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欧州連合(EU)の欧州委員会が16日、「2035年にエンジン車の新車販売を禁止する」という目標を撤回する案を発表しました。
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EUは2021年、「35年にエンジン車ゼロ」の方針を掲げ、35年までに二酸化炭素(CO2)排出量を21年比で100%削減するよう義務付けてきました。
しかし、安価で高性能の中国製電気自動車(EV)の流入などにより、EU域内でEV不振が続いていました。欧州自動車工業会(ACEA)によると、25年1~10月の欧州主要31カ国のEV販売台数は202万台と「新車全体の18%」にとどまるといい、35年の目標達成が困難であることは目に見えていました。
そうした中、EUは今回、「製造過程でCO2排出を抑えた合成燃料などを使用すること」を条件に、35年以降もエンジン車の販売を認める方針です。ただあくまで、50年までに域内の温室効果ガス排出量を「実質ゼロ」にする目標は変わらないとしています。修正案の実現には、EU理事会や欧州議会の承認が必要となります。
今回の方針見直しをめぐっては、ドイツやイタリア、東欧諸国が強く要求していた一方、フランスやスペインなどは「戦略転換は混乱を招く」と懸念を示してきました。独自動車大手のフォルクスワーゲンは、今回の動きを「現実的」かつ「経済的に健全」だと歓迎し、ドイツのメルツ首相も「技術に対するさらなる開放と柔軟性の向上を認めることは、正しいステップだ」と述べています。
近年、ヨーロッパの大手自動車メーカーはEV政策に苦しめられています。フォルクスワーゲンはこのほど、EVを生産していた工場を、収益低下を理由に閉鎖することを決定。同社が自国の工場を閉鎖するのは88年の歴史で初だといいます。独ベンツも昨年、「30年までに全車EV化」という目標を大幅に下方修正しました。「顧客に押しつけてまで人為的に目標を達成しようとするのは、理にかなっていない」と説明しています。
またヨーロッパ最大の自動車部品供給業者のボッシュとZFフリードリヒスハーフェンも、「得意とする機械部品がEVで使用されない」ことなどから不振が続き、ここ数カ月で数千人規模の人員削減を発表しています。コンサルティング会社ローランド・ベルガーが欧州自動車部品メーカー協会(EAS)のために行った調査では、今の状態が続けば、2030年までに最大35万人の雇用が失われる可能性があるとのことです。
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