2025年7月号記事

小松左京が描いた戦慄の「未来シナリオ」

平和ボケ国家・日本に「警世の書」を問うた天才作家の真意を探る。

小松左京

(1931-2011)大阪生まれ。京都大学文学部に入学、イタリア文学を専攻。代表作『日本沈没』の他、『未来の思想』『歴史と文明の旅』ほかノンフィクション作品も多数。1970年の万博でもブレーンとして活躍した。

今年3月末、政府の中央防災会議はマグニチュード(M)9級の「南海トラフ地震」について新たな被害想定をまとめた。経済被害額は292兆円、死者数は約29万8000人。負傷者数は95万人、避難者数は1230万人という見積もりだ。

確かに、南海トラフ地震への備えは急務ではある。だが、そもそも、天災がどこで起きるかを現在の科学は予測できない。

今、必要なのは、常識にとらわれず、「想定外」を考える異次元発想ではないだろうか。

予想外だった阪神・淡路大震災

大川隆法・幸福の科学総裁を通して語られたSF作家・小松左京の霊言では、阪神・淡路大震災は予想できなかったことが明かされている。

だいたい、運命っていうのはねえ、へそ曲がりなんだよ」「だいたい、みんなが考えてる反対を考えとると、そうなるんだ」「私は近所(箕面市)に住んでいたけども、『神戸は、絶対、地震が起きない』って岩盤のように信じてたよね」(*1)。

(*1)『SF作家 小松左京の霊言 「日本沈没」を回避するシナリオ』。以下、小松左京の霊言の出典はみな同じ。

小松左京は現代の予言者?

小松左京は1931年に大阪に生まれ、京都大学文学部を卒業後、62年にSF作家としてデビューした。64年に日本での本格SF小説の嚆矢ともいわれる『復活の日』を公表。その後、73年に公表した『日本沈没』は累計490万部を超える大ベストセラーとなった

『日本沈没』は「のんきに浮かれる日本人を、虚構の中とはいえ国を失う危機に直面させてみよう」という趣旨で書かれ、「『昭和元禄』に浮かれていた人たち」に「警世の書」として受け止められた(*2)。この二作と『首都消失』(83年)は映画化され、代表作となった。

そのうち、『日本沈没』で描かれた震度7の大地震で高速道路が倒壊し、自動車が落ちる光景は95年に現実化した。また、『復活の日』のパンデミックはコロナウィルス感染と似ており、閑散とした東京の駅の光景は物語と類似していた

霊言では、発刊の意図について、「『最悪のシナリオ』をいちおう出しといたから、これよりよい未来をつくってくださいね」とも語られている。つまり、それらは智恵を出し合って未来を変えるために書かれたのであり、不幸の予言が目的ではなかった。それは他の作品も同じ趣旨だと考えられる。

そうしたことを念頭に置き、小松左京が描いた恐怖のシナリオを見直してみたい。

(*2)『小松左京全集完全版50』(城西国際大学出版会)

 
次ページからのポイント(有料記事)

『復活の日』──パンデミックと核ミサイルの暴発

『首都消失』──その時、何が起きるのか

『日本沈没』──現代版「アトランティス」伝説?

未来は努力で変えられる