《ニュース》

米バイデン政権が2021年、情報機関に命じて調査させた「新型コロナウィルスの起源」をめぐるレポートについて、中国・武漢研究所から流出したとする情報機関の科学者らによる意見が、一方的に検閲・削除されていたことが判明しました。

《詳細》

豪ジャーナリストのシャーリ・マークソン(Sharri Markson)氏が8月24日、英ロンドンに本拠を置くスカイニュースでスクープとして報じました。

同氏は2021年9月、多数の関係者に取材の上、中国・武漢研究所流出説を裏付ける『新型コロナはどこから来たのか (原題 : What really happened in Wuhan)』を発刊した人物です。同書籍の内容はスカイニュースでも独自調査として報道され、YouTubeでは1300万回以上視聴されるなど、大いに注目を集めました(書籍でも詳述されたトランプ政権にコロナの情報が伝わる舞台裏については、本誌2022年3月号で関係者への取材を掲載)。

パンデミック当初からコロナ起源を調査してきたマークソン氏がこの度、バイデン政権が命じた調査において、「コロナは武漢研究所で遺伝子操作された可能性が高い」とする専門家らの主張が検閲されたことを「世界的スクープ」として報じました。

ジョー・バイデン大統領は2021年5月、情報機関に対して、コロナの起源をめぐって情報を収集・分析のうえ、90日以内に報告するよう要請。8月に公開された報告書では、決定的な証拠を得られなかったとしたものの、コロナが生物兵器として開発されたものではないという見解では一致し、遺伝子操作された可能性も低いとしました。

しかしマークソン氏のスクープによれば、公表された報告書の内容は、実際に調査に関わった情報機関科学者の見解とは大きく異なったといいます。

一連の調査に携わった、米国防総省・国防情報局(DIA)傘下の国家医療インテリジェンスセンター(NCMI)科学者たちは、厳密な分析を経て、武漢研究所でつくられた可能性が最も高いと結論付けたとのことです。

パンデミック当初、武漢研究所説が「陰謀論」とされた根拠の一つとして、2020年3月にネイチャー・メディスン誌に掲載された科学者のクリスティアン・アンダーソン(Kristian Andersen)氏らによるコロナ起源に関するレポート「The proximal origin of SARS-CoV-2(新型コロナウィルスの近位起源)」がありました。コロナのゲノム情報が既知のウィルスと類似しているとして研究所説を否定する内容です(なおアンダーソン氏が、個人的には研究所説の信ぴょう性が極めて高いと考えていたことが明らかになっている)。

そうした状況の中、NCMI内部では、「アンダーソンらによる新型コロナウィルスの近位起源への批判的分析」と題した研究結果報告書が進められ、コロナがほぼ確実に武漢研究所から流出したとする結論を導いたとのことです。ゲノム情報の解析から、コロナが武漢研究所でつくられた「決定的な証拠」が出たといいます。

ところが最終的な報告書において、NCMIの上級研究員らが提出したデータの、実に90%が削除されていたとのこと。また、NCMI内で作成された報告書は他の情報機関職員にも配布されたものの、公開は禁じられ、連邦捜査局(FBI)への共有も禁じられたとのことです。

武漢から流出した可能性が極めて高いと判明していながら、政権の意向から事実が隠蔽されてきたことに、改めて注目が集まっています。

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