2024年2月号記事

ニッポンの新常識

軍事学入門 43

安保三文書を評価する(後編)

海上保安庁は自衛隊と協力しないのか

世界の流れを正しく理解するための、「教養としての軍事学」をお届けする。

矢野一樹

元海上自衛隊・潜水艦隊司令官

矢野 一樹

(やの・かずき)1955年生まれ。防衛大学校第22期生、米国防大学修士(国家資源管理)。大湊地方総監部幕僚長、海上幕僚監部装備部長などを歴任。元海将。三菱重工顧問を経て、現在は防人と歩む会理事長を務める。

前回に続いて、岸田政権が2022年12月に策定した安保三文書を評価していきます。軍事的合理性がない専守防衛と同じく、「非核三原則」についても、国家安全保障戦略では踏襲する方針を明記しました。中国やロシア、北朝鮮は近年、「核兵器の先制使用」の選択肢をちらつかせ、核戦力も増強しています。その点、国家安全保障戦略の策定趣旨では「最悪の事態をも見据えた備え」を謳っておきながら、最悪の事態(軍事上の常識は核戦争)を本当に想定しているのか大いに疑問です。

ここに掲載した矢野氏の見解は、国防知識を普及するためであり、宗教団体とは関係がありません。