してきたのだ。

それに、原子力損害賠償法で「異常に巨大な天災地変による原子力損害」については、事業者は免責されると明記されている。この免責条項については政府から何の説明もなく、「責任は第一義的に東電にある」と言い続けてきた。このようなウソと欺瞞がいつの間にかまかり通っているのだ。

政府のウソがまかり通ってきた原因は、マスコミが大々的に繰り広げた「東電バッシング」にある。つまりマスコミと政府がグルになって、東電を悪者に仕立て上げ、国民や被災者の目をそちらに引きつけて、政府は「正義」の仮面をかぶって安全地帯に逃れたのだ。

さらに懲りずに、国家社会主義者・枝野経産相は、東電の値上げを「許せない」と、さも国民の側に立つフリをして、なりふりかまわず国有化しようとしている。

それに対して東電は、よくふんばっている。なんとか民間の立場を維持しようとして、国の株取得を3分の1に抑えようと、枝野氏と綱引きをしている。

国有企業になったら収益感覚などないから、原発の代わりに高コストの代替エネルギーに頼り、電気料金はさらにどんどん値上げする。それでも足りずさらに税金を取るだろう。現に朝日社説では、「例えば東電の送電網を利用することに課税してはどうか」と、堂々と増税を主張しているのだ。

ここは民主党政権と孤独な戦いを続ける東電にエールを送り、「損害賠償は当然国がやるべきだ」と国民が声をあげ、次期衆院選でひっくり返すしかあるまい。(仁)

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